これは「消費者行動」講義中に提示した素材を元にしたものです。若干の変更を加えています。ここにある以外の説明をしていますので注意してください。
          (香川大学経済学部 堀 啓造)

最終更新日:
第22回1999年 7月13日 counter: (1998/8/25から)
16章 社会階層,文化
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貧乏の定義を「食う為に労働しているとして,その労働をちょっとでも中断して,ヤレ景色を愛でるの衣服を繕うのと己の為の行為をしたら,もう食えなくなっちまうほどの状態」とすれば,現在(いま)の日本人はほとんど貧乏人であろう。
 ヤレ「ディズニーランドに子供をつれて行かねば駄目」だの,「ハワイにも,温泉にも」「ガキにピアノを習わせろ」の,「塾に」のと,これらをしないと生きているということにならず,その為に働く,労働する,というのだから,現代人は貧乏人であろう。携帯電話で話している奴なんざァ,貧乏人の最たるものだ。奴等ぁ,あれを経済の尖兵と思っているのだろうが……。

(立川談志『新釈落語噺』中公文庫 p100, 1999年,元は1995年)


0節 地域
1節 社会階層
  1 社会階層と消費者行動
  2 社会階層
  3 社会階層とは?
  4 社会階層を決定するものは何?
  5 社会階層を測定する
  6 社会階級は変化しているか?
  7 社会階級セグメントへのマーケティング
     代行的閑暇と行儀作法
  8 ハビトゥス
     趣味と階級
2節 文化
  1 文化的価値
  2 文化とはなにか
  3 いつ人は自分の価値を獲得するか?
  4 文化はいかに消費者行動に影響を与えるか
  5 核的価値がどのようにマーケティングに影響するか
   米国の価値/分け前的平等主義と規範的平等主義/自発的役割人間/日本の教育ママ/道徳意識



0節 地域
地域によって消費者行動は違ってくる。何が売れるのか調べればもっとも単純なレベルのことがわかる。売れないものがあると,それだけ市場があると考えるのか(米国型),市場がないと考えるか(英国型)によってその後の行動は大きく違ってくる。
食料品や家事雑貨に関する都道府県庁所在市別ランキング 家計調査 

都道府県庁所在市別購入上位品目

1節 社会階層

1 社会階層と消費者行動

社会階層によって、どのようにひとが時間を過ごすか、どんな製品を買うか、いつどこで買うかといった消費者行動が変わってくる。

例.日経新聞、朝日新聞、読売新聞、産経新聞、四国新聞などで読む階級が違ってくる。モア、女性自身では広告内容も異なっていくる。雑誌の記事が違う。美術、工芸、インテリア装飾、自然の支配、技術の勝利、ファッション、豊かさのイデオロギー。

消費者は製品ブランド、サービスブランドを特定の社会階級に結びつける。
米国では Heineken, Amstel Light が中の上階級の飲み物である。
Old Style はみんなのビール 中産階級・下層階級
昔はビールは下層階級の飲み物。
K mart は主として下層階級の買う店。
レストラン Windy > Burger King, Denny's
ホームレスから大金持ちまで多彩
イギリスでは階級の変更はまれである。インドはカースト。ロシア、中国、ハンガリーなど社会主義→消費文化が生まれる。

2 社会階層

ヨーロッパではしっかり階層がある。
アンソニー・ギデンズ『社会学 改訂新版』而立書房(じりつ)1993表より

英国における富の所有状況 (1989)p228
      人口割合  富の割合
      (いずれも累積)


最富裕層上位   1%    18%
         5%    38%
        10%    53%
        25%    75%
        50%    94%

表より英国では上位10%の人で英国の富の53%を持っている。

日本について朝日新聞2004年10月16日記事に日本の個人金融資産は人口の上位1%の126万人が全体の3割の440兆円を保有するという推計を紹介している。1人平均では3億5千万円となる。また、上場企業のオーナー経営者の自社株保有額は上位5000人で計7兆円、1人平均140億円に上る(メリルリンチ日本証券推計)。
日本銀行推計では、金融個人資産1400兆円一人平均1100万円、4人家族で4400万円となっている。
家計調査からすると4千万円以上貯蓄の世帯主の2/3が60歳以上。なお、一人平均を日銀1100万円、総務省540万円と倍の違いがある。預金など大半は1.7倍だが、株式・株式投資だけが3.25倍となっている。

日本の借金時計

世界各国の中流意識(林知己夫『数字からみた日本人のこころ』徳間書店 1995 p53)
「お宅の生活程度は」




日本は中産階級が大半であるが、階級はしっかりある。一般に日本人は中流意識が多いといわれているが、上の表からわかるように、オランダを除いて上流意識はそんなに多くなく、各国とも同じような割合での中流意識がある。

イギリスなどでは、階層を聞くとき通常はworking class という語を使うため、下層が多くなるのである。

Budwiser あまり豊かでない層にヒット←仕事が楽しくない
社会階層は生存チャンスに影響する。

3 社会階層とは?

