これは「消費者行動」講義中に提示した素材を元にしたものです。若干の変更を加えています。ここにある以外の説明をしていますので注意してください。
          (香川大学経済学部 堀 啓造)

第22回1998年 1月23日 counter: (1998/8/25から)
最終更新日:
15章 対人・集団の影響
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1節 口コミと消費者行動
2節 情報の伝播と消費者行動
3節 集団の影響と消費者行動


1節 口コミと消費者行動

1 対人的情報と消費者行動


パーソナルコミュニケーション,ノンパーソナルコミュニケーション
4章消費者の情報探索と選択肢評価
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        非対人    対人
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
営利       広告    販売員
      店舗内情報
──────────────────
非営利  一般目的の  社会の他者
      メディア      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 2 口コミが発生する条件

テキスト p224
・消費者が商品選択のための(記憶内)情報を充分に持ち合わせていない時
・製品の客観的な基準による評価が複雑で困難なとき
・製品を評価する能力を欠いていると思うとき
・他の情報源の信頼性が低いと思われるとき
・他の情報源よりも接近しやすく,時間や努力を費やさなくても済むとき
・情報を教えてくれる人との間に社会的つながりが強いとき
・社会的に認められたいという欲求が強いとき

テキスト 表15−1

3 口コミの機能


4 購買決定における口コミの役割

最近(2002年11月での発言),口コミ関係の文献が増えている。例えば次の文献
エマニュエル・ローゼン(濱岡豊訳)(2002)『クチコミはこうしてつくられる−おもしろさが伝染するバズ・マーケティング』日本経済新聞社
 訳者あとがきに研究例あり
神田昌典(2001)『口コミ伝染病 : お客がお客を連れてくる実践プログラム』 フォレスト出版

文献展望として
濱岡豊(1994). クチコミ発生と影響のメカニズム 消費者行動研究,2(1),29-73.

最近のものを見るには
竹村和久(2000).消費者間相互作用と購買意思決定 竹村和久(編)『消費行動の社会心理学』北大路書房


2節 情報の伝播と消費者行動

1 誇示的消費と情報の伝播

トリックルダウン説(流れ落ち理論)
上流階級→中産階級→下層階級
模倣する。
有閑階級

2 情報の2段階の流れとオピニオンリーダーリーダー

皮下注射モデル 直接伝わる
2段階の流れ理論
メディア→オピニオンリーダー→フォローアー(追随者)
1948 Lazarsfeld ほか

多段階の相互作用理論

3 オピニオンリーダーの特徴

テキスト

4 ネットワーク型の新しいオピニオンリーダー

情報発信能力+情報受信力,情報処理能力
→結局オピニオンリーダーでよい。

情報ハブ化する“オピニオンリーダー”電通総研 産業・経済部 部長 山本浩一 業務企画部主任研究員 山田浩之 読売ADリポート

5 新製品の普及とイノベータ

(流行・普及あるいはファッションの採用)
 いままでその人が採用したことのない,新しいことをする(例.食料品の銘柄の変更,ファッションのモードの変更,ある特定の映画を見に行く)ときの意志決定がどのようになされるのかは古くからの問題である.Katz & Lazarsfeld (1955)は、まずオピニオンリーダーが新しいことを採用し,オピニオンリーダーの影響を受けて追随者が採用するという"2段の流れ"説を立証している.

 一方,Rogers(1961)は,イノベーションをいつ採用するかという視点から5つの採用者カテゴリーを提案している.革新者,初期採用者,前期多数者,後期多数者,遅滞者の5つである.藤竹の訳では前期多数採用者を前期追随者,後期多数採用者を後期追随者と訳している.この訳は,"2段の流れ"説と採用者カテゴリーをうまく結び付けている.
Rogers(1983)はそれぞれのカテゴリーを次のように特徴づけている.革新者…冒険的,初期採用者…尊敬をうける,前期多数者…慎重な,後期多数者…疑い深い,遅滞者…伝統を守る.これらは採用の態度・方法に言及したものである.

