因子数決定におけるマイナー因子の影響の検討

堀 啓造(香川大学経済学部)
2003/12/25

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最終更新日: ( 2003/12/25)
処理 | 結果と考察 | 討論 | 引用文献
因子分析においてマイナー因子の影響は重要である。平行分析においてランダム効果については考慮しているが、マイナー因子については考慮していない。マイナー因子の問題を検討したのはTucker et al.(1969)である。MacCallum et al.(2001) はTucker らの相関行列作成法から母相関行列を作成し、その行列を公開している。この行列を利用して因子数決定法の検討をする。

MacCallumらは、3つの側面を操作している。
(1)因子決定性(1因子あたりの項目数。20項目、3因子or 7因子)
(2)共通性の大きさ( high (.6 to .8),low (.2 to .4), wide(.2to .8))
(3)マイナー因子の大きさ(RMSEAの大きさ, 0.065, 0.090, 0.020)
このうち(1)の操作には問題がある。20項目7因子の複数の場合に7因子を再現できなかった。つまり、7因子の場合に一つの因子に1項目しか負荷しないことが複数生じた。3因子の場合はこのようなことがなかったので3因子の母相関行列を分析することにする。

処理

MacCallum et al.(2001)の母相関行列を堀(2002)を使って分析した。

母相関行列をそのまま、300ケースのデータとみなし処理する。このことによる問題はいくつかあるが、今回は無視する。

表1.母相関行列の分析結果

RMSEA0.0650.0900.025
共通性
20_3h06520_3l06520_3w06520_3h09020_3l09020_3w09020_3h02520_3l02520_3w025不正解数
MAP-TEST3333333231
RAW-EIGEN3533743333
PA-EIG-M3333332331
PA-EIG953333332331
SMC-EIGEN109910995779
PA-SMC-M3433853333
PA-SMC-953433753333
SE-SCREE3443753334
SAS-UL-PR3333443233
SAS-ML-PR3333433232
CHI^24449873237
AIC4458873336
BIC3333333330
CAIC3333333231
RMSEA3338653234
GFI3335443234
AGFI3338773234
PGFI3133133233
RGFI3233333232
RMSR3333332232
NFI3433642334
NNFI3435863235
CFI3333753233
正答数201219167918922

表2.不正解数の分析

不正解数
0BIC
1MAP, PA-EIEGEN-M, PA-EIGEN-95, CAIC
2SAS-ML-PR, RGFI, RMSR
3RAW-EIGEN, PA-SMC-M, PA-SMC-95, SAS-UL-PR, PGFI, CFI
4SE-SCREE, RMSEA, GFI, AGFI, NFI
5NNFI
6AIC
7CHI^2
9SMC-EIGNEN

結果と考察

因子数決定の指標からの因子数は表1にある。不正解数の表が表2にある。

表1の正答数からみると、マイナー因子が大きい、RMSEA=0.090 のときの推定がわるい。また、共通性が低いときに推定がうまくいかない。全体としては共通性がHIGH のときの推定がもっともよい。ところが、RMSEA=0.020 のときはWIDE のときのほうが少しよい。本格的に分析するにはもっと多くの母相関行列を使用しないといけないが、このデータからすると、RMSEA と共通性に交互作用がある。

因子数決定の指標については、このデータの場合、BIC がもっともよい。不正解数の3まではある程度使える可能性があるといえよう。5以上の不正解数のNNFI、AIC、CHI^2、SMC-EIGNEN は指標としては使えないものと言えない。特にSMC-EIGNENはすべて大きく判定するので、指標としてははっきりと不適である。CHI^2はマイナー因子が大きくないRMSEA=0.20の共通性がHIGH と WIDEのみが正しく推定している。マイナー因子が大きいとき、さらに共通性高いものがあるときのみに正しく予測できる。探索的因子分析において使用できない指標であることがわかる。AICがここまで悪いのは意外である。サンプルサイズが300であり、AIC、BIC両者に優位なようにしている。NNFI はTLI(Tucker-Lewis-Index)であるが、マイナー因子に弱いようである。

SE-SCREE, RMSEA, GFI, AGFI, NFI は不正解数4である。まったくダメというものではないが、使わない方がよい。RMSEA は今回コントロールしているものであるが、RMSEA=0.090 の場合はまったくよくない。RMSEA=0.020 の場合でも、共通性が低いときに少ない因子数となっている点が注目される。その他の指標は堀(2003a)においてもいい指標とは言えないのでダメと判断してよい。

不正解数3のRAW-EIGEN, PA-SMC-M, PA-SMC-95, SAS-UL-PR, PGFI, CFI はあまりよくない。RAW-EIGENは一貫して多目に外れている。PA-SMC-M, PA-SMC-95は一貫して多目のほうに外れる。マイナー因子が大きいとき、共通性が小さいときに多目になっていてマイナー因子の影響を受けやすい。SAS-UL-PRCFIは予測因子数が正解と上下し、安定しない指標であることがわかる。PGFIは共通性が低いときに外れている。

不正解数2のSAS-ML-PR, RGFI, RMSRは比較的良好といえる。SAS-ML-PRは予測因子数が正解と上下し、安定しない指標であることがわかる。RGFIは共通性が低いときに少な目に外れているRMSRはRMSEA=0.020のときに少な目に外れている。

MAP, PA-EIEGEN-M, PA-EIGEN-95, CAIC は不正解数1と良好な予測をしている。PA-EIEGEN-M, PA-EIGEN-95が良好な推測をしているのは、今回のデータの一般因子の程度が低いためである。

討論

堀(2001)において提案したMAPとPA-SMC-95の予測因子数で挟み込むという方法はここでも有効であることが示された。

MAPの予測は多くの場合に正しい。安定した推定をする(堀, 2003a)。また、推定が違う場合は過小因子数となる。このことから唯一の指標として参考にするなら、今のところMAPである。しかし、過小推定することを考慮するとMAPのみに因子数推定を依存することはよくない。

PA-SMC-95はマイナー因子の影響を受けやすいことが立証された。マイナー因子の影響を受けて因子数を多目に推測することがある。しかし、データの多少のゆれに関わらず安定した推定をする(堀, 2003a)。さらに、過小推定をすることはなく、推定数が間違う場合は、常に多目の推定である(堀, 2003a, b および本論文)。MAPが正しくない場合、PA-SMC-95が正しく推定していることが多くあり(堀, 2001, 2003b,本稿)その意味でも参考にすべき因子推定法である。

このことから、MAPとPA-SMC-95の推定因子数の間に真の因子数があるとすることができる。

引用文献

堀 啓造(2001). parallel analysis (因子分析の因子決定法). http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/yomimono/pa.html
堀 啓造(2002). excel vba program for faccon.exe コバンザメアプリ http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/delphistat/hattori.html
堀 啓造(2003a). 因子数決定法の検討−Holzinger and Swineford(1939)の知能データをもとにして. http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/yomimono/pa2.html
堀 啓造(2003b). 因子分析練習帳1 Gorsuch(1983)変数サンプリング. http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/yomimono/fanote1.html

MacCallum, R. C., Widaman, K. F., Preacher, K. J., & Hong, S. (2001). Sample size in factor analysis: The role of model error. Multivariate Behavioral Research, 36 (4), 611-637. http://www.unc.edu/%7Ercm/mwph/popmats.htm

Tucker, L. R, Koopman, R. F., & Linn, R. L. (1969). Evaluation of factor analytic research procedures by means of simulated correlation matrices. Psychometrika, 34, 421-459.

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