類似の価値、ライフスタイル、興味、行動を共有している個人または家族をカテゴリー化できる社会のなかの相対的に永続し均質の部分と定義できる。

クラスの成員は地位グループとしてあるライフスタイルを期待される。

3.1 不平等システム

 土地−不動産システム
 
3.2 社会階層変数


 宗教・家族・教育・経済・政治・法律
 
4 社会階層を決定するものは何?


『現代日本の階層構造1・社会階層の構造と過程』東京大学出版会
階級社会としての日本社会(橋本健二)

(1)職業
(2)成績
(3)相互作用
(4)所有 
(5)価値指向性
(6)クラス意識

5 社会階層を測定する

(1)単一項目
  職業  日本のSSM調査
(2)多項目
日本の場合 SSM調査

(3)郵便番号コード 日本も番号が細分化されたためこれを使用できる可能性が高まった。

地位の結晶化

中央公論 2000年11月号 論争「不平等社会か日本?」 盛山和夫,佐藤俊樹
6 社会階級は変化しているか?

ssm調査参照のこと(社会階級の大きさ)

7 社会階級セグメントへのマーケティング

ヴェブレン『有閑階級の理論』岩波文庫,ちくま学芸文庫
衒示的浪費の法則 conspicuous 衒示的=顕示的,みせびらかし等
《保守主義》
《男らしさ:武勇》
《幸運を信ずる心・宗教》
(1)衒示的閑暇 《趣味の金銭的基準》《衒示的閑暇としての礼儀作法》( 第3章 衒示的閑暇)
(2)衒示的消費 
(3)代行的閑暇(妻や子供)
(4)代行的消費 
(5)制作本能(本物志向)

ヴェブレン:『有閑階級の理論』のまとめ
(0)富を所有することは、尊敬されるための確固とした基盤を獲得することである。

(1)(野蛮以降の)人間は金持ちであることをひけらかしたがる。

(2)金持ちであることをひけらかすのは
  (a)閑のあることを示す。=>顕示的(衒示的、みせびらかし)閑暇
  (b)もの、金で示す。  =>顕示的消費
  の2つの方法が基本である。

(3)顕示的閑暇は働かなくていい時間がたっぷりあることを示す。
  礼儀作法、政治、軍事、宗教、スポーツ、学問などにあらわれる。
  政治、軍事、宗教、スポーツ、学問は職業としても有閑階級のものである。
  それらができるということも閑暇であることを示している。

(4)顕示的消費は顕示的閑暇に比べ直接的に金を持っていることを示す。

(5)より、金持ちになると、本人以外に家族、召使などが閑暇である状態を示すこともある。《代行的有閑階級》の《代行的閑暇》である。

(6)同様に、《代行的有閑階級》の《代行的消費》もある。

(7)《代行的有閑階級》であるかどうかは、気を使わなければならない主人がいるかどうかでわかる。例えば、妻が《代行的》ならば、なんらかの意味で主人への服従を示す行動をする(ex.帰宅時間にはほぼ家にいるようにする)。主人というよりも《家》全体に対する《代行》である場合も増えている。

(8)階級を下るとすぐに、顕示的閑暇はなくなる。

(9)中層階級の下層では、主人の顕示的閑暇がないのに、代行的閑暇(と代行的消費)がある場合がある。《皮肉な現象》

(10)代行的閑暇のほうが上の階級でなくなり、代行的消費がずっと下まである。

(11)見せびらかしの消費はまず主人になくなり、子供、最後に妻が残る。

(12)都市化が進み、都市間の流動性が高まると、顕示的閑暇よりも、顕示的消費のほうが多く見られるようになる。それは、付き合いが浅くなり、貯蓄があるとか教養があるとかは見えにくくなり、直接わかる顕示的消費で示すことになる。たとえば、「おごり」などは、お金を持ってることを示す簡単な例である。

(13)「制作本能」によって、無駄はいけないことだという考えが生じる。そのため閑を示す、顕示的閑暇はあまり好まれなくなる。(これは、産業革命以後の風潮ともいえるが、中層階級のもっている価値観ともいえる)