 この2つの研究を受けて,オピニオンリーダーとイノベーターの研究を中心に,オピニオンリーダー尺度,イノベーター尺度(例.嶋田,1982),マーケット通尺度(例.Feick & Price,1987),がそれぞれ開発されている.しかし,5つの採用時期を同時に視野におさめた尺度は開発されていない.

 ところで,ロジャースは採用の時期を中心に新モード採用態度・行動を考えている.逆に,採用の態度・行動を先に考える.2つの考えを考慮して,ファッションの新規購入時に依拠する根拠・情報探索・態度に関して次の5つのカテゴリーをつくった.

(1)普及理論 diffusion theory Rogers          
    革新者     inovator              
      ↓     冒険的な人々   2.5%  
  初期採用者   early adoptor         
      ↓     尊敬される人々  13.5%  
  前期多数者   early majority        
      ↓     慎重な人々    34.0%  
  後期多数者   late majority         
      ↓     疑い深い人々   34.0%  
    遅滞者     laggard(のろま)     
            伝統的な人々   16.0%

 藤竹訳  
  革新者     
  ↓    
初期採用者  
  ↓    
前期追随者  
  ↓    
後期追随者  
  ↓    
 遅滞者   

(2)尺度
オピニオンリーダー、イノベーター
(嶋田,1982)嶋田智光 1982 イノベーション普及過程理論の応用 飽戸弘他 経済心理学 朝倉書店   pp.206-216
マーケット通 Feick,L.F.,& Price,L.L. 1987 The market maven: A diffuser of marketplace information. Journal of Marketing, 51(January), 83-97.
また、違う意味で、
Kierton,M. Adaptors and Innovators → Foxell,G.R. & Goldsmith,R.E.
      1994 Consumer psychology for marketing. Routledge.

6 買い方タイプ分け

(1)独自確信型: 
自分独自のファッションを創造する,または創造する能力のあるタイプであり,自分自身の感性でファッションを選択するタイプ.革新者と部分的に対応する.
流行に関しては無関心な場合もある.
(2)情報活用自主選択型:
ファッションについて独創性を発揮しないがファッション情報を積極的に活用して,生産されたファッションを自分の判断で選択するタイプ.流行に関してもっとも敏感.
初期採用者.(以下自主選択型と呼ぶ)
(3)他者相談型: 
ファッションについて独創性もなく,生産されたファッションを自分で選択できないので他人に相談して自分に似合う服装を選ぶタイプ.前期多数者
(4)他者模倣型: 
ファッションにそれほど関心がないが,周囲の服装を意識し,意識的・無意識的に他人の服装を真似るタイプ.後期多数者
(5)無関心型: 
ファッションには関心がなく,周囲の服装に対する意識もないタイプ.遅滞者

(1)独自確新型 → 革新者
(2)自主選択型 → 初期採用者
(3)他者相談型 → 前期多数者
(4)他者模倣型 → 後期多数者
(5)無関心型  → 遅滞者

7 ファッション採用尺度

(1)独自確信型   α=.83
@自分のファッションはオリジナル性が高い .75
A「カジュアル+トラッド」といったようにいろいろな系統の服を自分なりに上手くコーディネイトできる
Bファッション雑誌のコーディネイトは参考にするがまるまる真似ることはない
Cスタイリストのようにいろんなアイテムを合わせるのが好きだ
D既製品のデザインでは飽き足らない

(2)自主選択型 α=.75  
@ファッション雑誌を最初から最後まできっちり読む
Aファッションの話で自分の知らないことが出てくると,どんなことでもより詳しく聞く
B自分に似合わないものはすすめられても買わない
C衣服を買う時は,事前にいろいろ情報を集めて研究する方だ
Dどんな服をもってこられても,似合う似合わないを判断できる
Eファッションのことを自分から話題にすることがある


(3)他者相談型 α=.77
@店員や家族,友人等,他の人の意見を聞いてから決める
A少しくらい気に入らない服でも店員や家族,友人等の他の人からすすめられると買うことが多い
B洋服を買う時はいつも店員の判断にまかせきりである
C着ているものについて,友人によく批評をしてもらう

