消費者研究法(第27回)


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復習問題:主成分分析はどのような目的に使用しますか?

第9章 多変量解析

2 主成分分析と因子分析

1.1 因子分析とは

 因子分析(factor analysis)は潜在的因子があると仮定する。特定の変数は共通因子(潜在因子)と独自因子(潜在因子)の(重みづけした)和として表すことができると考える。

zij=aj1fi1+aj2fi2+....+ajmfim+djuij

たとえば、中学校の主要5教科(国語、社会、英語、理科、数学)の成績は理科系能力と文科系能力と各科目の独自の能力の合計になっているという考え方である。上の式のajmの部分が重みで、下の式の数字で表されている部分である。この重み係数を因子負荷量と呼ぶ。

国語=0.9*文科系能力因子+0.1*理科系能力因子+0.42*国語独自因子
社会=0.8*文科系能力因子+0.1*理科系能力因子+0.59*社会独自因子
英語=0.7*文科系能力因子+0.6*理科系能力因子+0.39*英語独自因子
理科=0.3*文科系能力因子+0.7*理科系能力因子+0.64*理科独自因子
数学=0.1*文科系能力因子+0.8*理科系能力因子+0.59*数学独自因子

各変数(国語なら国語)での重みの2乗和を1となるようにする。
共通因子部分の因子負荷量(重み)の2乗和を共通性(h2)という。

因子分析は性格をあらわすことばはたくさん(数百)あるが、その代表因子を見つける(5大因子)というように、潜在構造を見つけることに使われる。また、主要次元数を確定するということも重要な側面である。


因子分析には探索的因子分析(Exploratory factor analysis)と検証的因子分析(confirmatory factor analysis)(確認的因子分析、確証的因子分析、仮説検証的因子分析などともいわれる)がある。探索的因子分析はより一般的には正準相関分析法(canonical correlation analysis)、検証的因子分析法は構造方程式モデル(SEM.共分散構造分析)に包摂される。

1.2 因子分析の基礎概念

(1)因子負荷
直交モデル・・・共通因子間に相関がない
斜交モデル・・・共通因子間に相関がある

(2)共通性
昔は共通性の推定は重要な問題であったが、最小自乗法(残差最小法,minres)、最尤法が簡単にできるようになったため、問題はなくなった。主因子法も反復主因子法が収束すれば最小自乗法と同じになることが知られている。

共通性は診断のためには重要である。

(3)因子の抽出
相関行列から因子を抽出する。

(4)因子軸の回転
単純構造を求めるために因子軸を回転する。このとき単純解とは直交であるとする考え方と斜交解であってもなるべく大きく負荷する因子と小さく負荷する因子の極端になることを追求する仕方がある。

バリマックス回転→プロマックス回転というように、中間に直交解をいれた斜交解を求めるほうがいい。

《参考・引用文献》

井上文夫ほか 1995 よりよい社会調査をめざして 創元社(テキストといっている書)
芝祐順 1979 因子分析法 第2版 東京大学出版会(実際は第2版2刷,1981)
田中豊・垂水共之 1995 Windows版統計解析ハンドブック多変量解析 共立出版
柳井晴夫・繁桝算男・前川眞一・市川雅教 1990 因子分析−その理論と方法− 朝倉書店
柳井晴夫 1994 多変量データ解析法 −理論と応用 朝倉書店
柳井晴夫・高木廣文 1986 多変量解析ハンドブック 現代数学社
Cattell,R.B.(1988) The meaning and strategic use of factor analysis. in Nesselroade,J.R., and Cattell,R.B.(eds.) Handbook of multivariate experimental psychology. 2nd ed. Plenum.
Gorsuch,R.L.(1988) Exploratory factor analysis. in Nesselroade,J.R., and Cattell,R.B.(eds.) Handbook of multivariate experimental psychology. 2nd ed. Plenum.
Hair.J.F.Jr., Anderson,R.E.,Tatham.R.L., and Black,W.C. (1998) Multivariate data analysis. 5th ed. Prentice Hall.
Kline,P. (1994) An easy guide to factor analysis. Routledge.
Nesselroade,J.R., and Cattell,R.B.(eds.) (1988) Handbook of multivariate experimental psychology. 2nd ed. Plenum.
Sharma,S(1996)Applied multivariate techniques. Wiley
Stevens,J.(1996)Applied multivariate statistics for the social
sciences. 3rd ed. LEA.
Tabachnick,B.G. and Fidell,L.S (1996) Using multivariate statistics. 3rd ed. Harper Collins


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