(14)精神的な幸福を与える無駄で虚栄の支出は不可欠である。

(15)社会階級の一つ上の階級の(消費の)慣習を真似る。

(15')もし、階級の区別がはっきりしない社会では、名声や世間的体面の基準、消費の標準はすべて最高の社会的金銭的階級の慣習、思考習慣の模倣となる。

《趣味の金銭的基準》
(1)普通は世間のことを気にして消費している。
  (a)確立された世間の習慣に従う
  (b)それはおかしいとの忠告や批判は避ける
  (c)時間や労力の使い方が世間の基準にあうようにする
  (d)消費する財貨の種類(製品クラス)、分量、等級(ブランド)が世間の基準にあうようにする

(2)世間の基準に従った贅沢は、人の目につくものについては当然だが、下着などの目につかないものでも贅沢がある。

(3)世間の基準に従うようにする顕示的浪費は、世間の目によってどんどん絞られていき、ある一定の基準が生じて、ついには正統的な消費の基準となる。

(4)このように生じた慣例の発達は、経済生活に直接影響するだけでなく、その他の行動に対しても、間接的な影響を及ぼす。つまり、何がいいか、何が悪いかについての習慣的な見方にも影響する。名誉ある浪費の基準が、直接、間接に義務の感覚、美の感覚、有用性の感覚、敬神(信心)や儀式の感覚、真理の科学的感覚にも影響する。

次の本も参考にせよ
ジュリエット B. ショア(森岡孝二監訳) 2000. 『浪費するアメリカ人−なぜ要らないものまでほしがるか』岩波書店
基準が隣人や同じ階層ではなく,上のレベル(中の上もしくはテレビにでてくる人たち)になっている。そして,服装や家からどのような生活やものをもっているかわかる。

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例:「大学」を例にとって、考えてみよう
(1)大学に行く人たちは、代行的閑暇を示していると言える。(大学名そのものが重要なら、代行的消費)
(2)お勉強も、代行的閑暇において行うものである。
(3)ある程度、上のものの価値観に従うのも、躾の一つのタイプである。これは典型的な代行的閑暇。
(4)ヨリ上層の階級のものは、(3)をしっかりし、主人の価値観に従うようになっているので、お勉強をする態度も形成されている。
(5)しかも、上層ほど、お勉強自体にもいろんな方法を使うことができる。例えば、家庭教師、塾、参考書、学習用品など。(代行的閑暇と代行的消費)
(6)さらに、いろんな所にいったり、経験を積む機会も多いので、知識を総合化しやすい。(代行的閑暇)
(7)(2)〜(6)によって、上層のほうが「お勉強」をよくする。
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(8)下層のほうは、(とくに妻がパートで働いている場合など)親は自分のことで手一杯であり、しつけをしっかりしない。しつけらしいことをいっても、それは回数も少なく、丁寧でない。(代行的閑暇、顕示的閑暇がない)
(9)下層の方は、それゆえ勉強をしたり、自分の興味を伸ばすよりも、時間を潰している子供が多い。(代行的閑暇ではない、単なる閑)
(10)金がある場合は塾に行かせているが、塾ならどこでもいいという決め方をしていたりする。(代行的閑暇または代行的消費)
(11)学校では、言葉を聞いたり、本を読んだりする学習が重要だが、どちらもあまり身に付いていない。(代行的閑暇)
(12)学校には不適応
(13)大学にはいいところにいく機会も少ない。都会の学校へも行かせることができない(金銭的理由)。それでも大学にいかせることもある(代行的閑暇)。
(14)大学にいっても、したらいいという代行的閑暇的活動もしくは顕示的閑暇の活動はせず、ただ、友人と話をしたりする程度の、暇つぶしレベルの活動しかしない。本来の代行的閑暇は、勉学、スポーツ、芸術などの活動に参加することであろう。ますます、知的レベル、教養レベル、人間の幅がせばまる。そのほかに、クラブ活動での部長など人間関係的な面でのレベルをあげることも代行的閑暇になるだろうが、そういうことをなるべく避けるのが、意欲の低い人たちである。
(15)このように、低い層の親は、学校でしつけをやると思っているようであるが、学校でするのは集団活動で必要なレベルのしつけである。大学ではしつけはしないものだと考えない親もいる。(日本では勘違いの親はかなり広く分布している。説明してもわからない場合はかなり下のほうといっていいだろう。)

苅谷剛彦(2001). 日本は階層社会になる−「ゆとり教育」がもたらすインセンティブ・デバイド(学習意欲格差) 論座, 2001年1月号(通巻 68号), 36-47.にこのことを裏付けるデータがある。
1/3ずつにわけると階級変数上位1/3だけ勉学意欲が高い。偏差値 54〜55以上

