日本心理学会第55回大会発表論文集 1991.10, p870 ファッション関与タイプと店舗選択

ファッション関与タイプと店舗選択

堀 啓造

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 その製品に対する関与はその製品に関する多くの意識と行動と関連している変数である。しかし,関与によってどのように行動が変わってくるかについてはよく知られていない。本稿においては大学生の高関与型商品であるファッションをとりあげ,ファッション品に対する関与と消費者の意識・行動との関係を報告する。一方,関与だけを唯一の切り口として消費者行動を語るのには単純すぎるように思われる。例えば,関与と製品の分化(Assaer,1987),関与と思考・感情(Berger,1986)など関与と他の変数を組み合わせてタイプ分けする研究がある。大学生におけるファッションに対する高関与者のタイプに,ファッションのスタイルが確立していて高関与のもの,未確立であるがファッションを学習中のために高関与となっているもの,その他に,学習中でもなく自分のファッションスタイルを確立していない者があると考えられる。また,ファッションスタイルを確立していても学習を十分して確立したものと,学習せずに確立したものがある。4つの高関与のタイプおよび中低関与により,店舗の利用およびファッション関連行動が異なるであろう。
[方法]調査年月:1990年12月
被験者:香川大学経済学部・法学部・教育学部学生(2〜4年生) 323名(内1名は関与項目未記入)
調査項目:項目は「非常にあてはまる」から「まったくあてはまらない」までの6段階評定であり,6〜1に得点化する。関与は小嶋他(1985)の感情的関与7項目中の5項目を使用した(Cronbachのα=.882)。全体を平均点により3分し,上位から高関与,中関与,低関与とよぶ。ファッション確立は,5項目中2項目に「あてはまる」以上の評定をしたもの。学習済みは知識に関する4項目中2項目に「あてはまる」以上の評定をしたもの。学習中は6項目中2項目に「あてはまる」以上の評定をしたもの。これらを組み合わせて4つ高関与タイプに割り振った。
   表1.関与型の頻度と関与平均点
         男子学生     女子学生
  関与型   頻度(%)  平均 頻度(%)  平均
1.学習済確立  25(12%)  5.5   9( 8%)  5.6
2.学習無確立  11( 5%)  5.2   5( 4%)  5.0
3.学習中高関与 11( 5%)  5.0  26(22%)  5.1
4.その他高関与 17( 8%)  5.1  19(16%)  5.1
5.中関与    52(26%)  4.4  34(28%)  4.5
6.低関与    86(43%)  3.3  27(23%)  3.7
  合計     202      120
 店員排斥3項目(Cronbachのα=.793),店員利用6項目(同=.905),気後れに関する量販店型5項目(同=.573),落ちつき,高級,インテリアに関する専門店型(同=.710),ブランドロイヤルティ2項目,購入価格(Tシャツ,パンツ,ジーンズ,スカート(女性のみ)各5段階),ブランド占有率(3項目各5段階)。 各従属変数を尺度化の因子的妥当性をチェックすると,量販店型,専門店型において2因子以上が存在る。しかも,それぞれの因子を下位尺度にすると,CRONBACKのα係数が.6以下の小さな値をとり,この2変数は尺度化に問題がある。
[結果]各尺度ごとに性×関与型(6類型・高関与4類型)の分散分析をした(表2)。 6類型のブランドロイヤルティ以外に性×関与型の交互作用が有意なものはない。性の要因は量販店,購入価格に違いがあった。関与6類型は店員利用,専門店型,ブランド占有率,ブランドロイヤルティ,購入価格に0.01%水準の有意差があった。関与型によって店員排斥,量販店の2つの低関与タイプの差がないという店が仮説に反する。関与4類型においては店員利用,ブランド占有率,購入価格に有意差がある。高関与の4つのタイプ分けは部分的に有効であることが確認された。
[文献]
Assael,H. 1987 consumer behavior and marketing action. 3rd ed. Boston:Kent.
BERGER,D. 1986 Theory into practic:The fcb grid. Europian Research,14(1),35-46.
小嶋外弘ほか 1985 製品関与と広告コミュニケーション効果 広告科学,11,34-44.

表2.関与タイ別平均値と分散分析結果
(分散分析は性×関与型 PCSAS VER 6.04 GLM SS3)
             関与型別平均値     分散分析
             1 2 3 4 5 6 6型 4型 
店員利用         3.8 3.3 3.5 2.8 3.0 2.5 1NN 5NN
店員排斥         3.9 4.5 3.9 4.0 4.1 4.2 NNN NNN
量販店          3.7 4.2 4.1 4.1 3.9 3.9 N1N N5N
専門店          4.2 3.9 4.1 4.0 3.7 3.5 1NN NNN
ブランド占有率      3.0 1.9 2.2 2.2 2.1 1.7 1NN 15N
ブランドロイヤルティ   4.4 3.2 3.5 3.7 3.2 2.5 1N5 NNN
購入価格         3.4 2.7 3.0 3.3 2.9 2.6 11N 15N
分散分析の6型は関与6類型,4型は高関与4類型。
1桁目は関与型,2桁目は性,3桁目は交互作用を表す。
N:有意差なし 5:5%水準 1:1%水準


表3.MANOVA表(WILKSのΛの有意性と自由度)
              性      関与型     交互作用
店員利用        .5108(6,304)  .0002(30,1218)  .2391
店員排斥        .3162(3,308)  .3576(15, 851)  .7053
量販店         .0009(5,305)  .4532(25,1135)  .8515
専門店         .0014(8,301)  .0003(40,1315)  .1958
ブランド占有率     .0001(3,307)  .0001(15, 848)  .2847
ブランドロイヤルティ  .5517(2,309)  .0001(10, 618)  .2474
購入価格        .0029(1,302)  .0001( 5, 302)  .5720

  表4.分散分析結果(PCSAS VER 6.04 GLM SS3)
              性      関与型     交互作用
店員利用         .48(.4886)  6.89(.0001)*   .82(.53)
店員排斥         1.44(.2316)  .97(.4388)   .51(.77)
量販店         11.58(.0008)  .40(.8487)   .87(.51)
専門店          .73(.3943)  5.94(.0001)   .70(.62)
ブランド占有率      3.64(.0575) 11.35(.0001)**  2.11(.06)
ブランドロイヤルティ   1.15(.2854)  8.32(.0001)   2.33(.04)
購入価格         8.99(.0029)  5.26(.0001)*   .77(.57)