これは「消費者行動」講義中に提示した素材を元にしたものです。若干の変更を加えています。ここにある以外の説明をしていますので注意してください。(香川大学経済学部 堀 啓造)
第5回1999年5月11日 counter: (1998/8/25から)
3章 消費者の問題認識と購買意思決定
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1節 問題解決としての購買意思決定
   ヒューリスティクスとは
2節 購買意思決定問題の認識
  2 購買問題認識の状況
   意思決定を延ばす理由/必要性認知(問題認識)の原因
以下次回
3節 購買意思決定問題の認識のされ方
(決定フレームとフレーミング効果)
  1 購買における決定フレームとフレーミング効果
  2 フレーミング効果を説明するプロスペクト理論
4節 消費者の状況依存的な問題認識
(心理的財布)
  1 状況依存的な問題認識と心理的財布
  2 異なる心理的財布の視点


1節 問題解決としての購買意思決定

(1)問題解決過程を定義せよ。 P42


(2)手段−目標方略と副目標設定方略を説明せよ。P43

(3)目標状態は簡単に定義できるか?

(4)「おいしいものを食べる」というのはどういう意味で不良定義問題(ill-defined problem/ill-structured problem)なのか?

(5)ヒューリスティックス(発見法)と呼ばれる方略はなぜ重要視されるのか?


解答例
問題解決過程:状態空間において初期状態から目標状態に至るまでの心的操作の系列。

テストにでたときこれだけ書いたなら最小の点数しか与えない。それは初期状態,目標状態がわかっているかわからない。


《ヒューリスティクスとは》
土屋俊ほか編 AI事典 UPU 1988 p330-331平賀謙 ヒューリスティクス
...
人工知能で「ヒューリスティック」という場合には,問題固有の知識に基づいて,
@多くの場合,蓋然性の高い解を与えるが,最適解や,解そのものを与える保証がない,
A問題解決の効率を著しく向上させる,
という2つの側面のいずれか,普通は両方を合わせもつような技法や個別の知識,プログラムなどの総称として,それらに冠して用いられる。

ここで@と対立する概念は「アルゴリズミック(algorithmic)」である。問題のアルゴリズムがあるという場合は,機械的な手順で最適解が得られることを意味する(効率は必ずしも問わない)。とはいうものの,「ヒューリスティック」,「アルゴリズミック」という言葉は必ずしも厳密に使い分けられているわけではない。ヒューリスティックな方法にすぎないものを「アルゴリズム」と呼んだり,逆に本当はアルゴリズムであっても(主に歴史的理由により)「ヒューリスティックス」の名を冠しているものも実際には多い。

問題解決がグラフ表現などで記述された「状態空間(state space)」における解の「探索(search)」として定式化される場合(ゲームやパズルを始め,多くの比較的単純な問題はこれに相当する),「すべての状態をしらみつぶしに探索する」という「アルゴリズム」が存在する。しかし,チェスなどではこの空間の大きさは10^120 にも達し,実用的にはこのような「アルゴリズム」は全く役に立たない。したがって大幅に探索の範囲を狭めたり(枝刈り),あるところで探索を打ち切ることが必要になる。また現実的な問題では,アルゴリズムそのものが定式化できなかったり,問題を解決するのに必要な情報が不完全にしか与えられないので,アルゴリズムを適用できないことの方が普通である。このような場合,@の意味でのヒューリスティックな手法が適用される。こちらの側面に重点を置いた探索方法としては,ゲームにおけるミニマックス法やαβ法などがある。

...とはいっても,最適解(問題によっては唯一解)をえるために,ヒューリスティックな手法が用いられないわけではない。たとえば数式処理における因数分解では,手法自体は効率のよいヒューリスティックなものが用いられるが,検算などによって解を確かめ,ダメならばやり直すことにより,正解を得ることができる。

...しかし純粋にAの意味でのヒューリスティックな手法は,適当な条件のもとで最適解を与えるものが多く,問題解決の観点からは「アルゴリズム」といえる。そのような例としては,最良優先探索やA*アルゴリズムなどがある。

(以上ヒューリスティックス)



(1)なぜ問題解決として捉えるの?

