アメリカで打つ讃岐うどん


 高松にいたときは、毎日のように讃岐うどんを食べていた。アメリカに赴任することが決まったとき、アメリカでも、自分の手でおいしいうどんを打って食べようと計画していた。高松での生活のうちに、せっかく讃岐うどんの打ち方を覚えたのだから作らない手はない。しかし、問題は、道具と材料がアメリカでちゃんと揃えられるかどうかである。特にうどん用の小麦粉の入手は難しいように思われた。
 アメリカに滞在して2ヵ月超。トライ&エラーを繰り返しながら...、そしていろいろな情報を得ながら...、何度となくうどん打ちに挑戦して、ようやく「アメリカで打つ讃岐うどん」を自信を持って紹介できるほどにいたった。以下に作り方を解説するので、アメリカ滞在者の方には、是非、挑戦して頂きたい。
 以下の解説は、アメリカでも容易に調達できる道具と材料だけで作れるように考えてある。

用意するもの

★必要な道具

道具類  おいしい讃岐うどんを打つために、どうしても必要になる道具は、(1)粉をこねるための円形のたらい、(2)麺を伸ばすための棒、(3)ビニール袋、の3つである。もちろん、鍋釜包丁とか、一般的な調理道具も必要だが、アメリカの標準的な Kitchen に備え付けられている道具は除いている。 とは言っても、特に取り上げた3つの道具も特別なものではない。(1)たらいは、直径20〜30cmの円形のものなら、プラスチック製の bowl とかタッパーとか、あるいは鍋など、何でも良い。(2)麺棒は、もっとも調達困難であるように思われるが、これは、塩化ビニール製の水道管で良く、日本で言う「ホームセンター」のような店で、1ドルぐらいで調達可能である。内径3/4インチ(外径1インチ=2.5cm)ぐらいのものが2フィート(60cm)もあれば良い。(3)ビニール袋も、基本的にどんなものでも良いが、30cm四方ぐらいの透明のフリーザーバッグなどが使いやすく、かつ調達しやすいであろう。

★必要な材料
小麦粉

 うどん(2人前)を打つには、次の材料が必要になる。

 アメリカの 1 cup は、日本の1カップと異なるので注意が必要である。元々のレシピからいうと、本物の、こしの強ーい『讃岐うどん』を作るための材料(3人前程度)は、小麦粉:中力粉 400g, 水 180cc, 塩 20g となるのだが、アメリカでは、中力粉が入手が困難であるので、どこでも入手が容易な All Purpose として売られている薄力粉と、For Bread として売られている強力粉を混合して中力粉の代わりをさせることにした。
 また、アメリカでは、日本のように料理に際して秤が用いられることはなく、計量カップを使って調理をする。はかり自体の入手が困難で、これを探すことも大変なうえに買えば高いので、配合の比率を守りつつ、アメリカの計量方法に合わせて換算しなおしたのが上の数字である。
 一度決めた分量は厳密に守った方が、おいしい讃岐うどんが作れる。しかしながら、入手する小麦粉の種類によっては、含んでいる水分や粘り気の程度が異なって、上記の分量ではうまくいかないかも知れない。粘り気が少なく軟らかすぎると感じたら、水を少なめに、塩を多めに調整する。逆に、粘り気が強すぎたり硬いと感じたら、水を多めに、塩を少なめにして調整すれば良い。
 なお、後の延ばし工程で打ち粉が必要となるので: を、生地用小麦粉とは別にして、用意しておく。こちらの分量は適当で良い。

中筋麺粉  なお、容易に中力粉が入手できる上に、秤も持っているという人なら、元々のレシピにしたがった分量で作っても良い。筆者は、当初、中力粉を探しまわって、中国食材店で「中筋麺粉」なる小麦粉を入手し、また、アメリカの調理事情がわからないまま、サンフランシスコの Japan Town まで出かけていってわざわざ調理用の秤を購入した。確かに、おいしい讃岐うどんを作ることが出来たが、投じた努力と金銭とを勘案すれば、あまり利益はないように思う。唯一、このレシピを作成するための換算に役立ったぐらいか...。

こねる(生地作り)

★Are you ready?

process1  道具と材料が揃えば、ようやく、うどんを打ちはじめることが出来る。(1)まず、生地用のAll purpose と Bread 用の小麦粉を、たらいに入れてムラなくまぜておく。(2)水 1/2 cup 強に、塩 1TB を加えて、よくかき混ぜ、塩水を作っておく。(3)打ち粉用の小麦粉も別に混ぜてボウルか皿などにに入れておく。準備すべき事はこれだけである。
 (写真左上の bowl は、筆者が使っている小麦粉を入れておく容器。頻繁にうどんを打つので、あらかじめブレンドした小麦粉を用意してあるのだが、打ち粉として使うだけなら、こんなに大量に必要にはならない。)

★工程1

process3  小麦粉の入ったたらいに塩水を注ぎ、指を立てて、5分ほど円を描くように、まんべんなくかき混ぜる。白い小麦粉が混ぜるにしたがって黄色っぽくなって来る。このとき、写真のように、小麦粉が細かな破片になるのが良い。
 大きな一つの固まりになってしまったら失敗である。軟らかすぎるので、水が減らすか、塩を増やして再チャレンジだ。

★工程2

process4  5分ほど混ぜたら、細かな破片を集めて団子にまとめ、ビニール袋の中に入れて、厚さ 1cm 程度になるまで押し潰す。なお、ビニール袋に入れるのは乾燥を防ぐためで、延ばし工程に入るまでは、基本的に袋の中で作業すること。

★工程3

process5  厚さ 1cm ぐらいまで延ばしたら、いったん袋から出し、写真のようにロール状に巻いて、再び袋に戻す。

process6 そして、先ほどと同じように、厚さ 1cm 程度になるまで押し潰す。

★工程4

process7  今度は、三つ折りに畳んで袋の中で押し潰す。先ほどよりは、気持ち厚め(1.5cm 程度)に抑えておくと良い。これで生地は正方形になる。

★工程5

process8  次に正方形になった生地を、鏡餅のように丸くする。最初は、ちょっと難しく感じるが、以下のような手順で進めれば良い。

process9  四角になった生地を下から支えるように持ち、四隅を内側に巻き込むように織り込む。

process10  口が開かないように、しっかりと押さえ、最後は思いっきりねじるようにして口を閉じる。生地が切れるような不安を抱くかも知れないが、容易には切れたりしないので、きっちりと隙間を閉じておくこと。ここで穴を空けると、次の延ばし工程でうまくいかない。

★工程6

process11  口を閉じて丸めたら、袋の中に戻し、閉じた面を下にして10分程度ねかせる。
 しばらく休憩。

延ばし工程へ


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岡田徹太郎 tetsuta @ ec.kagawa-u.ac.jp
香川大学経済学部