ファッション店イメージの内容分析−女子大学生の場合−


                            堀 啓造

香川大学経済学部 堀 啓造

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堀 啓造 1990 ファッション店イメージの内容分析−女子大学生の場合− 香川大学経済論叢 第62巻第4号, 23-47
をhtml化したものです。引用する際はこの論文に言及してください。
 樹形図は堀 啓造 1990 高イメージ店と低イメージ店の認知構造 広告科学  第 21集, 89-94 にあります。
1. はじめに
   梯子登り法
   表1 店舗イメージの内容分類例
   図1.梯子登り法の例
   表2.Gutman & Alden(1985)の店舗イメージの内容分析
2.調査
2.1.調査期日
2.2.調査対象
2.3.調査手続き
3.調査結果
3.1.全体反応数の分析
3.2.イメージの内容分析
   表3 店舗イメージの内容分析
   表4 店舗イメージ項目の平均反応
3.3.抽象度別反応数の分析
3.4.各項目の分析
4.討論
文献

1.はじめに

 店舗イメージが購買行動に大きな影響を与えると考えられる。店舗イメージとは店舗評価と等価である。店舗イメージを一つでとらえると「よい−わるい」(または「好き−嫌い」)である。評価の軸には多様な側面があり、従来店舗イメージという枠組みで研究されてきた。
 店舗イメージの研究はMartineau(1958)から始まったとされている。その後、百貨店を中心に店舗イメージの研究が行なわれた(註1)。理論的にはMartineau(1958)を超える斬新な展開はなされていない(Engel,Blackwell,& Miniard,1986)。Martineau(1958)によると、店舗イメージとは「店舗が消費者の心の中に定義されるされ方であり、一部は機能的質により、一部は心理的属性のオーラによって定義される」。機能的質(機能的特性)は品揃え、価格、店内陳列などを指し、心理的属性(心理的特性)は親切さ、暖かさ、楽しさなどの店舗の雰囲気を指す(小島、1977)。両者をあわせて統合的な店舗イメージが作られる。
 店舗イメージの主な内容の例は表1にある。

          表1 店舗イメージの内容分類例

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(1)Martineau(1958)
 @レイアウトと装飾、Aシンボルと色彩、B広告、C店員
(2)Lindquist,J.D.(1974-1975)
 @商品構成…品質、選択・品揃え、スタイル・ファッション、保証、価格
 Aサービス…一般的サービス、販売員サービス、セルフサービス、返品の容易さ、クレジット、配達、電話注文
 B顧客状況…社会階層的訴求、セルフ・イメージ適合性、販売員
 C物的設備…物的設備(エレベータ、照明、空調、洗面所など)、店内レイアウト、建物(通路の位置・幅、敷物など)
 D便宜性…一般的な便宜性、立地の便利さ、駐車
 Eプロモーション…販売促進、広告・陳列、トレーディング・スタンプ、シンボルや色彩
 F店の雰囲気…雰囲気の良さ(暖かさ、気楽さ、気安さなど)
 G企業的要因…保守性・近代性、評判、信頼性
 H購買後の満足…商品の使用・返品・調整などに関する満足
(3)小島(1977) 
 @商品…品揃えの広さ、品揃えの深さ、品質、流行品の取りそろえ、商品クラスの数
 A価格…価格幅、値引き幅、他店との競争的価格、価格と品質の適合度
 B立地…駐車能力、近接道路の整備状況
 C店舗雰囲気…店内レイアウト、店内装飾・陳列、店内の混雑度
 D顧客サービス…飲食店、休憩所・公衆便所、営業時間、配達・配送センター
 E販売促進…宣伝広告、バーゲン・セール、催事、接客態度、店員の商品説明能力
(4)Engel et al.(1986)
 @立地、A品揃えのタイプと質、B価格、C広告と販売促進D店員、Eサービス、F顧 客のタイプ、G店の雰囲気、H購買後のサービスと満足
(5)佐々木(1988)
 @便宜性A選択性B信頼性C娯楽性
(6)Zimmer & Golden(1988)
 @属性特殊…レイアウト・見かけ、店舗の物理的条件の悪さ、高品質商品、中品質商品、品質の変動、低品質商品、広告への肯定的コメント、広告への否定的コメント、セールへの肯定的コメント、セール期間または関連で使われる否定的方法、よい選択、平均的選択、悪い選択、よいサービス、がまんできる(受容可能な)サービス、適切なサービス、貧弱なサービス、クレジットへの肯定的コメント、クレジットへの否定的コメント、カタログへの肯定的コメント、カタログサービスが悪い、よい保証・返品、保証・返品への否定的コメント、店員へのよい印象、よい立地、悪い立地、価格への肯定的コメント、価格への否定的コメント、低価格、中価格、高価格、よい評判
 A全体…一般的・全般的な肯定的コメント、一般的・全般的な否定的コメント、格が上がった、俗な・低階層、問題の店
 Bラベル…店のタイプについてのコメント
 C原型と典型…他の店への類似
 D製品…特定の製品がよい、特定の製品についての否定的コメント、服に満足、服が悪い、修理がよい
 E行動…購買パターン・購買頻度
 F雑…意見なし・知らない、その他−他のカテゴリーに入らないコメント
(7)野口(1986a,b)
 品揃えの豊富さ、価格の安さ、接客サービス、商品の品質、広告宣伝の内容、店の雰囲 気、立地の利便性、営業時間の長さ、駐車場の充実度、駐車場以外の設備の充実度
(8)日本商工会議所(1987)
 モデルT
商品の種類や量が豊富、店の雰囲気がよい、センスがよく流行品が多い、店の人が親切、値段が安い、近くて便利、サービスがよい、レジャーを楽しみながら買物ができる、店が信用できる、掛買やクレジットで買物ができる、駐車場が利用しやすい、用事が一度で済む
 モデルU
商品が豊富、値段が安い、品質がよい、近くだから、店が好き、用事のついで、その他
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 店舗イメージの内容および測定法についてさまざまな試みが行なわれている。測定法では、SD法(semantic differential法)、リッカート法、ステープル法(単極法)、自由回答法などが用いられている。内容の因子の抽出は著者の論理の枠組みによるもの、および、因子分析、多次元尺度法と探索的データ解析を用いたものがある(註2)。SD法、リッカート法、ステープル法などはすべてあらかじめイメージ評価の項目を割り出しておく必要がある。そのような先験的な考えなしに自由に消費者のイメージを探ることができるのが自由回答法である(註3)。Zimmer & Golden(1988)は自由回答法を次のようにタイプ分けしている。
@特定の店の名前または特定の店舗タイプが挙げて、最初に浮かんだ言葉やことを報告する。
A特定の店舗タイプを挙げて、心に浮かんだ属性、特徴、用語を羅列する。
B店舗タイプを選択するのに重要な要因を羅列する。
Cある店でもっとも好きなこと、好きでないことを示す。
D特定の店を挙げてその店のイメージを自由に記述させる。
@〜Cの方法は反応として単語または名詞句を採用しているためイメージを捉えているとはいえないので、彼らはDの方法を使っている。表1にあるように彼らの内容には全体、ラベル、原型と典型など従来にない分類項目があがっており、その方法の独自性を示している。ところで、@〜Dの研究法はすべて被験者の頭にすぐ浮かぶことしか回答しないという限界がある。被験者の回答をもっと深化させていくように系統的質問をしていく自由回答法がある。それが次に述べる梯子登り法である。

