海保認知心理学キーワード

海保先生の講義受講生による 
認知心理学キーワード

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「タ 」 「チ」 「ツ」 「テ」 「ト」   「リ」 「ワ」

このキーワード集は海保先生の許可をいただいて堀のサイトに掲載するものです。目次をつけるなど少し改変をしていますが、文章はさわっていません。
2006年3月2日 堀 啓造 

最終更新日: counter: (2006/3/2からの累積)

認知心理学  中高生 海保

05/5/18海保博之

「中高生のための認知心理学基本用語」

これは、2005年度、海保担当の認知心理学受講生の課題として作成しているものです。
● 用語は、認知心理学重要用語ベスト100に限定しました。
● 学生を1つの用語に2人か3人を割り当て、各自が500字前後で、中高生に解説することを想定して書いたものです。
● 「中高生相手」とすることで、自分なりの理解が必要になること、わかりやすく説明するとはどういうことかを体験させる意図があります。
● 作成には、大学院生・生駒君の助力を得ています。

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「ア」

アイコニック・メモリー(iconic memory>

友達と話をしている時に、全く意味のわからない単語が出てきたらどうしますか?大抵の場合、その単語を鸚鵡返しにして意味を尋ねると思います。考えてみると不思議な事で、どうして意味も分からない単語を喋る事が出来るのでしょう。

私たちは、ほんの短い間であれば、色や音などの外部からの刺激を、意味も何も関係なくそのままの形で自分の中に留めておく事ができるのです。これを認知心理学では「感覚記憶」と呼んでいます。アイコニック・メモリーは、視覚情報の感覚記憶です。

スパーリング(1960)が行った実験の中で、いくつかの意味の無い文字列をごく短時間被験者に見せてその直後に復唱させたところ、一部の文字だけ復唱させる方が、全部の文字を復唱させるよりも正解率が高い事が分かりました。これは、全部の文字を復唱する場合、復唱している間にどんどん文字を忘れていってしまう事を示しています。更に、文字を見せてから復唱させるまでの間の時間が0.5秒を超えると両者の正解率に差が無くなる事が分かり、この事からアイコニック・メモリーは1秒以内に消えてしまうものである事が明らかになりました。(HA)

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アイコニックメモリーとは、感覚記憶(知覚された情報が短期記憶として次の処理を行うため選択されるまでの間、一時的にその情報を保存しておくこと。視覚、聴覚、触覚、嗅覚など、各感覚ごとに保存様式は異なっている。)のうちの、視覚情報(目から入ってくる情報)に関するもののことであり、容量は大きいのだが保存される時間が短く、約500ミリ秒しか保存できないといわれている。また、聴覚的な情報(耳から入ってくる情報)はエコイックメモリー(聴覚的感覚記憶)といい、処理容量は小さいのだが、保存時間がアイコニックメモリーより長く、約4秒から5秒の保存が可能であるとされている。これらの保存された情報がアイコンと呼ばれている。しかしこのように一瞬で消えてしまう情報でも私たちは、興味を引くものには眼を向けるし、その結果、注意をむけられた一握りの情報だけが短期記憶として保存される。

これはナイサー(Neisser,U)による用語で、スパーリングは視覚的情報貯蔵(visual information storage)と呼んだ。(SS)

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記憶には大きくみて短期記憶と長期記憶があります。短期記憶をつかさどるのは、アイコニックメモリと作動記憶という2つのメモリです。見たり聞いたりしたものは、そのままの生の記憶として、アイコニックメモリにはいります。しかし、ここに入った記憶は、数百ミリ秒という、一桁以下の短い時間しか貯蔵できません。これは次々に新しい事象が目・耳・鼻・口・皮膚といった五感を通じて入ってくるので、長く貯蔵する必要のないものが多く、記憶内容はすぐ次々に揮発することが必要だからです。なので、アイコニックメモリはとてもこわれやすいものであるということができます。ここが強い人は、一瞬見たものの細部を言い当てられます。この、アイコニックメモリという考え方は、スパーリングという人が、実験をして、1960年に打ち出したものです。スパーリングの実験では、観察者へ、短い時間に、3〜16字で構成されている英数字が、提示されます。そして観察者はその後、提示された、目に見える表示の中の、文字の部分集合(3つか4つの連続した文字)を特定する報告を行います。この実験によって、スパーリングは、短い間隔の追提示において、提示された文字の全体から、何の関連もなく無作為に思い出すよりも、このように部分集合的に思い出す方法の方が、観察者はものごとをよく覚えているのだということを明らかにしました。この記憶が、アイコニックメモリです。(YM)