*いい大学には上層の子弟が集まる。例えば、東大は慶応よりも親の所得が多いときがあった。

(2000年調査の東大生の家庭の平均年収は1016万円,東京大学学生生活実態調査2000年,日本経済新聞,2002年7月22日による,男子学生平均989万円,女子学生平均1115万円,年収950万円以上55.3%,1550万円以上10.4%)

*戦後しばらくは、大学は比較的開かれた場であったが、今は、いい大学は金持ちに開かれているといっていいだろう。

*ヴェブレンの有閑階級の理論は有閑階級だけの理論ではなく、広くすべての階級に言及した理論である。現在、相対的にレベルが上がってきた日本にとって、重要な社会の見方を提供している。


顕示的閑暇の例
(1)長い髪の毛 → 働かなくてもいいよ
(2)長い爪   →    〃

代行的閑暇と行儀作法
《衒示的閑暇としての礼儀作法》 ヴェブレン『有閑階級』岩波文庫(第3章 衒示的閑暇 p52-)
 とはいえ、礼儀作法は、それを行うものにとっても、それを見ているものにとっても、このような固有の効用をもっているけれども、しかし、礼節の本来的な正しさについてのこのような感じは、行儀作法や躾けの流行の直接の根拠にすぎない。その究極の経済的根拠は、それなくしては作法が得られないような閑暇、すなわち時間や労力の非生産的使用の名誉ある性格のなかに求められるべきである。よい作法や知識は長きにわたってつづけられる習熟によってはじめて出来上がるものである。洗練された趣味、作法、および生活習慣は、上流家族の絶好の証拠である。なんとなれば、よい躾けというものは、時間、熱心、費用などが必要であり、したがって時間なり精力なりが、仕事で手一杯になっているものは、それをりっぱに身につけることができないからである。よい作法を知っているということは、育ちのよい人の生活のうち、まわりの人の目の前で行われない部分が、なんら利得の効果をもたない手芸を身につけるために見事に使われたということの、なによりもはっきりした証拠である。つまり作法の価値は、それが有閑生活の証拠物件であるということのなかにある。それゆえに、反対にいうと、閑暇は金銭的名声をうるための因習(あらためられずに続いている古い習慣)的な手段であるから、誰でも多少とも金銭的に見苦しくない生活を望むものにとっては、ある程度、行儀作法に通ずることが必須のことである。
 ....逆にいえば、収益その他、直接に有用な目的にはまったく役立たない儀礼にひじょうに練達しており、またそのように、ひじょうに習熟している証拠が明白であればあるほど、それらのものの獲得にともなう時間や物量の消費はますます大きくなり、また、それにともなう名声はますます大きくなる。したがって、よい行儀作法に練達しようとする競争のもとでは、礼節の習慣を涵養(だんだんにやしない育てること)するのに多くの労苦が払われることになる。かくして、礼節の細目が発達して包括的な規律を形作るようになり、名声の点で人から後ろ指をさされまいとするものはすべて、これに従うことが必要となる。従ってまた他方では、礼節がそれから派生するこのような衒示的閑暇は、しだいに、立ち居振る舞いについての労苦の多い訓練とか、いかなる消費品目が上品であり、いかなるものが、それらのものを消費する上品なやり方であるかについての趣味や区別にかんする教育まで発展する。
これに関連して注目に値することは、抜け目のない模倣なり、組織的な訓練なりによって、...作り出すことができるという可能性が...教養ある階級を任意に作り出すのに重要な意味を持つようになったことである。...けっこう多くの家族なり家系なりの場合に、良家の生まれの一足飛びの進化が達成される。...
 そればかりでなく、上品な消費の品目なり仕方なりにかんする最近の儀礼的な公認基準に対する適度の合致の程度というものがある。これらの点の理想に対する合致の程度の、人々の間の格差は、互いに比較することができる。そして、人々は、行儀作法なり、育ちなりのなりの累進的な度盛り(どもり:温度計などの、度数を示す目盛り)に従って、ある程度まで正確かつ効果的に格づけされ、部類分けされることもできよう。...


渡辺和博とタラコプロダクション『金魂巻』主婦の友社(1984) →ちくま文庫(絶版)

ポール・ファッセル『階級−平等社会アメリカのタブー』光文社文庫

どのようなものをもつか(1)衣服(2)家具(3)レジャー



8 ハビトゥス

ブルデュー『ディスタンクシオン T・U』藤原書店
その解説 
石井洋二郎『差異と欲望』藤原書店

趣味と階級
 石井 p.53
「正統性」
 「自分にとって親しみ深いモデル」との日常的接触を通して獲得された文化資本は、いかにも貴族にふさわしい「良い趣味(ボン・グー)」を構成することになるのだが、ここで確認しておかなければならないのは、良い趣味なるものの正統性はなんら客観的根拠に裏打ちされたものではなく、あくまでも文化的階級闘争の(一時的な)結果として、勝者である支配階級が敗者である被支配階級に「押しつけ」、かつ被支配階級によって誤認=承認された、恣意的な表象にすぎないということだ。
p76
 したがって3階級への分割は主として経済資本(収入によって測定される)と文化資本(学歴や消費行動によって測定される)を合わせた「資本の総量」によって規定されることになる。