 梯子登り法はGutmanとReynoldsが中心となって開発した手法である。彼らは認知構造が手段−目標(註4)の連鎖になっていると仮定し、認知構造を引き出すものとして梯子登り法を使用した。彼らの手段−目標連鎖分析(註5)では抽象度に3つのレベルを想定し、抽象度の低い段階から順に属性、結果、価値の3段階を設けている。Gutman(1984)およびPeter & Olson(1987)らは、さらに、属性を具体的属性と抽象的属性、結果を機能的結果と心理社会的結果、価値を道具的価値と究極価値に分解している。いずれにしても、手段−目標連鎖分析では、抽象度を考慮にいれた仮説をもち、(具体的)属性から価値にいたる一連の連鎖をもつ認知構造を考える。この認知構造を階層価値構造図と呼んでいる。
 梯子登り法の具体例としてGutman & Alden(1985)の研究がある。彼らはあるタイプの店(もっともよく買う店、着るのが好きな服を売っている店、好きだけど買わない店、前は買っていたが、もう買わない店、入るのさえ嫌な店、買うのが楽しい店、着たくない服を売っている店)名を挙げさせ、その理由を記述させている。例えば、買うのが楽しい店に挙げた店に対してその理由として「小さい店」を挙げるとする。さらになぜ「大きい店」よりも「小さい店」を好むのかを聞く。そして「ユニークな商品」という理由を挙げるとさらにその理由を聞く、「個性を表現できる」「他人に印象づける」「自尊心」というように順次その理由を挙げさせていく。理由があがらなくなったらそこで梯子登りは終わる。このように順次理由を挙げさせていく手法を「梯子登り法(laddering)」という。梯子登り法がユニークな点は強制的に心のなかをたどらせるところである。店舗イメージ研究の以前の手法は心に浮かぶことをそのまま記述させるだけだが、梯子登り法は浮かんだことの意味づけを求め、表層だけでなく深層まで内観させている(註6)。この方法を使うと、従来の研究では引き出しにくかった機能的特性および心理的特性を被験者から直接抽出できる。特に、手段−目標連鎖分析での結果や価値に関連して象徴を抽出することができる。この手法を使用して店舗イメージを研究しているものにGutman & Alden(1985)、Reynolds & Jamieson(1985)がある。


              図1 梯子登り法の例

   表2.Gutman & Alden(1985)の店舗イメージの内容分析

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@属性
 サービス/ブランド選択/店の内装・ディスプレイ/購買者のタイプ/よい製品/いい 服をきた店員/店の評判/高品質/小さい店/大きい店
A結果
 長もちする・スタイルが続く・長く使える/使いみちが広い・柔軟・多くの機会に着る ことができる/買うのが楽しい・退屈でない/早く買うことができる・早い・時間を節 約できる/せわしく感じない・自分の時間をもてる/リラックスする・落ち着く/多く の中から選べる・選択が制限されていない/買う服が少なくてすむ/お金を節約できる ・お金を使わない/ワードローブが幅広くなる/便利/買うのが少なくて済む/長もち する/比較するのが簡単/他のものにお金が使える/ほかのことに時間が使える/もっ とたくさんのことができる・もっとうまくすることができる/無視されない・気にかけ られていると感じる/退屈しない・ずっとおもしろい/流行っている・流行の/決定が 簡単・決めている/あまり迷わない・より安全・安心/偉くなった気がする/格好がよ /・服装がりっぱ/他人に印象づける・他人によく見える・賞賛される・他人よりよく みせる/適応しやすい・ひととうまく合う/個性を表現できる・目立つ/気分がよい/ コントロールしている
B価値
 自信/自尊心/安全/所属・親和・受容/達成・成功/生活を楽しむ
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 表2にあるようにGutman & Alden(1985)の内容分析では、店舗イメージの内容を属性、結果、価値に分け、さらに下位分類をしている。属性の下位カテゴリは従来のカテゴリに近い。結果の下位カテゴリは被験者の反応をほぼそのまま採用している。結果の下位カテゴリはかなり小さく未整理のまま残っているので、カテゴリの見直しの必要がある。価値についてはRokeach(1973)の価値がほぼそのまま下位カテゴリに使われている。