  

「イ」

意識(consciousness>

精神分析学では、人間の心を意識・前意識・無意識の3つに分ける。自分で現在認識している内容を意識という。つまり、私達が直接的に心の現象として経験していること、これは私の経験だと感じることのできることを総体的に意識という。意識は短期記憶・作動記憶と関係があると思われる。自分で現在認識していないが、努力すれば思い出すことができる内容を前意識という。前意識は長期記憶と関係があると思われる。自分で現在認識しておらず、努力しても思い出せない内容を無意識という。精神分析学では通常の方法では思い出せない無意識下にあるものを、自由連想法などを用いて意識に持ってゆくことで無意識を理解しようとした。行動主義が「意識なき心理学」と呼ばれるのに対して、認知心理学はその反動として、人間の意識や心を研究の対象とすべきであると主張する。行動主義においては意識は主観的なもので、外から観察できないので、心理学の研究対象から除外されている。(YW)

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意識の辞書的な意味は自分が何をしているか、どういう状況におかれているか、自分ではっきりとわかる状況、とのことです。たとえば、昼飯にカレーを食べている時に、「自分はカレーを食べている」とわかることが意識があるということです。その昔、心理学者のフロイトは意識を意識・前意識・無意識の三つに分けました。意識は簡単に思い出せることで、前意識はなかなか思い出せないが時間が経つと思い出せることで、無意識は自分では思い出せないこと、としました。そしてフロイトは無意識こそが記憶のほとんど占める「氷山の一角」として研究を進めていった。(OK)

  

維持リハーサル(maintenance rehearsal>

 まず、リハーサルとは情報に注意をむけて何度も繰り返す(反復する)ことです。そうすることによって情報を短期記憶(記憶できる時間が短く、記憶できる量もかなり限られている)の中に保つことができます。また、情報を長期記憶(記憶できる時間が長い)に移すこともできます。例えば、こんなことはないでしょうか?英単語を何度も見て、その意味を覚えるとします。しかし、友達に急にその単語の意味を聞かれたときに答えられないといったことがありませんか?これはその単語の意味が長期記憶まで移されないため起こるのです。それにはより深い処理の仕方が必要なのです。

 このように、短期記憶に情報を維持する働きしかないものを維持リハーサルといい、長期記憶へ情報を送ったり、貯蔵したりといったことを促進することを精緻化リハーサルといいます。皆さんの身近な例でいえば、精緻化リハーサルによって、試験のために覚え歴史の年号や数学の公式といったものが長期記憶に送られた結果、記憶しておけるわけですから、実際にテストで良い点がとれるということになるのです。(TY)

  

意味(meaning>

 人が言語を学ぶときに、必ず関わってくるものが「意味」というものです。例えば、英語の「Birthday」という単語には、日本語で言う「誕生日」という意味があります。また、カレンダーでみれば、6月7日というただの日にちが、ある人にとっては「自分が生まれた日」という意味を持ちます。このように、「意味」というのは、なんらかの概念・観念などを人々が共通に理解できるようにするために作られた一つの形です。

 しかし、意味は必ずしも1つの概念から成り立っているわけではないため、とても曖昧です。例えば、紙にマルを書いてみてください。同じ図形を見ても、人によってはそれを「○(マル)」と見るかも知れませんし、「0(ゼロ)」と見るかもしれません。言葉でも同じことが言えます。「勝手」という言葉について見てみましょう。この言葉は、辞書を引くと7つの意味が出てきます。これらは、その言葉や記号が使われている文脈などによって意味を変えているのです。また、同音異義語では、漢字に変換してみないと意味を取り違えてしまうこともあります。この点で、日本語ってめんどくさいなぁ…とも、言葉が理解しやすいなぁ☆とも思うのです。そして、こうした意味の認識には、個々人が所属している文化に左右されることもあります。(NK)

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意味とは、ある形式にともなう内容、または表象のことです。つまり、ある言葉や漢字、記号、文章などが指し示す、内容やあるいは感情、状態などがあることをいいます。

たとえば、黒板、という単語は、みなさんがよく知っている、授業中に先生がチョークでものを書くあの板を意味していますね。また、悲しい、とか嬉しい、という単語は、私たちの感じる感情を意味しています。それに、〒という記号が郵便局を意味していることもみなさんは知っているでしょう。

