これは「消費者行動」講義中に提示した素材を元にしたものです。若干の変更を加えています。ここにある以外の説明をしていますので注意してください。
          (香川大学経済学部 堀 啓造)

第17回1999年06月22日 counter: (1998/8/25から)
10章 消費者の態度形成と変容
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世界でもっとも強力なブランド名は? ベスト10
@ コカコーラ Aソニー Bメルセデスベンツ Cコダック Dディズニー 
Eネスレ Fトヨタ GマクドナルドHIBM Iペプシコーラ

日本では?

1節 消費者の態度形成
 1 消費者の態度
 2 態度の成分
 3 態度の特性
 4 態度の形成
 5 多属性態度モデル
2節 広告戦略と態度変容→テキスト
3節 広告戦略と態度変容
 1 ELM(精緻化見込み)モデル
 2 情報源効果
 3 メッセージ効果
 4 反復効果
 5 消費者の考察
 6 製品の考察
4節 段階的勧誘法などの行動変容テクニック
 1 さそい
 2 Foot-in-the-Door(FITD)
 3 Door-in-the-Face
 4 ローボール技法
 5 ラベリング
 6 試供品
 7 誘引
 8 生態学的環境
  5節 態度・意図から行動へ
 1 消費者は好きなものを買うのか
 2 行動意図モデルから計画行動モデルへ
 3 その他の問題

1節 消費者の態度形成

 消費者の態度

態度の定義
ローゼンバーグとホブランド
「特定の刺激に対し,一定の仕方で反応する傾性」
態度は反応のための準備状態,傾性。
人間の行動を説明する,あるいは予測する重要な要因と考えられる。

 態度の成分

知情意モデル
認知的成分 → 感情的成分 → 意志的 → 行動
(信念)   (全体的評価) (行動意図)
知識     好き・嫌い

         予測力
低い <−−−−−−−−−−−−−−> 高い
         診断力
高い <−−−−−−−−−−−−−−> 低い

信念・態度・意図の測定例。

信念測度
ペプシは甘さはどの程度ですか?

態度測度
あなたはどの程度ペプシが好きですか?

意図測度
あなたはペプシを買おうと思っていますか?
   

 態度の特性

@好意の次元 好き嫌い
A強度    その強度
B確信  ある態度は確信の程度が高い
C安定性 時間によって変わらないもの
     ・変わるもの
D功利的特性/快楽的特性

 態度の形成

広告等間接的言説知覚
直接経験の役割
 フェスティンガーの認知的不協和理論
 ベムの自己知覚理論

不況時・好況時・バブル時

 多属性態度モデル 

顕著な属性

(1)フィッシュバイン(Fishbein)モデル
 4章 消費者の情報探索と選択肢評価

(2)理想点モデル
ブランドに n
対する  =Σ(属性iの重要性)×
態度    i=1

|(属性iの理想成績)−(ブランドの属性iの実際の成績についての信念)|

ソフトドリンクの理想点
               
とても甘い _:_:_:_:_:_:_ とても苦い
      1 2 3 4 5 6 7

それが

まったく重要でない _:_:_:_:_:_:_ とても重要
          0 1 2 3 4 5 6

──────────────────────────────
                      信念(Xi)
                     ブランド
属性       重要度(Wi) 理想点(Ii) あ    い
──────────────────────────────

甘い(1)−苦い(7)    6     2    2    3
炭酸
高(1)−低(7)      3     3    2    6
カロリー
高(1)−低(7)      4     5    4    5
果汁
高(1)−低(7)      4     1    2    2
価格
高(1)−低(7)      5     5    4    3
──────────────────────────────
合計                   16
──────────────────────────────

2節 広告戦略と態度変容

@ブランド信念の変容
A属性の重要性の変容
B理想点の変容
C選択肢変化の態度への影響の推定

3節 説得的コミュニケーションと態度

 ELM(精緻化見込み)モデル

11章p172

Petty and Cacioppo

概念図式

精緻化する動機づけ・能力→
中枢ルート…メッセージが効果的
周辺ルート…周辺的手がかり(服装、音楽、有名人)が効果的

実験
メッセージ内容(製品関連ありなし strong/week)
提示者(有名・無名)
製品選択(有無=関与)

実験結果の図

 情報源効果

情報源の特性 信頼できる・できない、身体的魅力、類似性、知識

 メッセージ効果

@主張の強さ 
製品との関連性

客観的主張、主観的主張



探索
(客観的)
・5つのタイプの葉巻を揃えています
・ 私どものブランドはコレステロールを含んでいません
(主観的)・私どもは特別の宝石のコレクションを揃えております
・ 魅力的なスタイルをいろいろ取り揃えております
経験
(客観的)
・ 私どものテントの中で濡れることはありません
・ テストの結果は30分でわかります
(主観的)
・ 豪華な食事を提供いたします
・専門家の判定が簡単に使えます 