 本研究では、女子学生にとって関与が高いであろうファッション店について梯子登り法から得られた反応を内容分析し、店舗イメージの構成要素を明確し、階層価値構造の例を示す。(註7) 

 調査地点として横浜市と高松市の大学を選んでいる。横浜と高松はそれぞれ首都圏大都市と地方中都市の県庁所在都市であり、昭和60年国勢調査において人口はそれぞれ301万人と33万人である。横浜と高松では商業的に対照的なところがある。横浜は横浜駅およびその近辺の大型店が集中しているが、大型店以外のファッション関係の専門店は少ない(註8)。高松は、博報堂生活総合研究所(1989)が「一貨店が『百店』、百貨店が『一店』」と言っているように百貨店1軒しかなく、学生関係のファッションはほとんどおいていないので、女子学生にとってはファッション品の購入は専門店中心である。このように対照的な都市で生活する大学生が、どのようにファッション店をイメージしているのであろうか。ファッション店のイメージは全般的にあるというより、利用店舗のタイプによって異なると考えられる。一時に比べ下火になったが、DCブランド店の利用者と量販店利用者によってイメージの違いがあるのか。また、1988年において注目されかけていた、海外ブランド利用者とDCブランド店の利用者では店舗イメージが異なるであろうか。注目カテゴリは何か、属性、結果、価値への反応またその下位カテゴリでの反応を都市間および利用店舗タイプ間で比較する。

2.調査

2.1.調査期日

 1988年11月、12月

2.2.調査対象

 謝金を払うことを条件に志願者を募った。高松地区27名(香川大学教育学部・経済学部女子学生)、横浜地区17名(横浜国立大学教育学部女子学生)の合計44名。

2.3.調査手続き

 個別面接による聞き取り調査を行なった。面接は調査者1名と面接補助1名または2名で行なった。面接補助は被調査者が店の名前などの詳細について想起しにくいときなどに補助をする。調査時間はおよそ100分である。
 質問項目は、フェイスとして、クラス、サークル、出身地、現在の住居、その市の中心街にどの程度の頻度でいくか。1ヵ月の洋服代、支払い方法(現金、カードなど)を質問する。ついで、一番よく買う店はどこか(複数回答)(それはなぜか)を聞く。この項目はあとであとの梯子登りで使用する。店関係の他の項目は、着たい服のある店はどこか(何によってそう思ったのか)、自分のファッションの参考にしているものは、好きだけども買わない店はどこか(それはなぜか)、かつては買っていたけれどももう買わない店はどこか(それはなぜか)、入りたくない店はどこか(それはなぜか)、着たくない服を置いている店はどこか、入りたいけど入りにくい店はどこか、である。次に意志決定・購買時の情報探索の方法について、買うときはだれかと一緒か、買いにいくときの巡回方法は、全部回ってから買うか、気に入ったらすぐに買うか、店員の意見は参考にするか、バーゲンセールを利用するか、いくらくらいの服を買うか、買うときに注意すること、服を買って失敗したことについて質問する。
 これらの質問の間に一番よく買う店が最初に聞いた店でよいかどうかをチェックし、かつ被調査者がファッション品の購入について十分考えることができるようにしておいて、梯子登りを行なう。梯子登りは、まず質問の対象とする店を決める。店は本人がよく利用する店としている店のなかから選ぶ。その店を利用する理由をもう一度聞き、挙げた理由の1つからそれがなぜいいのか聞く。でてきた理由を順次それがなぜいいか聞いていき、理由が挙がらなくなったところで打ち切る。最初の理由が結果の場合、それがなぜいいのか聞くと属性レベルを答えた。そのあと結果について梯子登りをする。時間に余裕がある場合には、ほかの理由、ほかの店についても梯子登りをする。それがなぜいいのかでは答えにくい場合は聞き方をかえて何度も答を促した。
 面接調査結果から利用店舗を量販店派、DCブランド派、ポストDCブランド派に分けた。わける目安は、利用店舗の店名とスカート等の単価である。購入単価についてはTシャツの場合7千円から9千円程度、スカートの場合1万円から2万円程度がDCブランド派、それ以下が量販店派、それ以上が輸入ものを中心とするポストDCブランド派である。ポストDCブランド派、DCブランド派、量販店派を利用店舗タイプ高、中、低と呼ぶ。高タイプは少なく、高松4名、横浜2名である。中タイプは高松13名、横浜7名、低タイプは高松10名、横浜8名であった。

