これは「消費者行動」講義中に提示した素材を元にしたものです。若干の変更を加えています。ここにある以外の説明をしていますので注意してください。
          (香川大学経済学部 堀 啓造)

第20回1999年 6月29日 counter: (1998/8/25から)
13章 消費者行動における状況要因
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1節 消費者行動への状況的影響
   レヴィン/状況とはなにか/消費者場面の特徴
2節 価格判断における状況要因
   順応水準理論
3節 店舗内消費者行動における状況要因
   計画購買・衝動購買
4節 状況要因に関する心理学的研究
  1 状況要因の重要性
  2 購買状況の計量分析
5節 消費者に影響を与える状況要因
  1 コミュニケーション場面
  2 購入場面
  3 使用場面
  4 人×場面
  5 予期しない場面の影響

1節 消費者行動への状況的影響

レヴィン

B=f(P・E)
行動=関数(人間×環境)
(1)同一の環境におかれていたとしても,個人特性が異なれば,そこでとられる行動は異なる
(2)同じ個人特性を持つものであってもおかれた環境が異なれば,そこでとられる行動は異なる
(3)ある特性を持つ個人に対する一定の環境の影響の仕方は,別の特性を持つ個人への影響の仕方が異なる(個人特性と環境条件との間に相互作用がある)

状況とはなにか

「購買場面・時点に物理的,時間的に比較的近接したもの」

註 B.クラーエ(1996)『社会的状況とパーソナリティ』北大路書房



消費者場面の特徴

Belk,R.W.(1975) Journal of Consumer Research,2.p157-164. p199 表13-2
1. 物理的環境
2. 社会的環境
3. 時間
4. 課題
5. 先行状態

1.物理的環境:
消費者場面を構成している有形の特性。地理的場所、室内装飾、音、香り、明かり、天候、商品の視覚的形状、刺激事物を取り囲む他の材料を含む。

「気温から考える営業のヒント」http://www.jmrlsi.co.jp/menu/eigyou/eigyou_new.html
このリンクはすぐにきれそうです
 30℃以上 ビール,牛乳急増
 29℃以上 日傘
 28℃以上 夏物衣料,うなぎ蒲焼き,日焼け止めクリーム
 27℃以上 すいか
…  20℃以上 ビール,アイスクリーム,エアコン
 19℃以上 半袖Tシャツ
 15℃以下 スキー用品,長袖ブラウス
 13℃以下 手袋
 10℃以下 ジャケット,カイロ


2.社会的環境:
その場面に他の人がいるかいないか。
3.時間:
行動が起こったときの特定の瞬間としての場面の時間的特性(時刻、曜日、月、季節)。時間は、その場面の参加者にとってのある過去またはある未来の出来事との関係で測定されることもある(最後の購入からの時間、給料日までの時間)。
4.課題:
ある場面で消費者がもっている特定の目標や目的。例えば、友人の結婚プレゼントの買物をしに来た人は自分自身の個人的使用のために買物に来た場合とは違った場面にいる。
5.先行状態:消費者がその場面に持ち込んだ、その時の気分(例.不安、楽しい、興奮状態)または条件(例.現金を持っている、疲労)。先行状態はある場面内におこった一時的状態やヨリ永続的な個人の特性(例.人格)とは異なる。

2節 価格判断における状況要因


順応水準理論
人間の知覚判断は絶対的な基準に従って行われるのでなく,個人がその時点で順応している水準にしたがって相対的に行われる。
順応 大辞林2版(CD-ROM版)
じゅん-のう -オウ [0] 【順応】 (名)スル
(1)環境や境遇の変化になれること。「環境に―する」「―性」
(2)生物体の機能・性質・状態が,与えられた外部条件の持続的な変化に応じて変化すること。
(3)〔心〕 感覚器官が同一刺激を連続して受容すると,それに対する感受性が低下する現象。匂いに対する嗅覚の順応や視覚の明順応・暗順応の類。
ヘルソンの順応水準(AL)理論の刺激
(1)現在,直接の反応の対象となっている刺激(焦点刺激:S)
(2)焦点刺激に対して背景または文脈を形成している刺激(背景刺激,文脈刺激:B)
(3)過去経験の残存効果および生活体の内的状態(残余刺激:R)
AL=K(S^p*B^q*R^r) p+q+r=1
・ALとは生活体に何も反応をひき起こさないか,あるいは中性的反応を生じさせる刺激値である。(平凡社『心理学事典新版』)
・順応水準はポジティブな価値をもっている。水準以上でも以下でも行動を起こさせる力をもつ。
・反応の強度はそのときの順応水準の距離の関数である。行動は両極的である。
(順応水準の両方向でまったく違う反応をする)