(4)他者模倣型     α=.61
@バーゲンで買ったものをそのシーズンに着ることが多い
Aファッション性の高い服はあまり買わない
B服の組合せ方は他人の着方をよく真似る
Cバーゲンまで待って服を買う
Dわたしと同じ服装をまわりの人がしていることが多い

(5)無関心型 α=.76
@服にはたいした違いはない
Aファッションなんて関係ない
B無意味なのでファッションには時間をかけない
Cファッションより他のことに興味がある

8 その他のオピニオンリーダー
国立国語研究所によるとオピニオンリーダーということばはカタカナではなく言い換えをすべきことばになっている。
http://www.kokken.go.jp/public/gairaigo/tyukan001a.html
「世論先導者」にしたらという提案だ。これは使えない。

テキストのコラムなども新しい考えである。
川上和久ほか(1999)『情報イノベーター』講談社現代新書 も新しい考えである。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061494775/qid%3D1042553964/249-0992750-5121100

電通も調査に基づいて新しい概念を提案している。(読売ADレポート 2003.1
電通総研では、「個人間コミュニケーション」 情報ハブ化する“オピニオンリーダーリーダ”
http://adv.yomiuri.co.jp/ojo/02number/200301/01toku3.html

団藤保晴の記者コラム「インターネットで読み解く!」
http://dandoweb.com/
の第128回 ニュースサイトが生む津波アクセス2002(12/12) ・ 第129回 再論・津波アクセスの社会的意味 2003/(01/09)

もインターネット上でのクチコミを考える上で重要。


3節 集団の影響と消費者行動

1 集団への同調と逸脱

流行,ファッション

2 準拠集団と消費者行動

(1)準拠集団のタイプ

北大路書房 社会心理学用語辞典 1995
準拠(関係)集団と成員性集団(reference group vs. membership group)
個人が所属の有無にかかわりなく心理的に自らを関係づけ、態度や判断のよりどころとしている集団を関係集団あるいは準拠集団といい、実際に所属している集団を成員性集団という。

有斐閣 社会心理学小辞典 1994
準拠集団 reference group
個人が自分の態度を心理的に関係させ準拠させる集団。個人が自分自身の共通の興味・関心、態度・価値を保持するとみる集団であり、また自己評価や態度の評価の基礎とみる集団。準拠集団と所属集団(上の成員性集団)と一致するとは限らない。たとえ所属していなくても、所属したいと熱望し、心理的成員性をもっている集団であれば、それはその個人にとっては正の準拠集団となりうる。態度形成・持続に大きな効果をもつことがある。

--------------------------------------
 @1次/2次

有斐閣 社会心理学小辞典 1994
第1次集団 primary group
C.H.クーリー(1909)による集団概念で、成員相互の親密な対面的結合関係に基づく集団のこと。具体的には、家族、近隣集団、遊び仲間などをさす。組織などの第2次集団に先行する集団というだけでなく、個人の社会化の過程においてとくに重要な役割を果たす集団であり、人格の苗床ともいえる。
--------------------------------------

 A公式的/非公式的

有斐閣 社会心理学小辞典 1994
フォーマル・グループ formal group
明確化された目標と、それを達成するための規則や必要な役割分担などがあらかじめ設定されている集団。制度化され、一定の組織体系の上に形成された集団である。あらかじめ決められている組織機構の上に個人が位置づけられている集団として機能するもので、成員の行動が制度や組織に規制される。学級集団、官公庁、会社の組織など公的組織機構。またその中で組織化されている生徒会・班・部・科などはフォーマル・グループの例である。

インフォーマル・グループ informal group
自然発生的に形成される集団。成員相互の密接な心理的関係に基づいて成立集団である。集団の目標や規制、役割分担などは非常に不明確であり、成員間で暗黙のうちに了解され、その集団固有の規範、集団目標をもつことが多い。幼児・児童にとって仲間集団などのインフォーマル・グループのもつ役割の重要性が指摘されている。インフォーマル・グループの不明確な集団構造を把握する手段としては、ソシオメトリック・テストが用いられる。