生活条件の集合を大まかに種別する基本的な差異は、経済資本、文化資本、それに社会的関係資本も加えて、実際に利用しうる手段や力の総体としての資本の総量に由来するものである。さまざまな階級(そして階級内集団)はこうして、経済資本においても文化資本においても最も恵まれたものからこれら両方に貧しいものにまで分かれてゆくことになる。

 たとえば支配階級の最上部に位置する自由業の人々は、一般に「収入も学歴も高く、支配階級(自由業または上級管理職)の出身である率がきわめて高く(52.9%)、物質的な財であれ文化的財であれ大量に享受し大量に消費する」のにたいして、中間階級の下層部に位置する事務労働者(事務員と商店員をまとめた総称)の人々は、一般に「学歴が低く、庶民階級または中間階級出身であるケースが多く、財を享受する量も消費する量もきわめて少ない」。こうした対立は、庶民階級に属する熟練工や単能工、さらには「最も低収入であり、学歴もなく、そのほとんどが庶民階級の出身である」単純労働者や農業労働者と自由業とのあいだでは、もっと顕著になるであろう。

経済資本と文化資本の割合が「資産構造」。
資本量大・経済資本優位 大工業実業家や大商人
資本量大・つりあい型 自由業、私企業および公企業・官庁管理職,上級技術者
資本量大・文化資本優位 高等・中等教育教授、芸術制作者
資本量中・経済資本優位 職人や小商人
つりあい型  その他
文化資本優位 文化媒介者や小学校教員
資本量小・経済資本優位 自営農
その他は資本量の大小で職工長→熟練工→単純労働者・農業労働者

支配階級:工業実業家、大商人、公企業・官庁管理職、私企業管理職、中等教育教授、高等教育教授、上級技術者、芸術制作者、自由業     
中間階級:職人、小商人、事務員、商店員、販売系一般管理職、事務系一般管理職、一般技術院、小学校教員、秘書、医療保険サービス従事者、工芸職人、文化媒介者
庶民階級:単純耕作者、農業労働者、自営農、単純労働者、単能工、熟練工、職工長、家庭使用人

趣味と高等教育
 社会的位置
  ↓
階級的ハビトゥス
   ↓
個人的ハビトゥス
   ↓
  慣習行動
   ↓
ライフスタイル
  
正当的趣味/中間的趣味/大衆的趣味
音楽
<正当的趣味>平均律クラヴィーア曲集、フーガの技法、左手のための協奏曲
<中間的趣味>ラプソディインブルー,ハンガリー狂詩曲
<大衆的趣味>美しき青きドナウ、ラ・トラヴィアータ、アルルの女
絵画  ゴヤ/ユトリロ、ビュッフェ、ルノアール、ゴッホ
写真

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小沢雅子『新「階層消費」の時代』日本経済新聞社(1985)(朝日新聞社文庫)にストックを持っているものと持っていないもので階層の違いがあり消費スタイルの違いがあるという指摘がある。
電通は階層とはいっていないが金持ち層をターゲットにした分析をしている。
電通総研『「豊熟」消費』日本経済新聞社(1989)
この本でもストックリッチの余裕度が他と違っていることがわかる。もうひとつ普通のレベルなのにやたら消費しまくる一群の人がいることである。バブル期の調査。
電通総研『新ぜいたく主義宣言−クオリティ確信派の誕生』日本経済新聞社(1994)
マーケットを考えると金持ち層にターゲットを当てた方がいいことはわかっている。
経済学の「価格弾力性」にも注意すること。家計調査等でかならず品目別データがでている。


《階級・階層について最近の参考文献》
「中央公論」編集部編『論争・中流崩壊』中公新書ラクレ(2001)
  2000年にまきおこった中流・不平等の論文・記事をまとめたもの
佐藤俊樹『不平等社会日本』中公新書(2000)
原純輔・盛山和夫『社会階層−豊かさの中の不平等』東京大学出版会(1999)
『日本の階層システム』1〜6 東京大学出版会(2000)

