これは「消費者講義」講義中に提示した素材を元にしたものです。若干の変更を加えています。ここにある以外の説明をしていますので注意してください。(香川大学経済学部 堀 啓造)

第11回1999年5月25日 counter: (1998/8/25から)
6章 消費者の知覚
前へ← 目次へ →次へ

1節 知覚と情報処理
2節 接触過程(exposure)
3節 注意過程(attention)
4節 解釈段階
5節 知覚とマーケティング戦略

感覚・知覚・認知

┌──────┐    ┌───┐
│接触(露出)│←━━ │   │
└──────┘    │   │
   ↓        │ 記憶 │
┌──────┐    │   │
│ 注意   │←━━ │   │
└──────┘    │   │
   ↓        │   │
┌──────┐    │   │
│ 理解   │←━━ │   │
└──────┘    │   │
   ↓        │   │
┌──────┐    │   │
│ 受容   │←━━ │   │
└──────┘    │   │
   ↓        └───┘
┌──────┐     ↑
│ 保持   │━━━━━┛
└──────┘

1節 知覚と情報処理

接触=感覚
注意:ある情報を処理するための容量を割り当てる(allocation)
知覚=低レベル解釈
認知=中レベル解釈
この本は知覚と認知を同じに扱っている

2節 接触過程(exposure)

積極的に接触したり,受動的に接触したりする。人によってよく接触したりするものもあるし,比較的共通に接触したりしないものもある。

例。テレビを見る時間。新聞の読む面
よく見る番組,よく見る新聞・雑誌。通行量の多い道路,乗降客の多い駅,金持ちのよく乗る路線,雑誌,新聞

その他接触関係
(1)閾下レベル
(2)閾下説得(サブリミナル説得)
(3)ウェーバーの法則

3節 注意過程(attention)

(a)(中枢処理機構で処理される)前の段階の情報選択過程
(b)中枢処理機構に取り入れられてからの選択処理過程

処理資源(容量)の分配
《選択的注意》  カクテルパーティ効果

(a) 前注意過程(コントラスト,線分,方位,端点,閉じた小領域,色,動きなど「一目でパッとわかる」特徴)
(b) 注意集中過程(異種の特徴の統合や鏡映像の識別など「丁寧に見て初めてわかる」種類のもの)
(土屋ほか編(1988)AI事典,UPU 喜多伸一 注意 p91-93)

1 注意の個人的決定因

プリント配布(朝日新聞社)

@要求/動機  →高関与・低関与
A態度  認知的一貫性・知覚的防衛
好きな製品のブランドは好きでない製品のブランドよりもはやく認知される
B順応水準  順応・慣れ
刺激の強度,刺激の持続性(臭い),
弁別の困難性,間隔(短くなると慣れが生じる),条件付け

2 刺激側の注意の決定因

@大きさ:大きい方が注意(新聞広告)
A色(新聞の色刷り,食べ物の色)
B強度(大きな音,広告の方が大きい音)
C対照(図と地)
D位置(新聞:左の方が注目される;
    TV:でてくる順序:最初と最後)
E方向性:方向性をもっているほうが注目される。(指差しに思わず注目)
F動き(動きをもっている方)
G孤立(孤立しているものは目立つ。他と違うもの)
H導入質問
I新奇性
J「学習された」注意をひく刺激(インタホンの音、電話の音)
K魅力的なスポークスマン,有名人

4 注意がむけられない刺激

注意が向けられないというのと閾下とは意味が違う。

閾下知覚(サブリミナル知覚)
  時間,強度,ノイズ


コカコーラ,ポップコーン
この研究はねつ造
1/3000秒という制御は現在でも不可能。コンピュータでの計測もできるかどうか不明。たとえば,Windows上では1msecあたりの計測が限界。計測するよりも物理的制御するほうが困難であろう。現在のタキストでも3ミリ秒(3/1000秒)が市販の最短制御。

またサブリミナル知覚を行動に関連づける場合は,何度も提示する。この嘘の実験でも5秒間ごとに提示していることになっている。小さな効果しかないから、大きな効果のある方法を使う方がいいという考えです。まったく効果がないとは思っていない。

Moore,T.E. 1982 Subliminal advertising: What you see is what you get. Journal of Marketing, 46 (Spring) 38-47.
Moore はもともとサブリミナル広告に強弱2つの主張を考えています。
(1)サブリミナル刺激はその刺激に対するあるポジティブな感情反応を作り出す
(または増加させる)。
(2)ある直接的な行動の結果(例.購入)を引き起こす。
(1) を弱い主張、(2)を強い主張と言っています。
レビューの結果は(1)は認められる(Kunst-Wilson and Zajonc,1980)が、(2)は否定的という結論。
全体としての効果は弱く他の刺激にたやすく打ち消されてしまう程度。

この方面に関連したレビューとして、
Dixon,N. 1982 Preconscious processing. Wiley
サブリミナル刺激がその後の情報処理に影響することを述べています。

最近のレビューをあげておくと、
Theus,K.T. 1994 Subliminal advertising and the psychology of processing unconscious stimulus: a review of research. Psychology & Marketing, 11(3), 271-290.
(a)心理学的要因
 ○知覚防衛
(b)生理的要因
 ○手がかり、潜時、反応
(c)適応行動への心理学的生理学的効果
(d)選択行動