3.調査結果

3.1.全体反応数の分析

 梯子登りができたものとできなかったものを含め、総反応数は713である。1人当たり平均反応数は16.2(S.D.=7.0)であった。範囲は5から38反応である。利用店舗タイプおよび都市によって反応数に差がないかを調べるため、反応数を対数変換しこれを従属変数として、店舗タイプ×都市の3×2の2元分散分析をした。結果は、交互作用および主効果の都市が5%水準で有意な差がなく(それぞれf(2,38)=1.6,p=.216;f(1,38)=1.49,p=.229)、主効果の店舗タイプのみ有意な差があった(f(2,38)=6.49,p=.004)。SPSSPCのLSDを用い多重比較をしたところ高タイプ店舗利用群が中低タイプ店舗利用群よりも反応数が有意に多かった。中タイプ店舗を利用しているものと低タイプの店舗を利用しているものには5%水準での有意な差がない。店舗タイプ別の平均反応数は高中低それぞれ23.8(対数変換の平均値を逆対数変換した値=22.9)、16.3(同=15.5)、13.6(同=12.6)である。傾向性は1%水準で有意であり(df=1,f値=12.43,P=.001)、反応数は高、中、低と少なくなっている。

3.2.イメージの内容分析

 梯子登り法で得られた反応を属性、結果、および価値に分けさらに分類した結果が表3にある。

         表3 店舗イメージの内容分析

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 属性
────────────────────────────────────────
[商品]
 (豊富)
  色が豊富・服が豊富・種類が多い・店が集まっている
 (値段)
  値段が手頃・値段が安い・品質と値段がつりあっている・割り引き
  ・メンバーズカードで景品
  安くても高そうに見える・同じ素材でも高く感じる
 (色・形・品質)
  シンプル・カジュアル・はですぎない・落ち着いた感じ・定番・流行ものではない
  色が柔らかい・中間色・きれいな色・特定の色
  女の子らしい・かわいらしい・お嬢さんぽい・大学生にみられる服装・年相応
  ・大人っぽい・エレガント
  特定のサイズがある
  形がよい・体にピッタリしている・角張っている・かっちりしている
  形が変わらない
  仕立てがよい・仕立てががっちりしている
  素材がいい・品質が安心
  扱いが楽・洗濯をしやすい
  いいものが置いてある・置いてあるものに信用ができる
  安っぽくない・それなりの高級感がある
  外国ものがある
  自分の感性にあっている・自分の趣味にあっている・好きなものがそろっている
  ・欲しいものがある
 (ブランド)
  ブランド・名前が知れている・雑誌に紹介されている
  ロゴがかわいい・ロゴが入っている
[店員]
 (親和)
  店員がいい・店員のファッションセンスが優れている・店員の知識が豊富
  店員のアドバイスをしてくれる,アドバイスが客観的・親身、店員が親切・店員と懇意
  ・店員が気さく・店員と話が楽しい・店員が冷たくなく・相談しやすい
  ・客が何をもっているか知っている
 (排斥)
  店員がよってこない・つきまとわない・ひつこくない・売りつける感じがしない
  ・おしつけない・店員に威圧されない
[店の雰囲気]
  通路に商品を出している・試着室が数ヶ所ある・ディスプレイがある・ドアがない
  明るくてきれい・人が適度に入っている・活気がある・こじんまりしている・広い
  ・オープン・落ち着いた感じ・雰囲気がいい・いきつけ
[立地]
  通り道にある・駅から近い・近い・行きやすい・ほかの用がたせる
────────────────────────────────────────
結果
────────────────────────────────────────
[購買過程]
 (探索時間・手間)
  あちこち見て回らなくてよい・その店だけで選べる・捜す手間が省ける
  サーとみることができる
  時間が短くてすむ・時間が節約できる
 (選択過程)
  入りやすい・スーと入ってスーとでれる
  みやすい
  ゆっくりいろいろな服がみられる・落ち着いてみれる
  たくさんの中から選べる
  自分の気に入ったものを捜しやすい
  試着しやすい
  選択に悩まなくていい
  決断が速くなる・決断しやすい
  買わなくてもよい・断りやすい
 (意志決定の評価)
  好きな色・好きな服を選べる・自分の気に入ったものを買える
  納得して買える・妥協しなくてよい
  余計なものを買わなくてすむ
 (選択中の副次的効果)
  疲れない
  洋服の新しい組み合わせ方がわかる
  選んでいて楽しい・入るのが楽しみ
[選択商品の評価]
 (金銭的結果)
  得した気分になる・損な買物でない
  お金が節約できる
 (着た感じ・スタイル)
  着ていて楽・体を動かしやすい
  見た目がよい・バランスがとれた感じになる・細く見える・スマートにみえる
  ・着た目にきれいなライン・すっきり見える・自分にあっている・おしゃれな感じ
  ・いい服を着ているという感じ・誰が着ても以下にならない・きちんとしたかっこう
  ・理想的なファッションに近づく・大学に着ていくのに適当
  ぜいたくをしたような気分・中流階級的・ステータス・きちんと生活している感じ
 (長期的評価)
  あきない・流行遅れにならない・型くずれしない・長もちする・長く着ることができる
  ・お嫁入りのときにもっていける
  後悔することが少ない・選んでくれて失敗がない
  買った品物に満足できる
[他の活動への影響]
 (服関係)
  新しい服を買うとき便利・今もっている服を活用できる
  服が少なくてすむ
  服の数が増える
  他の服を買うことができる・いろんな色のものが買える
 (服以外)
  ファッション以外にお金をまわせる
  別のことができる(1つ)・別のことがいろいろできる
  他人との関係が広がる
  なにをやっても取り組みやすい
[着用時選択行動]
  学生だから安くていいからいっぱいきる
  どこにでも着ていける
  明日着ていく服を考えなくてよい・悩まなくてよい
  組み合わせやすい・他の服とあわせやすい
  着方に幅ができる・変化をつけることができる・着こなしが広がる・おしゃれができる
  ・その日の気分によって服を選べる
  イメージを自分で作れる・組合せを考えるのが楽しい
[着用時心理的効果]