2節 文化

平凡社 マイペディア cd-rom版
文化
人間が自然のままの状態にとどまらず,労働によって自然に手を加え,自らも自然的状態から脱しつつ形成してきた物質的・精神的成果のすべてをいう。その定義・内容については,立場・時代により種々あるが,ジンメルによれば,「文化とは,より多くの生ではなく,生より以上のもの」としての客観的・精神的形象であり,生の流動を押しとどめ,結晶化したものである。またタイラーによれば,「知識・信仰・技芸・道徳・法律およびその他の能力や習慣を含む,ある社会の一員としての人間によって獲得された複合体」とされる。これに対し米国のクラックホーンは「文化とは,内的ならびに外的の二つの刺激に対する人間の反応を跡づける,歴史的につくられた選択過程である」と定義する。

文明
市民(civis)の語に由来し,主として政治・法律などの市民の権利や教養と結びついて生まれた言葉。文明を未開と対比する場合は,クラックホーンによれば「文明とは単に文化の一つのタイプ,すなわち複合文化もしくは高度文化」にすぎないとする。A.ウェーバーは文化運動・文明過程・社会過程の三分法をとり,文明とは直線的に無限の進歩を約束された技術的手段の総計とする。フランス啓蒙主義者は,文明を進歩の観念に基づく啓蒙と考え,中世的野蛮に対する人間の精神的・人間的自覚を含み,政治的要求につながるとした。また,文化に対し文明の世界市民性を強調し,民族的伝統に拘束された文化と対立させる立場もある。
--------------------------------- 知恵蔵 1992
文化/文明】culture/civilization
用法は国によって違う。ドイツではKulturが精神文化、Zivilizationが物質文明を意味し、前者を高く後者を低く見る傾向がある。これに対して英米ではcultureは生活様式(way of life)の意味。その中で特に高度のものを文明とよぶが、その基準は固有の文字を持つことなどがあげられる。日本の場合には、戦前はドイツ流の使い方、程度の高いものに限って用いた(文化人、文化住宅等)が、戦後は英米流の使用がひろがり、高低に限らず生活様式をさすようになり、特に文化人類学では、もっぱらこの用法である(縄文式文化、ピグミーの文化など)。なお梅棹忠夫らは人間の生活システム全体を文明、その中心にある価値システムを文化とよぶという独特の使方をしている。
うめさお・ただお(1920~)国立民族学博物館館長.『文明学の構築のために』(1981年,編著,中央公論社)
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文明は物質、文化は精神をさすことが多い


図 北山(2000)の自己と文化の相互システム
北山忍・宮本百合(2000). 文化心理学と洋の東西の巨視的比較 心理学評論, 43, 57-81.

1 文化的価値

(1)多文化マーケットにおけるマーケティング
日本単一?
北米 カナダ・米国・メキシコ
(2)北米文化
1992年 EC
北アメリカマーケティング圏

2 文化とはなにか

@自己と空間の感覚
Aコミュニケーションと言語
B衣服と外見
C食べ物と食習慣
D時間と時間意識
E関係(家族、組織、政府など)
F価値と規範
G信念と態度
H精神過程と学習
I仕事習慣と実践

(1)価値
価値は共有された信念または個人に内面化された集団規範
規範は個々の成員のための行動規則に関するその集団の合意としてある信念。

(2)マクロ文化
 社会全体または市民の大多数にあてはまる価値・シンボルのセット

(3)ミクロ文化
 宗教、民族、その他下位分割の価値・シンボルのセット

3 いつ人は自分の価値を獲得するか?

(1)社会化
(2)文化は学習される
(3)文化は教え込まれる
(4)文化は社会を満足させる反応に報酬を与える
(5)文化は適応的

4 文化はいかに消費者行動に影響を与えるか

(1)なぜひとは製品を買うか
消費者は製品を買って、機能、形式、意味を得る。

(a)機能 洗濯機−衣服を綺麗にする
   食べ物−栄養になる
   期待が充たされたならば、消費者満足が高くなり、ロイヤルティが生じる
洗濯機
ヨーロッパ文化 高能率、高負担1000ドル以上 ドイツのMIEL
北米 失敗→数百ドル、高い品質を望まない 
引っ越しが多くて、修理のレベルがよくない→簡便なものを選ぶ
       →使い捨て :壊れたり、引っ越しには捨てる
文化的文脈が製品の機能の意味を決める。

(b)形式 食べ物 HOT/COLD/CRISPぱりぱりする/TENDER柔らかい/電子レンジでチン
   寿司 日本は生 北米は生はだめ
   前面洗濯機 ヨーロッパはいいが、米国はだめ