(2)問題解決じゃないといけないの?

(3)真剣に考えたからといって,意味があるの。

(4)意味がある解じゃないと満足しないの?


2節 購買意思決定問題の認識

現実の状態(actual state)
目標状態(goal state =>desired state 望みの状態・所望状態)
図3―1をフローチャートにすると

目標状態=所望状態が高められたとき
→基本的には楽しみ

現実状態が低められたとき
→基本的にはやっつけ仕事(補充)

もちろんいろんな条件で変わってくる。


2 購買問題認識の状況

(1) ルーチン的問題解決(習慣的問題解決)
(2) 限定的問題解決
(3) 広範(的)問題解決
属性についての学習や概念形成や,複数の選択肢について,複数の属性に関する検討を必要としており,その問題認識は,非常に複雑である。

 

習慣的問題解決

限定的問題解決

広範問題解決

購買関与

問題認識

自動

半自動

複雑

情報探索と評価

最小

限定的

広範

購買志向

最寄り

混合

買回り

購買過程

極度限定

限定

複雑

 

習慣

再購入

ブランドロイヤルティ*

惰性から

不満ならブランドスイッチ

満足すれば忠誠

不満なら文句

*これをブランドロイヤルティといっていいかは疑問
Loundon & Bitta(1993) Consumer behavior. 4th ed. McGraw-Hill p486より

最寄り品 買い回り品 専門品の区別とも関係する。

意思決定を延ばす理由(Loundon & Bitta,1993)

(1) 一番のブランドを選ぶのが困難
(2) 時間がない
(3) 製品の性能のリスク知覚
(4) 不確実性
(5) 課題を忌避と不快感

《必要性認知(問題認識)の原因》 Engel et al.(1995)

(1) 時間
(2) 環境の変化
(3) 製品の獲得
(4) 製品の消費(使用)
(5) 個人差
(actual state typeとdesired state type)
現状が変化したために必要性が生じるタイプ(ASタイプ)
望ましい状態が変化したために必要性が生じるタイプ(DSタイプ)
→これを個人差だけのものとするのは問題。
たいていの便宜品(最寄り品)の必要性は現状が変化したために生じる。

主要家電の「買い替え寿命」と理由(ダカーポ 1999 6/2 no 422:経済企画庁調べ 1998年10月〜12月)
買い替え年数   故障上位移行 その他
冷蔵庫12.169.716.214.1
ルーム・エアコン11.557.618.324.1
カラーテレビ9.887.97.34.8
洗濯機9.180.513.85.6
掃除機8.480.812.46.8
ビデオカメラ8.450.947.21.9
ビデオデッキ8.187.810.91.3
ワープロ6.451.436.612.3
経済企画庁資料 (11年1〜3月期)
内閣府経済社会総合研究所景気統計部 統計のページ消費動向調査
主要耐久消費財の買替え状況(全世帯) 平成14年9月 excel ファイル


携帯電話、買い替え理由のトップは「バッテリーが寿命」
http://japan.internet.com/research/20030114/1.html
10代から60代300人。2003年1月14日付の記事
デイリーリサーチ 2003年1月14日

  1. バッテリーの持ちが悪くなった(117)
  2. 新機能が使いたい(112)
  3. 新機種の値段が安くなった(90)
  4. カメラ付き携帯がほしい(66)
  5. 利用料を安くしたい(41)
  6. 音質が悪い(32)
  7. 壊れた(29)
  8. 画面が鮮明に見えなくなった(24)
  9. 通信速度が遅い(18)
  10. 家族割引サービスが適用されない(16)
  11. その他(43)
1年以上2年未満が49%

そのほか考えること
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        すぐに解決する必要性
        -----------------------
         すぐ すぐでない
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問題を  予期  習慣  計画
     -----------------------------
予期し  予期  
ているか してい 緊急  考案
     ない
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