消費者研究法(第7回)


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復習問題:団塊世代と団塊ジュニアの生まれた年はいつか。なぜ団塊世代、団塊ジュニアが重要なのか?

第1章 社会調査とは何か

1 社会調査を考える。

データを収集する。ゴミを入れれば、ゴミがでてくる。
「科学的」
広い意味:正確、精密、客観的、実証的
狭い意味:概念間や変数間の「関係の強さ」を実証的・客観的に測定すること。

ミラー,B.C. (野々山久也ほか訳)『やさしい家族調査法』ミネルヴァ書房 1991
の引用と一部改変)

(1)概念 concept
 科学的思考におけるもっとも基礎的な要素の一つは概念である。概念とは、特定の物事、あるいは出来事についての精神的な抽象である。そして、それは言葉あるいはラベルと、その意味あるいは定義との両方から成り立っている。例えば、私たちは《結婚》という用語を、結婚しているか、あるいは結婚していないかに関係なしに、ほとんどの成人たちによって理解されている概念について言及されているものと解釈して用いている。
 結婚は、一般的には、永続するものという期待のもとに確立された、そして社会的ならびに法的に認められた、異性関係であると理解されている。文化的文脈によっては、結婚という概念は、また生殖とか、家父長制とか、あるいは平等主義などについての期待を含んでいるかもしれない。
 調査者たちが研究に含まれている概念についてはっきり理解していることは、決定的に重要である。結婚のように幅広い概念は、調査目的のためにはもっと特殊な概念に解きほぐす必要がある。「結婚」についての研究は、たとえば、もっと正確には、配偶者選択、結婚満足、夫婦適応、結婚安定性、夫婦葛藤、夫婦勢力、夫婦コミュニケーション、そして夫婦暴力についてである。
 「概念の明確さや精密さは、調査においては、決定的に重要である」
マーケティング調査においても、概念を明確にすることがまず求められる。

(2)変数 variable
 変数とは、簡単にいえば、変化する概念のことである。つまり、それは1つ、ないしそれ以上の値をとったり、あるいは有することができたりする概念である。婚姻状態という概念は、2つ以上の値を有している概念である。私たちは、この変数を2つの値(既婚と未婚)にしか用いないようにすることもできるが、しかし通常では、それは私たちの調査における変数のうちで論理的に可能性のある変数(独身、非婚、一時婚、法的離別ないし離婚、未亡人、遺棄、再婚など)のすべてを含ませて、もっと多くのことを意味しているものである。
 変数がどのように変化するかということを理解することは、とくに重要である。変化のもっとも単純なかたちは、《存在か、あるいは不在か》 ということである。妊娠は、どちらか一方という変数の例である。すなわち、研究されている女性は妊娠しているか、あるいは妊娠していないかどちらか一方なのである。(1−0変数

 変数が変化するもう一つの重要な仕方は、カテゴリカルと呼ばれている変化の仕方である。生物学的な性(性別)は、おそらく人間や人間関係についての研究においてもっとも幅広く用いられているカテゴリカルな変数である。つまり、それは2つの互いに異なったカテゴリー、男性と女性を有しているのである。婚姻状態は、2つ以上のカテゴリーを有している変数であるが、しかし、カテゴリカルな変数のうち、またもう1つ別の例である。(2値型変数多値型変数

 変数についての第3のタイプは、連続型と呼ばれている。つまり、変数のうちあるものは、連続している値の範域にそって変化する。いいかえれば、それらは種類というよりは、もしろ量によって変化する。妊娠という概念は、その存在か、あるいは不在かについて注目することによってサンプルとしての女性たちについて変数として評価されるものである。しかしながら、他方において、妊娠している人々の間で異なる妊娠期間は、重要な連続的変数である。妊娠期間は、2、3時間、2、3日、あるいは2、3週間から9カ月あるいはそれ以上までの範域をとることのできる連続的変数である。(ここでは単位への考慮もいれてカテゴリー化しているので量として変化するものとして捉えておく。来街者調査などで何時間滞在というのもこういう問題を含んでいる)