(2)準拠集団の影響の形式
@規範的影響 準拠集団が同調するように圧力をかけることで行動に影響する事。同調の圧力はグループの同一性を維持するポジティブな動機づけがある場合にも働くし、賞と罰の形で称賛や制裁を与えるという脅しの動機づけもある。性格特性によって対人的影響を受けやすいことがあるという証拠もある。
 尊敬や称賛のシンボルは賞や誘因となる。
制服を着ないとか、おきまりのノートを買わない。→周りの非難など。
服に意識的な女性は社会的に受容される服を着る傾向がある。
都市化しているところでは対人接触が少なく影響が少ない。共同社会の崩壊。
極端な場合、社会学者いうアノミー状態になる。アノミーからの回復を求める傾向も生じている。

平凡社 マイペディア CD−ROM版
アノミー
「無法律状態」「神法の無視」を意味するギリシア語に由来する概念。中世以来廃語になっていたものを⇒デュルケームが社会科学の分野で復活させ,「行為を規制する共通の価値や道徳的規準を失った混沌(コントン)状態」と定義した。その後,資本主義の高度化,社会の大衆化に伴う社会解体現象を分析・記述するために有効なものとして利用された。一般にある社会に支配的な規範や価値体系の混乱ないしは崩壊状態を社会的アノミーといい,そうした状況を反映した人間が示す不安,自己喪失感,無力感などの状態を心理的アノミーという。またS.デ・グレージアは,価値体系の面から単純アノミーと急性アノミーに分類している。
--------------------------------------

A価値表出的影響
 準拠集団は自己同一性を維持し、自己像を高揚させる働きがある。
自己像が明瞭で安定していることは、重要なことである。逆に、自分が何者か、自分がどういう考えの持ち主かが不確かになったとき、私たちは不安を覚える。そのようなとき、自分が信じる価値(例:民主主義、人権擁護など)を表明してみることは、あやふやになった自己像を再確認するために役立つ。さらに、自らの中核的価値を表明することによって、自尊心を高めることもできる。

B情報的影響(知識機能)
 多義的な世界を理解し、意味づけるのに役立つ。
私たちは、世界を、組織化されたまとまりのよいものとして認識したいという欲求がある。理解できない、見通しのもてない世界に生きることは不安であろう。この不安を解消するために、私たちは、混沌とした世界を整理し、意味づける知識を求める。 準拠集団(態度)は、私たちが複雑な世界を理解するための判断や枠組みを与える。いろいろなことが絡み合った複雑な事態も、ある観点から見ることによって、整理され、首尾一貫したものとして認識することが可能になる。たとえば、ある政治的・宗教的立場をとる人は、世界の動きを意味のある一連の流れとして理解することができることである。

(3)準拠集団の影響力の決定因
テキスト p236 図15−4

4節 口コミを使った戦略
最近は口コミを積極的に使おうという戦略が増えてきている。

例えば、MJ(日本流通新聞、2001年5月29日)のMJ電脳事典では「アフィリエイト・プログラム」が紹介されている。

アフィリエイト・プログラム:口コミ使う販促手法
 米国で急成長しているインターネットの口コミを使った新しい販売促進手法。個人や企業のホームページで商品を紹介してもらい、その情報をもとに商品が売れたら、手数料を払う仕組み。例えば、ワイン愛好家のサイトで、ワインに関連する商品を紹介してもらう。アフィリエイトは英語で「加入者」「会員」の意味。
 どのサイトも一律に同じ表現になるバナー広告と違い、この手法では各サイトの運営者の言葉で商品を説明してもらうため、販促効果が高い。(略)  …。ブックワン(東京・文京)やアマゾンジャパン(東京・渋谷)などオンライン書店で相次ぎ、導入している。
ビールスなどと言い方で口コミを喧伝しているところもある。
神田 昌典 口コミ伝染病 お客がお客を連れてくる実践プログラム フォレスト出版 2001

セス ゴーディン (著), 大橋 禅太郎 (翻訳) バイラルマーケティング 翔泳社 2001
原題 Unleashing the Ideavirus



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