(c)意味の象徴
 ほうれん草は「力」と結びついている
 食べ物は慣習的行動と結びついている。正月−雑煮 こどもの日−柏餅
 →記号論・製品の記号論

(2)消費の構造
 よい教育、健康 よいコンピュータ、よい音楽

(3)個人の意志決定
 金持ち・貧乏人 価格
 値切り交渉 文化による
 不満・満足の表明 そば屋の出前

(4)コミュニケーションと消費のイデオロギー
 テレビ番組
SECULAR 世俗的消費 うらみ・ねたみ
SACRED  聖なる消費 愛・栄光・統合 技術的に作られた物財に興味がない

5 核的価値がどのようにマーケティングに影響するか

米国の価値
@物質的よさ→物質主義,清潔さ
A2値的価値
B仕事は遊びより重要
C時は金なり
D努力、楽観主義、起業家精神
E自然の征服
F平等主義 達成の機会均等
G博愛主義
(2)日本
@タテ社会
A他人指向性・集団帰属性
B依存性・甘え
C生活における自然主義
残忍性
徹底を忌む心
類別しない精神
鍵の文化とふすまの文化
話さなくてもわかる
家族国家
見栄と駆け足の文化
中立のムード

蓮實重彦・山内昌之 1995 文明の衝突か、共存か 東京大学出版会

東洋『日本人のしつけと教育』東京大学出版会 1994
シリーズ人間の発達12 214pp

日米母子研究のまとめである。日米母子研究はバーンステインの仮説の検証ということから始まっている。
バーンステインの仮説
言語生活が精密コード(行動の統制よりも精密な理解を与えるための説明的発話)的な家庭に育った子どもは熟慮的になり、それが学校教育への適応にもプラスにはたらくので、… p23


p10
…アメリカでは、人の移動や新天地の開拓が自由だった。新しい可能性を開くことがとりもなおさず社会への貢献だった。そういう状況では、できるだけ積極的に、自分を主張し能力を発揮するのが望ましいことになる。当然他人と衝突が起こるが、これはいわゆる「パイを大きくする」という形で生活空間を拡げること、もしそれでうまくいかなければどちらかが飛び出してしまうことで解決できる。…イデオロギーで統合された反伝統的な国家…。
 ところが同じ時期の日本では、大部分の人は地域と地域社会に代々結ばれて、勝手に職業や住み処を移すことはできなかった。したがって日本では、同じ地域社会の人との結びつきは運命的で、しかもその結びつきが制度化された隣保組織によって、さらに補強されていた。このような組織の中では、どうしても、誰かが特別な利益を得れば誰かがその分損をするというゼロサム原理がはたらくので、突出への抑制が必要になる。衝突を回避し横並びを心がけるのは、こういう状況のもとで必要なことだった。しきたりの尊重も、入り組んだ社会関係をスムーズに動かす知恵でもあった。
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日本はゼロサム社会であるからアメリカと違う特殊な構造、行動形式。

p11
江戸時代 役と職分「役・分」
「分け前的平等主義」 アメリカ「規範的平等主義」
そこで問題にされているカテゴリーに関して同一カテゴリーに属するならば、平等な分け前が保証されるべきだという暗黙の前提に立つ。
例.同じ日本人なのに、同じ大学生なのに、同じ年度に入社した社員なのに
同時に、カテゴリーが違えば平等でなくても仕方がないという暗黙の容認を含む。

アメリカ「規範的平等主義」
ひとりひとりの人権の保障という考えに立った平等思想は、まず権利やルールを平等にし、その上で公正な競争を期待する。

日本には、分け前的平等主義と規範的平等主義の両方が働いている。

「自発的役割人間」
選択の限られた状況を受容することで、役割が個人のアイデンティティの中に組み込まれ自発化する。

江戸時代の子育ての伝統(小嶋秀夫)
「自分に割り当てられた役割を受け入れ、課題を忠実に遂行する人間になることが、それぞれの境遇に置かれた子どもたちに対して、強く期待された特性で」あり、「そのような人間であることは当人の自尊心の最大の源泉であった」

<人間関係や習俗の変化はなかなか生じない(制度、社会経済構造、建て前的な倫理基準の変化の影響は遅い)>
シュナイダーらは、アメリカの日系3世である親と、その子つまり4世との教育意識を調査し、しつけや教育についての文化的に形成された態度の根強さを見いだした。
例.自分をアメリカ人であると意識し、アメリカ人として育ち、英語しか話さない日系4世が、成績が悪いと自分だけでなく家族の恥だといった日本的反応をする。
例2.日系人が醤油に執着しなくなるのは4世ぐらいから。

−>長い間の人間関係や習俗によって文化的に形成された価値観や考え方は、特に強力な介入がなければ、新しい文化に適応して変化するのに4世代はかかるのではないだろうか。