 (コンプレックス)
  コンプレックスをわすれることができる・悩みごとがなくなる・自己嫌悪に陥らない
  ・人前でも恥ずかしくない
 (コントロール)
  感情をコントロールする・気分転換できる
  緊張感をもてる・シャキとする
  リラックスできる・落ち着く
  集中できる・やる気がでる
  気をつかわなくてよい
  ファッションで気持ちが左右される
 (感情)
  楽しい・うれしい・気分がいい・気持ちがいい・満足・安心
 (人に与えるイメージ)
  頭がよく見られる・かわいいなと思われる・きれいに見える
  他人からいいねといわれる・センスがいいと思われる・おしゃれだと思われる
  ・趣味がいいと思われる・ひとからああ着てるなとみられる・年より若くみられる
  まわりからだらしなくみられない・きちんとした感じ
  洋服で目立ちたくない
[自己表現・発見]
  自己表現をしている・自分には本当はこんなとこがあるよ・自分をいろいろ表現できる
  ・自分の感情を表わす・自分をわかってもらえる
  新しい自分を発見・違う自分がわかる・自分が変わったように感じる・人と同じではいや
────────────────────────────────────────
価値
────────────────────────────────────────
[道具的価値]
  知的(いろんな見方をする・考えるようになる・知的でありたい)
  向上心(自分を高める・勤勉な)
  有能な(自分の気分を生かせる・服を生かせる・お金を有意義に使う)
  自信(自分に自信がもてる)
[最終価値]
  自尊心(優越感を感じる・私らしい・自分のイメージにあっている)
  社会的承認(一番いい状態をみせたい・友達によくおもわれたい・認めさせたい)
  所属(みんなと一緒・人から変な目でみられるのはいや・目立たない)
  楽しい生活(生活が充実する・生活に潤いがでる・楽しい)
  快適な人生(かしこい消費者を実践・平凡だけど結婚して普通に暮せる・学生らしい)
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(1)属性
 属性は店舗に直接関係する項目である。属性の中には、従来の店舗イメージで扱われている項目がそろっている。属性の項目は商品、店員、店の雰囲気、立地に分かれる。商品については豊富、値段、色・形・品質、ブランドに分割される。例えば、「色・形・品質」は具体的な色名、中間色、特定のサイズなどの具体的属性レベルから、お嬢さんぽい、安っぽくない、年相応のように抽象的属性レベルのものまで含んでいる。具体的属性とはっきりいえるものは少なく、ある程度抽象化しているものが多いので、具体的属性レベル、抽象的属性の2段階には分けなかった。なお、小島(1977)の6つの小売りミックス(商品、価格、立地、店舗雰囲気、顧客サービス、販売促進)のうち顧客サービスを除いてすべてが属性のなかに含まれる。小島の顧客サービス(飲食店、休憩所・公衆便所、営業時間、配達・配送センター)に関する反応はまったくなかった。
(2)結果
 結果は店舗の属性ではなく、属性から生じたものである。消費者の活動、および消費者のなかで生じた考え中心となる。結果は購買過程に関するもの、選択商品の評価、他の活動への影響、着用時選択行動、着用時の心理的効果、自己表現・発見の6つに大きく分かれる。順序はその場のものから購入後のものへ、また、抽象度の高いものへと並んでいる。
 購買過程は探索時間・手間、選択過程、意志決定の評価、選択中の副次的効果に分かれる。購買過程はいわゆる機能的結果である。選択過程の「入りやすい」、「試着しやすい」などは属性に含めてもよいように考えられる。しかし、これらは消費者の主観性が強く、また属性から生じる反応が多いため、結果に含められた。
 選択商品の評価は金銭的結果、着た感じ・スタイル、長期的評価の3つに分かれる。「着た感じ・スタイル」も属性に含めてもよいような項目があるが、属性の「色・形・品質」に比較して主観性の強いものがここに入っている。長期的評価は長もち、後悔、満足の3つの側面がある。評定尺度を作成するときは、それぞれ分離するべき項目である。
 他の活動への影響はもっとも結果にふさわしいものであり、機能的結果そのものである。内容は衣服関係と衣服以外にわけた。衣服関係は衣服の活用や、さらに衣服を買うことにある。
 着用時選択行動は服を着る時の着る服の選択に関することである。実際にその服を着用したときに生じる心理的効果が着用時心理的効果である。着用時心理的効果はコンプレックス、コントロールすること、感情、人に与えるイメージがある。コンプレックスは具体的にでてきた反応としては少ないが、個々人の反応には自分の顔とか体型とのからみでこのタイプの服、色でないとだめであるという反応がしばしばあった。このような反応は選択商品の評価の着た感じ・スタイル「自分にあったいる」に発展し、心理的効果の「人に与えるイメージ」になる。「コンプレックスを忘れることができる」「悩みごとがなくなる」とはっきりと言及する者は少ないが潜在層は多い。感情はプラスの項目のみを扱っている。人に与えるイメージはプラス側からいっているものとマイナス側から言っているものとある。
 自己表現・発見は価値に含めてもおかしくないものである。例えば、Emmons(1989)は価値と類似概念の志向要求(personal striving)を提案し、その中に自己提示を含めている。しかしRokeach(1973)、Gutman(1984)、Gutman & Alden(1985)の価値のなかに含まれていないこと、人に与えるイメージに近いことから結果のなかに含める。
(3)価値
 価値の項目は反応総数52反応、平均1.2反応と少ない。Rokeach(1973)、Gutman(1984)、Peter & Olson(1987)、Gutman & Alden(1985)を参考にして価値を分類した。全体を大きく道具的価値と最終価値に分ける。道具的価値はお好みの行為のモードまたはパタンを意味し、有能な、知的、向上心、自信が含まれる。最終価値はお好みの最終状態であり、自尊心、社会的承認、所属、楽しい生活、快適な人生が含まれる。Gutman(1984)、Gutman & Alden(1985)およびReynolds & Gutman(1988)の研究において価値に上がっている項目はほとんど最終価値である。道具的価値は結果に含まれるもの場合がある(註5)。