 年齢や時間と関係しなければならない変数以外にも、多くの種類の連続的変数(continuous variable)がある。頻度は、連続的変数(笑み、接触、おしゃべりなどの回数)を表すものである。多くの行動の質も、また連続的変数を表している。たとえば、コミュニケーションの質は、ひじょうに貧弱からひじょうに良好までの範域にわたるといってよい。このような行動は、必ずしも連続的に生じるとは限らないが、しかしこれらの変数は、研究されている人々のサンプルにおいては、低いところから高いところまでの連続体にそって分布しているのである。(この変数の問題と尺度の問題を混同してはいけない)


(3)関係
 ほとんどの結婚および家族調査は、個々の変数(結婚年齢のような)にはそれほど多くの関心をいだいていない。がしかし、それら(結婚年齢と結婚安定性)のあいだの関係については、多くの関心をいだいている。調査者たちは、通常は、変数がどのように同時変化するかとか、あるいはたがいにどのように変化するかといったことを研究している。
 関係を評価する場合、ふつう独立変数(independent variable)と従属変数(dependent variable)とのあいだの区別がなされる。従属変数とは、独立変数に従属しているもの(あるいは影響されるもの)として概念化されている。この用語は、すべての科学者たちに共通して幅広く用いられているものである。前述の例では、結婚安定性が従属変数ということになるだろう。というのは、結婚安定性は、部分的には人々が結婚した年齢(独立変数)に従属しているか、あるいは影響されていると考えられるからである。




 ときに、いま研究されつつある関係に内在している諸変数について、それらが一つの方向にしか概念化することができないことがある。例えば、結婚年齢は、結婚安定性に影響を及ぼすことはできるが、しかし、結婚安定性は、論理的に人々が結婚する連例に影響を及ぼすことはできない。つまり、結婚安定性は、人々が結婚する年齢よりもあとに生じるか、あとを追いつづけるか、あるいは部分的に従属しているのである。ときに人々は、このような関係を因果的であると判断することになる。
 ある変数がもう一つの変数の原因である(たとえば、変数Xは変数Yの原因である)ことを示すためには、ふつう次のような3つの基準が絶対に不可欠であると考えられている。
 (a)変数間の同時変化(Xが変化するとき、Yも変化する)
(b)変数Yにたいする変数Xの時間的優先性(Xは、つねにYよりも前に起きる)
(c)他の説明の排除(Yに関してのその他の可能性のある原因を退けること)
 結婚および家族調査において見い出される多くの関係は、3つの基準のすべてを満たしてはいないし、また、はっきりした因果的な陳述であると見なすこともできない。 たとえば、ある研究は、結婚の満足が、一部には、夫と妻がともにする同伴活動の頻度やあるいは結婚におけるコミュニケーションの質に依存していると提案してきている。しかしながら、それと同時に、結婚における満足は、配偶者間のコミュニケーションや、かれらがたがいにともにする活動の量に影響を及ぼすこともありうるのである。(因果関係を検証するのは難しい。通常はできないと考えたほうがいい。通常は影響していると考える)

-------------------------------------- 有斐閣 社会心理学小辞典 1994
【従属変数】 dependent variable
 ある変数Xの変化の結果として、別の変数Yに一定の変化が生ずるとき、変数Yを従属変数という。場合によっては、基準変数とも呼ばれる。
【独立変数】 independent variable
 ある変数Xの変化が、別の変数Yの変化の原因や理由に相当するとき、変数Xを独立変数という。独立変数は、しばしば説明変数とも呼ばれ、主として実験操作が可能な社会的刺激で構成されているが、性・年齢などの個人的特性も含まれる。
[参考]【調節変数】 moderator variable 
2つ以上の変数の間の関係に、経験的もしくは理論的に影響を及ぼしている変数。たとえば、実験的に操作された特定の独立変数Xと観測された変数Yとの関係が、第3の変数Zの値に影響されるとき、変数Zを調節変数と呼ぶ。[酒井春樹]
--------------------------------------

「関係の強さ」
(a)「予測」 「赤い箱の洗濯洗剤は青い箱の洗濯洗剤よりよく売れる」
(b)「因果関係」 「頭がいいから成績がいい」「成績がいいから頭がいい」??
  パス解析→共分散構造モデル(分析)(SEM)
p11の考察は変。