「分に応ずる」「らしく(たとえば学生らしく)あれ」「忠孝」
太平洋戦争終了まで強調、隣保組織、町内会のゴミの分別収集などで今も機能している。
日本−流動性の制約されたゼロサム型の閉じた体制
米国−流動性の高い、開拓拡張型の体制

日本の行動規範−人との関係や人への配慮を重視し、役割への忠実性を求め、自己主張を抑制する傾向
米国の行動規範−個人としての諸資質をできるだけ充分に発揮することを重視し、個人としての一貫性と信頼性を求め、自己主張を励ます傾向をもった

いい子アイデンティティ の違い
 日本型:共生型いい子像 暖かい人間関係、きまり・しつけ、自己犠牲の精神
 米国型:独立型いい子像 公平・公正・自由・平等、自立心・自己責任、主張、意志

気持ち主義(日本)
  人の気持ちを重視し、従って気持ちを知ろう、読もうとする傾向。
  例.ドキュメント、事件
  −>先回り配慮

いうことを聞かせるためにあげる根拠の日米比較
         日本(%) 米国(%)
親としての権威    18  <<  50
規則         15     16
気持ち        22  >>   7
結果         37  >>  23
その他         8     4
 
母親の発達期待
学校教科的能力     1.24  1.36
従順          2.16 >> 1.97
行儀          2.49 > 2.30
感情の制御       2.49 >> 2.08
身の回りのことの自立  2.02 >> 1.86
社会的能力       1.86 << 2.18
言語的自己主張     1.73 << 2.17
 
日本の教育ママ
 「教師」の役を演ずるのでない。教材を与え、塾に通わせ、家庭教師を雇い、勉強を励まし、遊んでしまわないように監視し、トレーナー、そして悪くすると鞭撻役を演じる。

滲み込み型  教えない母親(日本)→環境は豊かに 文字環境 
(米国:教え込み型)
学習者が自分の興味や生活的な必要によって行う自発的な活動の中での偶発学習や試行錯誤と尊敬や愛情の対象となる親や教師や先輩のやり方を身につけようとする模倣(モデリング)と、それを何回も繰り返えしてそれに習熟する努力とが、滲み込み型の学習を担う。 p116
滲み込みは接触伝達だから、「一緒にいる」ことが重要になる。→ベタベタする

教え込み(指示型)は、組織的・論理的に構成することができるから、明確な目標を達成するのにはより効率的である。かつ、ただ形の上でできるようにするだけでなく、どうしてそうなるのかという仕組みに入り込んで教えることができる。近代社会が要求する知識や技能を教えるのに、教え込みモデルが主となるのは当然である。
 問題:その論理性や効率性が、思考や行動に対するコントロールを効かせ過ぎるということがある。教育は未知の未来に対して備えるという一面をもつから、たとい現在の最善のものであっても、そこにあまりきっちりとはめ込んではいけない。…いつでも「はみ出し」の可能性を残しておく必要がある。コントロールが効きすぎると、はみ出しがむずかしくなる。
 権威の高い方から低い方に流れ、学習者の受身性がモデルに組み込まれる。


道徳意識
   律法主義(欧米) vs 気持ち主義(日本)
コールバーグのような道徳意識の発達を考えていいのだろうか。
コールバーグの発達段階は「律法的で普遍性試行的な欧米道徳意識」を前提にしている、日本は「人間関係的で主情的な日本型道徳意識」である。このどちらが悪いとも言えない。世界がゼロサム社会に向かう中で日本的な道徳意識をこれからの道徳意識と考えてもいい。

コールバーグ的な発達観は「正しい−正しくない」のような道徳的評価、「楽しい−つらい」「美しい−醜いな」のような感性的評価が一つの軸になっており、感性的評価を道徳的評価に従属させている。日本は2つが分離するが、感性的評価に重みが偏ると、筋を通した道徳的批判が行われなかったり、ないがしろにされたりするおそれがある。

法によって公正を求めることを目的とする「裁判所モデル」
共感的に支え合おうとする「家族共生モデル」
日本人は現実肯定的である一方、原理原則にあまり囚われないこと、その結果、非戒律的主情的である。なるべく対立を避ける。「悪気がなかった。葛藤を時が解決する。配慮を優先する。」

対立を避けることに高い価値をおく社会 
→誤告発(実態以上に悪いと断じてしまう)の不都合さが重大

対立を当然と考える社会
→誤容認(悪いのにその悪さが指摘できない)の不都合さが重大

「異文化間の発達の比較は、特定の方向におかれた目標にどれほど近づいたかによってではなく、発達の始めからどのようにどれだけ進んできたかによって行わなければならない。」


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