                    表4 店舗イメージ項目の平均反応数

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
店舗        都市高松横浜
イメージ         ・────────────────────────
項目  利用店舗タイプ  高中  低 高 中 低全体
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
属性  8.58.26.18.06.46.87.2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[商品]5.05.54.16.54.44.14.8
  豊富0.30.80.51.01.00.80.7
  値段0.50.60.91.00.61.50.8
  色・形・品質4.33.82.73.52.71.93.1
  ブランド-0.3-1.00.1-0.2
[店員]3.32.01.00.50.70.91.4
  親和3.31.30.60.50.60.31.0
  排斥-0.70.4-0.10.60.4
[店の雰囲気]-0.40.71.00.91.00.6
[立地]0.30.30.3-0.40.80.4
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
結果12.39.25.614.05.07.17.8
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[購買過程]2.02.21.42.01.12.01.8
  探索時間・手間0.50.20.1--0.80.3
  選択過程1.01.20.71.00.71.01.0
  意志決定の評価0.30.20.30.50.30.10.3
  選択中の副次的効果0.30.60.30.50.10.10.3
[選択商品の評価]4.32.21.74.00.61.62.0
  金銭的結果0.30.50.2--0.40.3
  着た感じ・スタイル3.30.90.53.50.40.81.0
  長期的評価0.80.81.00.50.10.50.7
[他の活動への影響]1.01.10.71.00.90.90.9
  服関係0.80.90.40.50.60.40.6
  服以外0.30.20.30.50.30.50.3
[着用時選択行動]1.01.20.81.01.30.81.0
[着用時心理的効果]2.81.90.86.00.91.51.7
  コンプレックス-0.20.10.5--0.1
  コントロール0.50.20.22.00.10.90.4
  感情楽しい1.00.70.22.00.60.10.5
  人に与えるイメージ1.30.80.31.50.10.50.6
[自己表現・発見]1.30.50.2-0.30.40.4
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
価値2.31.11.23.50.90.51.2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[道具的価値]1.00.20.32.00.40.10.4
  知的0.5---0.1-0.1
  向上心0.3-0.11.00.1-0.1
  有能な-0.20.2---0.1
  自信0.30.1-1.00.10.10.1
[最終価値]1.30.80.91.50.40.40.8
  自尊心0.50.20.20.50.1-0.2
  社会的承認-0.30.10.50.1-0.2
  所属-0.20.10.5-0.10.1
  楽しい生活0.80.10.3-0.10.10.2
  快適な人生-0.10.2--0.10.4
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
合計23.018.512.925.512.314.416.2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

3.3.抽象度別反応数の分析

 反応数が都市・利用店舗タイプによって異なるかを対数線形モデル(註10)によって分析した。すべてのモデルを分析し、AIC(赤池情報量基準)(註10)によって最適モデルを推定すると、モデル1[都市、店舗タイプ][利用店舗タイプ、抽象度]、モデル2[都市、利用店舗タイプ][抽象度]の2つのモデルが、AIC=-5.41(df=6)、-5.02(df=10)とよく当てはまる。AICが小さいほどモデルがいいが、その差が1から2以上ある場合にはっきりした差がある場合である。節約の原理を当てはめるとモデル2がよい。モデル2には、抽象度と他の変数との交互作用がなく、抽象度は都市、利用店舗タイプによって比率がかわらない。ただ、モデル1を考慮すると利用店舗タイプにより抽象度が異なり、高タイプ店舗利用群は属性の率が低い傾向がある。
 各抽象度別に反応数を対数変換したものを従属変数として店舗タイプ×都市の2元分散分析する。属性は交互作用、主効果とも5%水準で有意な差がない。結果および価値は主効果の利用店舗タイプのみに有意な差がある(各p=.024,.033)(註11)。多重比較したところ、結果、価値とも高タイプ店舗利用群と中低タイプ店舗利用群との間に差があった。高タイプ店舗利用群は反応率のもっとも少ない属性でも他群と同じ程度であり、結果、価値は他群と有意に反応数が多い。属性レベルはすべて同じ程度反応するが、結果、価値レベルは高タイプ店舗利用群が数多くの反応をしている。抽象度の反応数、反応パタンに関して、高松、横浜の都市間に有意な差はない。