信用
(客観的)遠距離ネットワークに5000億円投資しました
・ 私どものタイヤは徹底的にテストいたしました
(主観的)われわれのワインは自然に発酵させております 
・ われわれのつや出し剤は77の代表的画廊や美術館で使われております

A主張の数  低関与の場合数が影響することがある
Bメッセージの側面性 両側・一方
C比較メッセージ
D感情的メッセージ
b 恐怖喚起コミュニケーション
Eできばえ要素 視覚、音声、色彩、ペース (周辺的)

取違孝昭(1996)『詐欺の心理学−どうだます?なぜだまされる?』講談社ブルーバックス
『豊田商事の販売促進マニュアル』広告批評,1987.10,no99,47-52
 (no,18)
 
(4)広告に対する態度の影響

電通BASIC CFテスト
──────────────────────────────
注目段階
(接触性) 迫力を感じる,特色のある,新鮮みのある,注意をひかない
(関与性) 楽しくなる,きれいな,ひきつけられる,退屈な
(累積性) 親しみやすい,また見たくなる,肩のこらない,しつこさを感じる
理解段階
(伝達性) 具体的な,すなおな,スッキリした,わかりにくい
記憶段階
(記銘性) おぼえやすい,心に残る,リズムにのった,個性のない
態度変容段階
(説得性) 共感できる,説得力のある,納得のいく,そらぞらしい
──────────────────────────────
仁科貞文(1982)『広告心理−消費者心理と広告計画』電通 p189

 反復効果

 消費者の考察

 @動機
 A覚醒
 B知識
 Cムード
 D性格特性 自己モニタリング
 Eすでにある態度 賛成・反対

 製品の考察
 @製品のライフサイクルの段階
 A製品経験
 B製品のポジショニング p169

4節 段階的勧誘法などの行動変容テクニック

1 さそい
  新しいメニューを試してみませんか
  赤だし味噌はどうしましょうか

2 Foot-in-the-Door(FITD)

  最初のなんでもない誘いにのると、あとの誘いにOKしてしまう。
  →アンケート調査 チャリティ お話だけでも cf.豊田商法
  肯定的な構えができてしまう。
  直接的なお願いよりも効果がある。

3 Door-in-the-Face

最初の要請は、2番目の要請よりも複雑 
100万円貸してくれ→10万円かしてくれ
最初は拒絶する。では、〜ではどうですか。
社会規範 無碍に断るのは悪い→不安の解消

4 ローボール技法

5.ラベリング

「親切だ」 ラベルにふさわしい行動をするようになる。
  持続は短い

6 試供品

一度使ってみる。→一度使ったから、今度もそうしよう (習慣化)
→態度(強力な競争相手がいると、一度与えてみないと売れない)
  認知のレベルで反応

7 誘引

割引・バーゲン、プレミア、コンテスト、くじ、リベート、クーポン、スタンプ
内的動機、誘引はブランド・ロイヤルティを下げる。例。ASICCSの割引
使い過ぎの問題…強化がないと買わない

8 生態学的環境 

p124 トピックス10 強化と意識
エコロジカル、デザイン
環境 音楽→早く買う(音楽があると決断が早い) 横浜国大 闇市
ショッピングモール→流れ
片原町
購入点 point of purchase(POP)が大事

5節 態度・意図から行動へ

1 消費者は好きなものを買うのか

2 行動意図モデルから計画行動モデルへ

Ajzen,I.(1988) Attitudes, personality, and behavior. Dorsey.
統制要因 control factors
(1)内部要因
 (a)情報,技能,能力
   忘却もある
 (b)感情と衝動(強迫)
(2)外部要因
 (a)機会
 (b)他人への依拠
 これらはその機会については決定因となるかもしれないが,その後の行動に影響するわけではない。

計画行動の理論

3 その他の問題

d 測定上の問題
(1)測定の仕方
@行為 買う、使う、借りる 本を読む(買う、借りる、立ち読み、図書館)
A時間 何曜日
B文脈 ソフトドリンクを飲む:雑貨屋、レストラン、映画館、学校
(2)時間間隔 測定時と実行時の間隔
(3)経験   間接経験
(4)利用可能性  記憶から検索できるか
(5)社会的影響  社会的に望ましい方向にバイアスがかかる

態度をうまく測らないと落とし穴に陥る。



Engel et al.(1995) Consumer behavior. 8th ed. Dryden
を参考にした部分が多い。
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