消費者研究法(第12回)


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第5章 調査票の作成

1 調査票の特質

1.1 調査票とは何か

質問調査法、調査票(スケジュール)
質問紙:調査対象自らが質問を読み、回答する調査票

1.2 調査票作成の手順

(1)調査テーマや調査問題を明確にする

(2)解明したい問題に関する仮説を立てる
  目的変数・説明変数、従属変数・独立変数など

(3)質問項目を決める

(4)質問項目を細分して、小さな質問項目を作る
   そのなかにフェイス項目(性別、年齢、職業などの調査対象者の基本属性)が含まれる

(5)各質問項目に関して質問を作ってみる
   測定尺度を考慮する

(6)予備調査(プリテスト)を行い、質問が意図されたとおりに理解され、回答されているかどうか見きわめる
   質問の仕方、選択肢の作り方

(7)予備調査(プリテスト)の結果を検討し、最終的な訂正や修正を行う

2 調査票の作成の仕方

ワーディング(wording) 文章や言い回し

質問作成において考慮すること
(1)解明したい問題に関連した質問や仮説に基づいた質問を選ぶ

(2)人によって違って解釈されやすい用語は明確にその意味を規定しておく

(3)あいまいな表現の質問をしない
  「収入の額はいくらですか」→税込み?手取り?月収?年収?

(4)短く簡潔な質問にする   複文にならないようにする。否定はさける。受身にしない。など

(5)調査対象者の多くがよく知らないことを聞かないようにする
  →知っている人だけに枝質問(サブ・クエスチョン)にする。

(6)事実に関する質問と、評価に関する質問とを明確に区別しておく

(7)2つ以上の事柄や論点を1つにまとめて質問しない

(8)回答をある一定の方向に偏らせるような問い方やことがを用いていないかどうか注意する
  「…についてあなたは賛成ですか」「…についてあなたは賛成ですか、それとも反対ですか」

(9)人々の一般的な態度や考え方を知ろうとする質問なのか、本人の実際の行動そのものを聞く質問なのかを区別する

(10)タテマエ的な回答をされないように問い方を工夫する

(11)質問の順番は回答に影響を及ぼすので、よく考えて順番を決める
  フェイスを最初にきくのか、最後に聞くのか?
  答えやすい質問を最初に

(12)回答の様式に、自由回答法と選択肢法の2つがあるので、個々の質問についてどちらが適切か検討する

3 回答の様式


調査法例:アンケート100人に聞きましたアンケートに答える
いろんな質問の仕方があること、未熟なレベルがあるので大いに参考になる。

3.1 自由回答法(open-ended question, open answer, free-answer)

プリテストや探索型

3.2 選択肢法

調査例:ネットワーク社会の消費行動に関するアンケート

(1)2項選択回答形式(二者択一式)
(2)3つ以上のなかから択一式
(3)3つ以上の選択肢から2つ以上選んでもらう(複数回答)択多式
(4)順位をつけてもらうもの
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(5)ある事柄について賛否や程度の違いを質問するもの
  SD法、リッカート尺度

4 フェイスシート

学歴や職業の聞き方はあとの処理なども考えて聞く。
学歴では旧課程のものや各種学校などにも注意をする。
職業はパートタイムなどに注意する。

5 具体的調査項目については

安田三郎・原純輔 1982 社会調査ハンドブック第3版 有斐閣
が特にくわしいので参考になる。ほかに
飽戸弘 1987 社会調査ハンドブック 日本経済新聞社
にも調査項目が多く収録されている。


第6章 測定尺度

1 尺度とは

調査:調査対象の諸特性に関する情報(データ)を集めること。(井上ほか,1995)
測定:事物や事象などの観測対象に、定められた操作に基づいて数値を割り当てること。
測定値:測定によって割り当てられた数値。
尺度:測定によって数値を割り当てる規則。
(豊田,1998から)

尺度は対象を測るものさしであり、はかりであるといっていい。ただし、物理量とは違っていろいろ問題のあるものを問題のある道具で測る。このあたり、ことばで測る 参照

1.1 尺度のいろいろ

スチーブンス(Stevens,S.S.,1951)の4つの水準
名義(名目)尺度、順序(序数)尺度、間隔(距離)尺度、比率(比、比例)尺度

この区別は重要である。

前2つは質的尺度(計数尺度)、後ろ2つは量的尺度(計量尺度)という(混乱がおこるかもしれないが、前者タイプのデータを定性的データ、後者タイプのデータを定量的データという場合もある)。
(1)名義尺度(nominal scale)
 対象の区別(多くの場合カテゴリー化)するために数値を割り当てる。性別で男性には1、女性には2を与える。数値の与え方は任意である。つまり数値は単なる名称にすぎない。実際の番号付けは連続する数値になるように割り当てることが多い。網羅性と相互排他性を満たさなければならない。例。郵便番号、商品番号、背番号など

(2)順序尺度(ordinal scale)
 対象の量の大小や強弱の順序関係を区別する。他より大きい、小さいなどの順序のみが意味がある。数値の与え方は、1,2でも20、50でも順序性を保てばなんでもいい。例。クラス順位、星の明るさの等級、製品の等級、評定値、時代、学歴、好きな順にならべたもの、買いたい順位をつけたもの

(3)間隔尺度(interval or distance scale)
 2つの対象に付与された数値の差が比率尺度になっている尺度。絶対0点を定義できない。加減算ができる。例。摂氏、華氏の温度、標準テストの点数、西暦年号

(4)比率尺度(ratio scale)
 特性がない状態の絶対0点が存在する。一方が他方の何倍ということに意味がある。例。重さ、長さ、絶対温度、時間、個数。

それぞれの尺度にはどのような性質があり、、どのような演算、変換ができるかを知ることが大切。グラフ作成や統計処理に関係する。

《参考・引用文献》

井上文夫ほか 1995 よりよい社会調査をめざして 創元社(テキストといっている書)
豊田秀樹 1998 調査法講義 朝倉書店

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