3.4.各項目の分析

 各項目の平均反応数は表4にある。各項目の頻度を対数変換したものを従属変数として交互作用を除いて利用店舗タイプ×都市の2元分散分析をする。個々の項目では平均および分散が0となるセルがあるため交互作用項を誤差に含めたものである。交互作用項を誤差項に含めないで分析しても0のセルが多くないものについては同様の結果を得ている。以下は10%水準の有意な差があった項目を記述している。有意性の確率は()内に示している。多重検定結果は5%で有意な差のあった項目だけを記述している。
(1)利用店舗タイプ間の相違
 利用店舗タイプ間に差がある項目が多くある。高中低各タイプ間に5%水準の有意差があるのは「感情(楽しい)」(p=.002)である。高タイプのほうが買った服を着て楽しい、うれしい気持ちが生じてくる。中タイプ店舗利用群と低タイプ店舗利用群との間に有意な差が生じたのはこの項目だけである。
 高タイプ店舗利用群と中・低タイプ店舗利用群に有意な差が生じたのは「店員への親和」(p=.007)、「選択商品の評価」(p=.081)およびその下位項目の「着た感じ・スタイル」(p=.003)、「着用時心理的効果」(p=.009)およびその下位項目「人に与えるイメージ」(p=.078)と「人に与えるイメージ」、(p=.078)、「道具的価値」(p=.001)およびその下位項目の「知的」(p=.018)「向上心」(p=.003)「自信」(p=.011)である。すべての項目において高タイプ店舗利用群の言及が多い。高タイプ店舗利用群は店員と懇意にし相談をよくし、着た感じやスタイルに気を配り、着用時の心理的効果とくに人に与えるイメージ考慮し、楽しく感じ、道具的価値に自信をもっている。
 高タイプ店舗利用群と中タイプ店舗利用群の間でのみ有意差のある項目は「コントロール」(p=.050)だけである。高タイプ店舗利用群がより多く言及する傾向がある。なお、最終価値の「楽しい生活」は高松のみにしぼるとp=.022の有意差があり、高タイプ店利用群が多くの言及をしている。
 全体的に高タイプ店舗利用者は積極的言及を行なっている。高タイプ店舗利用者は、属性では「店員への親和」のみが多いが、結果および道具的価値では全般的に言及が多い。DCブランド店を中心とする中タイプ店舗利用者と量販店を中心とする低タイプ店舗利用者間に大きな差があることが期待されたが、有意な差があったのは「感情」、つまり、服を着て楽しいかどうかと言う点だけであった。
(2)都市間の相違
 高松と横浜では商業施設の違いなどを反映し、地域差のある項目がある。
 高松と横浜では、高松に「店員」への言及が多く(p=.009)、そのなかでも特に「店員への親和」的言及が多い(p=.012)。「店員への親和」的言及は利用店舗タイプにも差があった(p=.007)。高群と中低群との間に有意差を見いだしている。発言内容を検討すると高松では、特に、高松の高タイプ店舗利用群はストアロイヤルティが高く、店員のアドバイスを真剣に受け止めており、店員からの情報収集を積極的に行なっている。高松の中タイプ店舗利用群の一部もストアロイヤルティが極めて高く、店員と懇意になってファッション以外の話をすることもある。高松および横浜の低タイプ店舗利用群は店員と話をすることをなるべく避けようとしている。横浜ではごく一部を除いて店員と真剣な相談は行なわれていない。店員と話をする場合は店員の一方的話しかけか、他の色があるか、この服は入ってくるのかなどの在庫管理的な質問が中心である。高松の一部の層(特にファッションに関与が高いもの)は店員をファッションリーダーとして位置づけているが、横浜ではほとんどのものがファッションリーダーとして店員をみておらず、まさに店員さんと思っている。
 結果の選択商品の評価のうち「長期的評価」は横浜の学生に比べ高松の学生のほうが言及する傾向がある(p=.055)。高松では「お嫁入りのときに持って行ける」に代表されるものを大事にする価値観が残っている。
 価値については道具的価値の「有能な」が高松で言及されている(p=.095)。高松群が有意義に才能や物を使用できることを望んでいる。

