これは「消費者行動」講義中に提示した素材を元にしたものです。若干の変更を加えています。ここにある以外の説明をしていますので注意してください。(香川大学経済学部 堀 啓造)

第12回1999年6月1日 counter: (1998/8/25から)
7章 消費者の知識と記憶
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1節 記憶モデル
2節 記憶に蓄積された知識(略)
(以下chap7-2)
3節 知識構造の種類
4節 消費者の知識とブランド戦略

1節 記憶モデル

1 多貯蔵庫モデル

記憶の多貯蔵庫モデル図

堀 啓造(1982)(認知と記憶・学習, p140)を改変
(金子隆芳編『現代心理学要論』教育出版)

        感覚記憶 → 短期記憶 →長期記憶
リフレッシュ  約20ミリ秒
保持期間   1秒弱,4秒   約20秒  永遠
        視覚 聴覚   (聴覚)
保持情報量   全て      7±2  入ったもの
                      すべて

2 短期記憶

リハーサル
  維持リハーサル(短期記憶内)
  精緻化リハーサル(短期記憶→長期記憶)


初版1刷を見て,次のような書き換えを提案している。第1パラグラフは2回目に送った案が採用されたが,第2パラグラフ以下は大幅な変更をしたくないという理由で不採択になってしまった。記憶と消費者行動を考える上で重要な指摘をしているので読んでおくこと。


 c 短期記憶から長期記憶への情報転送

 短期記憶から長期記憶へと情報が転送されて初めて情報は永久に貯蔵される。情報を長期記憶におくらず短期記憶に一時的に蓄える方法に維持リハーサルがある。たとえば,電話番号を調べてダイヤルする時に無言や言葉にだしたりして電話番号を反復する。これを維持リハーサルという。声にだすほうが維持リハーサルとしての効果は高い。

 情報が短期記憶から長期記憶へ転送されることにより,日常的な意味での記憶が形成される。この記憶過程は記銘と呼ばれており,古典的な記憶研究では単純な暗唱の繰り返しによって達成される。このような機械的記憶は,知識が増えれば増えるほど記憶された知識が後から入ってくる情報の記銘に干渉し記憶効率が悪くなる。機械的記憶からいえることの一つは,目新しい材料はなかなか覚えにくいが,いったん覚えるときわめて印象深く覚えている。例えば,アクシアというオーディオテープがその例である。逆に,よく使われる言葉の場合,覚えやすいがほかと干渉しやすい。「太郎」とかいう名前だと,その場ですぐに覚えられるが,「次郎」だったか,「一郎」だったかとかあとあとでは思い出しにくい。商品の命名はこういう点に配慮すべきである。もう一つの点は,なじみにくいものは大きな文字や大きな図にしたほうが覚えやすいということである。大きな看板というのは目立つという意味だけでなくなじみのないものでも記憶しやすいという意味がある。

 60年代後半からの記憶研究では長期記憶への転送には精緻化リハーサルが重要であるとしている。つまり,短期記憶にある材料を長期記憶にある知識と関連づける(精緻化)する。また,たとえば,ネコとピアノが短期記憶のある材料とすれば,ネコがピアノを弾いているというように関連づけることも精緻化リハーサルである。このような精緻化が必要だということは,同じ材料,文章を見せてもそれぞれの人が違った覚え方をすることになる。勉強においても広告においても,同じことを提示してもみんな違ったように覚えているものである。広告関係者のなかでは何かひっかかりのある広告がいいのではないかと考えたりしている。この考え方は処理水準や自我関与とも関係するが,まずは精緻化の問題としてとらえるべきであろう。

 短期記憶から長期記憶への移行はリハーサルのように繰り返さなければいけないかというと必ずしもそうではない。死にそうな経験をしたときには1回で覚えている。また,重大事件があったときに自分がなにをしていたかなどは覚えている。これと同じように感情が記憶と関係しているのではないかとさかんに研究されている。例えば,ユーモア広告が記憶にいい効果を与えるのではないかと考えられて研究が進んでいる。

3 長期記憶

長期記憶ではなんらかの構造化がされている。
 事実
  スキーマ(図式)
  スクリプト(台本)
 手続き

(a)記銘の仕方
        精緻化
        対連合(英単語)
        単なる条件づけ
        真似

(b)検索の仕方
 検索ができないこと=忘却
 適切な手がかりがあること
   →タレント
   →見たことがある
   1つの手がかりにいっぱい
    ひっついている
 抑圧がかかっているか?
 干渉(他の項目との)

(c)必要とされているのは再生か再認か?
   広告コピーからの企業名想起率 日経BPコンサルティング

(d)長期記憶のタイプ
  プライミング
  手続き記憶
  意味記憶
  エピソード記憶


記憶の分類図

スクワイアーの図(二木宏明(1989)『脳と記憶−その心理学と生理学』共立出版出版 この本は記憶のわかりやすい解説になっている)

3節 知識構造の種類

1 スキーマ

2 スクリプト

3 カテゴリー

(a) プロトタイプ(原型)
(b) ファミリー(家族)類似性
(c) ベーシックレベル(基本水準)

4節 消費者の知識とブランド戦略

 ブランド・エクイティ


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