ここで問題になっているのは主として(2)の文脈刺激である。図13-1
図13-2は(2)と(3)の両者が入っている。いずれにしてもフレーミングということになる。


3節 店舗内消費者行動における状況要因

計画購買・衝動購買

青木(1989,p73)
田島・青木編著『店頭研究と消費者行動分析』誠文堂新光社
(1983年流通経済研究所 1020サンプル 加工品・日用雑貨)

計画購買(11.0%)
銘柄選択(10.8%)┓12.9% ┓
銘柄代替( 2.1%)┛   ┃89.0%
想起購買(27.8%)┓   ┃(広義の非計 
関連購買( 6.4%)┃76.1% ┛ 画購買)
条件購買(26.8%)┃
衝動購買(15.3%)┛


4節 状況要因に関する心理学的研究

1 状況要因の重要性

ベルク
ラッセルとメーラビアン(1976) 媒介変数

2 購買状況の計量分析


5節 消費者に影響を与える状況要因


1 コミュニケーション場面

パーソナル/非パーソナルコミュニケーション
例.テレビ広告
ほかに人がいると、CMタイムはおしゃべりタイム
短い広告→1秒あたりのメッセージが多くなる 30秒→15秒
ドラマと同一の調子のCM
幸福な番組・不幸な番組

2 購入場面

(1)情報環境
@情報利用可能性
A情報負荷
B情報フォーマット 単価のリストがある/個々の製品に単価が書いてある
C情報形式 数字の比較、とてもよい・かなりいい・いいなどのことば

(2)小売り環境
店舗雰囲気
@ 音楽
大きい/ソフト スーパー 
 大きい音だと短時間で同じ金額
遅いテンポ 滞在時間が長い・高額
レストラン 遅いテンポ 
時間25%長、金額50%大
Aレイアウトと店内配置 出口、入り口、平場、みやすい所 POP

棚割の法則 細かい説明もあるので読んでおくこと。

B色 暖かい色は外に向いている
CPOP材料 Point of Purchase
D売り子
『朝日の読者'87』朝日新聞社  p7 p9
「広告媒体の今日的意義 消費生活に生かされている情報源は」

この記事にのっているデータからふだん参考にしている情報源と買うときに参考にした情報源を比較してみよう。データの載せ方から正確な比較はできない。概ね同じ傾向があるので,ふだんの情報源としてゴルフやテニスなどスポーツ用品と買うときの買うときに参考にした情報源としてテニスのラケットを比較する。もう一つ,ふだんの情報源としてステレオやコンパクトディスクなど音響製品と買うときに参考にした情報源としてステレオのラジカセを対照させる。情報源として,ふだんのほうは新聞は記事と広告,テレビは番組とコマーシャルの2つに分かれているが,買うときに参考にした情報源はそれぞれ新聞,テレビにまとまっている。

スポーツ用品の図      音響製品の図


比べてみれば買う段になると店員・セールスマンまた友人・知人や家族の話の影響力が強くなっていることがわかる。

テニスのラケット

(車内吊り 0%)
新聞           12.7
テレビ           4.2
ラジオ           0.6
雑誌           13.9
チラシ           3.6
ダイレクトメール      2.4
店員・セールスマン    31.3
友人・知人や家族の話   38.0


E混み具合 混んでいると買い回り時間が短く、次回に購入を延ばす傾向

(3)時間の影響
クリスマス、バーゲン、お盆、中元・歳暮

3 使用場面

  食後の果物 朝・昼・夕
  うどん・ぱん

4 人×場面

5 予期しない場面の影響



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