4.討論

 高松、横浜の女子大生のファッション店に対するイメージを明らかにするため、梯子登り法の内容分析から店舗イメージを特徴づけた。GutmanとReynoldsの枠組みに従い、抽象度を属性、結果、価値の3段階にわけ、それぞれをさらに細かく分類した(表3)。高松、横浜の大学所在都市と利用店舗タイプによってその反応が異なることを示した。単純に各店舗の利用者に対応するイメージを類型化すると次のようになる。高タイプ店舗利用群では、服を買ってそれを着ること自体も楽しいが、さらに服を着て楽しい生活ができることが望んでいる。中タイプ店舗利用群では、服を買う喜び、服を組み合わせる喜びに焦点をあわせ、服の着こなしを教える展示や店員の示唆の必要がある。低タイプ店舗利用群ではドアがないとか店に活気がある、店員がよっていかないなどの入りやすさと試着しやすさが重要である。
 都市による差はとくに店員に対する評価の違いが大きい。高松では店員に親和的イメージを持っているものが多い。横浜では店員の在庫管理的能力、高松では店員の接待能力およびファッションセンスがとわれていることになる。
 次に店への入りやすさについて検討する。入りにくい理由として店員を挙げているのは高松・横浜とも共通である。有意な差はなかったが、高松、横浜とも低タイプ店舗利用群は「店員がよってこない」「ついてこない」などが入りやすい理由となっており店員に威圧感を感じている。低タイプ店舗利用群が「店員がよってこない」のほかに、「店員がレジで話している」などを肯定的に語るのも店員の威圧感を避けたいということを表わしている。威圧感を感じる前提として店に入ったら買わないといけない、悪いという意識がある。これは店から出やすいことが関係していることを示す。つまり、でやすいということが実は入りやすいの重要な要素となっている。「スーと入ってスーとでれる」という反応がこの関係をもっともよく表わしている。「絶対に好きな商品がある」からと安心して入ることができるというコメントも「入ると買わないといけない」という強迫観念を表わしている。このように消費者側のもっている考えが店のイメージに大きな影響をもつ。同じ店員がよってきても、店員と懇意になることを望むタイプはよいイメージを持つが、それを拒否するタイプには嫌な店になる。従来一律に店舗像を求める傾向があるが、消費者のタイプ分けが重要である。一律の店舗像では、調査しないでもわかる問題点しか見えてこない可能性が高い。
 店舗イメージとして表3の内容をすべて取り入れるべきなのか、それとももっと厳密に店舗要因とそれ以外の要因を分離するべきなのかという問題がある。ほとんどの属性要因と結果の購買過程要因については店舗イメージを構成していると異論なく認められるであろう。「着用時の心理的効果」になると微妙になってくる。しかし、「着用時の心理的効果」そのものが店舗イメージと考えにくいが、店舗イメージの鍵になっている可能性が高い。この服を着ると楽しくなります、この服をきると人前でも恥ずかしくないですよ、頭がよくみられますよ、センスのよさがあふれますよ、そんな服がおいてありますと宣伝することができる。宣伝のキーワードとして使用できる「着用時の心理的効果」こそがその店の象徴性を表わしている。そして、「着用時の心理的効果」は「品質がよい」では捕まえきれない次元を明確にしている。店舗イメージとして「着用時の心理的効果」のことばのままを想定することは難しいが、この側面をうまく捉えてこそ店舗イメージの象徴性を捕まえることができる。その他の結果、価値に関しても同様に、この店のファッションはあなたに「社会的承認」を与えます、「快適な生活」を与えますというイメージをつくりだすことが大切である。ここで提示した店舗イメージは多様であまりにもいろいろな内容を含みすぎているかもしれないが、そのすべてが店舗イメージに対し重要な示唆を与える内容である。さらに、この結果や価値にある内容こそが、広告および商品開発ではコンセプトとして活用でき、小売店としては商品説明に使用できるものである。
 Peterson & Kerin(1983)は店舗イメージ研究を展望し、心理学的研究が愛顧行動にほとんど関係のない無関連次元に焦点をあてている可能性を指摘している。本研究では、利用店舗タイプや都市にによって言及頻度に違いがあることから内容の一部については愛顧行動と関係することを傍証している。しかし、今後さらに、いろいろな問題を考慮しつつ、店舗イメージのなかで本当に重要な要因は何かということをあきらかにしていかなければならない。


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* 本研究は伊勢丹奨学金の補助を受けて行なった研究の一部である。本稿の一部は日本広告学会第20回全国大会において発表している。

(註1)百貨店イメージ研究例.Myers(1960), Weale(1961), Berry(1969), Pathak,Crissy,& Sweitzer(1974/75), Jain & Etgar(1976/77), Mazursky & Jacoby(1986), 流通政策研究所(1986)

(註2)イメージ内容や方法論を中心とする展望はLindquist(1974/75)、小島(1977)、Peterson, R.A. & Kerin, R.A.(1983)、Engel,Blackwell,& Miniard(1986)、野口(1986a)、佐々木(1988)にある。
(註3)自由回答法を使った代表的な店舗イメージ研究はKunkel & Burry(1968)である。
(註4)meands-endは一般的に手段−目的と訳されている。しかし、文部省「学術用語集心理学編」(丸善)1986では手段−目標という訳語を与えているのでこれに従う。目的と目標では目標のほうが具体的なものを指している。GutmanとReynoldsの方法では機能的結果以外では抽象度を高めていくので目的のほうが適切といえる。endを目標と訳すのは行動主義的な偏りを感じる。
(註5)GutmanとReynoldsの手段−目標連鎖分析を使って主として商品に対する認知構造を研究している。研究例.Gutman(1982,1984),Gutman & Reynolds(1979,1986),Olson & Reynolds(1983),Reynolds & Gutman(1984,1988)。

(註6)内観法の危険性については行動心理学から指摘されている。批判には妥当な点もあるが、内観を無視することによる問題のほうが多い。例えば、多くのアンケート調査法は内観にたよっている。また、認知研究に多くつかわれているプロトコール法も内観を重視した手法である。内観なしには研究できない分野があることに考えなければならない。なお、内観できないことがある、反応に嘘がまじるなどの内観法の限界にも配慮すべきである

(註7)この調査を使用した階層価値構造図については堀(1990)を参照のこと。

(註8)横浜市には伊勢佐木町に有名な商店街がある。しかし、調査の結果横浜国大女子学生はほとんど利用していないことがわかった。横浜駅近辺には横浜そごう、高島屋、ルミネ、ジョイナス、CIAL、モアーズ、VIVRE21、三越および東西に地下街がある。このうち三越の利用はほとんどなかった。横浜においては伊勢佐木町以外の一戸建の専門店の利用はなかった。

(註9)Peter & Olson(1987)は心理社会的結果は道具的価値と区別しにくいと述べている。それにもかかわらず同じパラグラフに、属性と結果、価値との区別はかなりはっきりしているとも述べている。この矛盾を解消するには道具的価値は結果に含めることが考えられる。しかし、Rokeachの価値の概念に従い道具的価値と最終価値を価値の中に含めた。

(註10)対数線形モデル、AICについては松田(1988)、堀(1989)参照のこと。

(註11)以下の記述ではf値の記述を省略し、有意性の確率だけを記述する。

(註12)ここで単純化した特徴づけは有意差がなかったが傾向のあったことを含めて記述している。