(a)(b)(c)についてはそれぞれ効果がある。
(b)については、聴覚言語は視覚言語に比べて効果が少ないというのは注意する必要がある。
(c)についてはSPA(subliminal psychodynamic activation)という用語で研究されている。メタ分析(1990)があるが、弱い効果が認められる。

例えば、次の文をサブリミナル露出する2つの群をつくる。
mommy and I am one.(実験群)
people are walking.(統制群)

アルコール中毒者に3カ月のサブリミナル露出後、実験群は統制群に比べ、不安や鬱が低くなり、自己概念が高められ、アルコール摂取量が減るという実験がある。

(d)は否定的研究が多くなる。
[1]特定の商品への購買研究はほぼ否定的
[2]食べ物、飲み物のような方向へは誘導効果があるのとないのとがある。
[3]効果の出やすいタイプの人がいる可能性。例.低不安+低神経症+外向
[4]「記憶を伸ばすテープ」や「自尊心を高めるテープ」はプラシーボ効果があ
る。(つまり、テープ自体の効果ではなく、思い込みの効果がある)
[5]キーの埋め込み図は1例だけ確認したものがあるが、否定的。

というように、否定的結果が中心で,条件付きで肯定するものが一部ある。

サブリミナル効果も場合分けが必要と考える。
例えば、
(1)低関与な対象と高関与の対象
(2)ニーズがたやすく引き起こされる場面とそうでない場面
(3)その人のステレオタイプな行動とそうでない行動

(1)低関与で(2)ニーズがたやすく引き起こされ(3)その人のステレオタイプな行
動があるとき、サブリミナル効果の可能性は高まるのではないか。

また、(1)低関与で(2)変化探求的行動をよくする分野(例 スナック菓子)では、新しいものに対するサブリミナル効果も生じやすいのではないか。

という2つの仮説が考えられる。
測定についても脳波をはかるなどの工夫がある。

何れにしてもまだ結論をつけるほど十分な研究が行われているとは言えない。
Wilkie,W.L. 1994 Consumer behavior. 3rd ed. Wiley. p222- 詳しく批判。文献も多い。

Chisnall,P.M. 1995 Consumer behaviour. 3rd ed. McGraw-Hill. p.27
(UK. Pilkington Commitee on Broadcasting reporting in 1982.)
Daily Telegraph(17 February 1981 Subliminal messages deter shoplifter.)
New Orleans のあるスーパーマーケットの放送でサブリミナル放送を続けた。
1年40,000ポンドにもなる、万引きを退治した。


下條信輔(1996)『サブリミナル・マインド−潜在的人間観のゆくえ』中公新書

ウィルソン・ブライナン・キイ(1989)『メディア・セックス』リブロート

4節 解釈段階

1 自動処理
   スキーマ(図式)
   ステレオタイプ
2 理解レベル
   図を3枚提示
3 精緻化
   自分の中で関連づけ
4 記憶
   長期貯蔵庫

5節 知覚とマーケティング戦略

1 製品

a 製品ポジショニングと商品イメージ
            製品イメージというほうがいい
   知覚マップ

ブランド→日経リサーチブランド調査
  「ブランド戦略サーベイ」開始 
ブランドはどのように形成されているのか pdf ファイル
などを読む

b ブランド・ネームとロゴ
   記憶の話が入っている

c パッケージデザインと広告
パッケージングpackaging
容器,包装紙(石鹸を包むような紙を含む),缶,木材,ガラス,ボール紙,透明セロファン,クロース,その他の材料で製品を整える手段である(Nystrom,P.H.)
あるいは健全な状態で最終消費者へ最低のコストで商品を安全に届けることを保証する1つの手段(Pain,F.A.)
詳解マーケティング辞典(同文館)

2 価格

(1)価格の機能(小嶋,1986 p49-51)

(a) 価格そのものが商品の品質性能のイメージに与える影響が大きい
(b) 価格は,購入商品に対する"満足感"に関係がある安いものは不満がある→安く買える理由)
(c) 買い手自身の感情や自尊心と関連する不満感・満足感(課長だから背広は  10万円以上じゃないとね)
(d) 高級感,ゼイタク品,おしゃれ品の場合,価格は商品に対する期待に影響する(高級化粧品,漢方)

(2)心理的価格

(a)端数価格→台割れ効果

(b)価格段階(化粧品のランク)原価にかかわらず,価格帯の数を限定して同一価格ラインにまとめるそのライン(ストッキングなど)
(c)慣習価格
(慣習価格がはっきりとある場合,価格が低くても売れない)

(d)威光価格(名声価格)競争市場レベルよりも高い価格付けによって高品質とみなされ,所有することがステイタス・シンボルともなり,したがって高価格が故に購買意欲をそそる価格。ブランド品,専門(のれん)品など。
→ブランド・トレランス(耐性)


さらに深くまなぶために 価格関係文献
横田・亀井編著(1984)『マーケティングの最前線』学文社(価格の心理的側面)
小嶋外弘(1986)『価格の心理』ダイヤモンド社
上田隆穂(編)(1995).『価格決定のマーケティング』有斐閣
上田隆穂(1999).『マーケティング価格戦略−価格決定と消費者心理』有斐閣

さらに深く学ぶために 広告知覚の文献 
山田理英(1998).『広告表現を科学する』日経広告研究所
前へ← 目次へ →次へ