「何度も調査をする」ループを重ねる。「恒常性」「変化」


2 社会調査を行うにあたって

仮説検証法 =知りたい情報を当てるための調査
 社会学・心理学などで、よくある。
(1)理論から派生してくる命題を選択する。
理論上・概念上構成された命題。検証を目指される検証課題。
○「社会的地位が高いほど、疎外度は低い」
(2)命題を構成する概念(変数)の概念的定義をする。
(3)概念(変数)を操作的に定義して、抽象度の高い一般命題を経験的具体性の高い特殊命題群に翻訳する。(直接検証できるもの)
具体的測定項目を確認する。
調査仮説
○「社会的地位尺度」での個人得点が高く(低く)なるほど、「疎外尺度」での彼の得点は低くなる。
=>仮説検証
テキストでは「予測したい」「赤い箱の洗濯洗剤のほうが青い箱の洗濯洗剤より売れる」
「数量化2類」 レンジ、偏相関係数、カテゴリーウェイト

帰納的アプローチ =>探索的データ解析
(1) 関心を抱く問題にかんし、明示的あるいは定式化された仮説なしにフィールド・ワークに入り、体系的・組織的データを収集する。(定性的方法)
(2)データを分析し、そこに体系的な変異のパターンの存在を検討する。
(3)発見された体系的な変異のパターンを仮説として、それの試行的検証を行うため、さまざまな時間的・空間的条件のもとで、反復的調査を累積する。
(4)体系的な変異のパターンが、収集されたデータに繰り返し共通して見い出されるとき、それらを要約する経験的一般化を構成する。

テキスト
情報をくみ出すための調査事例:因子分析:因子、因子負荷量、


3 社会調査にはどのような種類があるか

全数調査=悉皆調査(しっかい) 国勢調査。母集団をすべて調査する


第2章 社会調査の計画

1 調査の過程

(1)問題意識の形成
(2)問題状況の明確化
(3)調査問題の決定
<概念>
<理論>
 概念、変数、そして関係が、科学的思考にとってもっとも基礎的な要素であるのにたいして、理論は、これらの要素のすべてを含むものである。理論とは、個別的現象が有している一般的なパターンや規則性についての特徴を記述することによって、研究領域における説明ないし予測のための原理を要約しているものである。
 理論とは、「現象を説明したり予測したりするという目的のもとに、変数間の関係を特定化することによって、その現象についての体系的な見方を提示するような、相互に関係し合っている構成概念、定義ならびに命題の組み合わせ」と定義することができる。
 もっと簡単に述べれば、理論とは、関係にかんしての特定の組み合わせについて、私たちが知っていることを要約している一般的な原理である。理論的な原理を発展させたり要約したりする努力がなされている。
(ミラー,B.C. (野々山久也ほか訳)『やさしい家族調査法』ミネルヴァ書房 1991
の引用と一部改変)
-------------------------------------- 三省堂 大辞林 電子ブック版
めい-だい【命題】
(2)〔論〕〔proposition〕判断を言語的に表現したもの。通例判断と同義に用いられる。古典論理では命題は「SはPである」の形式をなすとされ、「S」を主語、「P」を述語、「…は…である」を繋辞(ケイジ)という。
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(4)仮説の構成
仮説:概念間や変数間の関係として述べられ、定式化されたもので、照明を必要とする仮の説明である。
「黄色の箱の洗濯洗剤は他の色の箱の洗濯洗剤に比べ売れない」
「黄色の箱の洗濯洗剤は他の色の箱の洗濯洗剤に比べ消費者に好まれない」

一般仮説→特殊仮説=作業仮説
法則=一般命題

(5)調査の範囲や調査対象の決定
(6)調査法の選択
(7)調査票の作成
(8)準備の作業
(9)予備調査(プリテスト)の実施
(10)調査の実施
(11)調査票の回収および点検
(12)調査結果の整理と分析
(13)報告書の作成と今後の課題の検討

調査マネジメント・ガイドライン(社団法人 日本マーケティング・リサーチ協会)


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