しかし、ひとつのものごとに対応する意味は、必ずしもひとつではありません。たとえば、本棚の本、と本番の本、の指し示す意味は違うように、同じ単語や記号でも、文脈や状況によってちがう意味をもって使われることもあるのです(MA)

  

意味記憶(semantic memory>

記憶にはいくつかの種類があり、エピソード記憶と意味記憶に大きく分けることができます。エピソード記憶は、個人的な経験に関する記憶です。たとえば、「先週の土曜日に友達とショッピングに行って、服を買った。お昼はカフェで食べながらたくさんおしゃべりをした。とても楽しかった。」などといった経験の記憶です。いわば、思い出にあたります。一方、意味記憶は知識にあたるものです。たとえば、英単語を覚えたり、歴史の年号を覚えたりするなど、学習を通じて得られた知識を意味記憶といいます。

 皆さんは小学校の低学年で「九九」を覚えましたよね?実は、このころは意味記憶がよく発達しているから、暗記するのが大丈夫なのだそうです。幼い頃は、論理じゃなく、むしろ意味のない文字や絵や音に対してものすごい記憶力が発揮される時期なのです。

 逆に、中学生になるころはエピソード記憶が十分発達してきて、論理的な記憶がメインになってきます。だから、成長してから「九九」を覚えるのはなんとも難しいことなのです。皆さんは試験前に一夜漬けをしたことはありますか?この一夜漬けも、中学・高校までなら意味記憶の能力がまだ高いので通用しますが、一定年齢を過ぎるともう通用しなくなります。裏を返せば、一夜漬けも高校生までなら効果ありといえるかもしれません。(TY)

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記憶といっても、その性質はたくさんあります。どのような情報なのか、どのくらい覚えているのか等様々です。

記憶はまず覚えている長さによって「 短期記憶 」「 長期記憶」に分けることができます。そして、長期記憶はその記憶される内容によって、「宣言的記憶」と「手続き的記憶」に分かれます。宣言的記憶とは、言葉で説明できる記憶です。手続き的記憶は例えば自転車の乗り方といった言葉では人に説明することが難しいものを言います。つまり、何気無くしていること、身についていることに関する記憶です。また、宣言的記憶はさらに「エピソード記憶」と「意味記憶」の2つに分かれます。エピソード記憶は『今日の朝は○○を食べた』などといった時間や空間を特定して思い出せる記憶です。

そして意味記憶には家族の名前や誕生日といった個人的な事実に関する「個人的意味記憶」と言葉の意味、歴史的事実といった社会に共有される知識に関する「社会的意味記憶」があります。「意味記憶」は非常に大量で、思い出せなくなることはあっても、存在しなくなることはないとされています。そのため忘れていたことでも手がかりをもらえば思い出すということが起こるのです。また、私たちが普段、言葉を使ってコミュニケーションできるのもこの意味記憶があるからだといわれています。(YM)

  

意味的プライミング効果(semantic priming>

プライミング効果とは、先に与えられた刺激が、後に与えられた刺激への反応に影響を与える効果の事を言います。プライミング効果にはいくつか種類がありますが、先に与えられた刺激と後に与えられた刺激の間に何らかの意味的な繋がりがあるものは「意味的プライミング効果」と呼ばれます。

例えばこのような実験が行われました。被験者に、あらかじめ或る単語を見せた後、次に表示された単語が実在するものかどうかを判断させる課題で、「パン」の後に「バター」を判断させた時の方が、「看護婦」の後に「バター」を判断させた時よりも反応が早かったという結果が出ました。

このような意味的プライミング効果は、頭の中で或る単語を思い浮かべると、それに関連する別の単語にまで思い浮かびやすさが広がっていく事を示しています。(HA)

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 私たちは、何か刺激を受けたとき、その後に受けた刺激に対する反応にまで、前の刺激の影響を受けることがあります。このような効果をプライミング効果と言います。

 中でも、前に受けた刺激と後に受けた刺激との間に何か意味的なつながりがある場合、これを意味的プライミング効果と言います。

 次のような状況を考えてみましょう。たとえば突然、料理で使う皮むき器を見せられたとします。それ単独で見せられた場合私たちは一瞬とまどうかもしれません。では、皮むき器の前に包丁を見せられていたらどうでしょう。おそらく突然見せられた場合よりも、それが何であるかスムーズに思いつくことができるでしょう。

 この時、包丁という刺激が皮むき器という刺激に対して影響を与えています。二つの間で、意味的プライミング効果が生じているのです。

 このような意味的プライミング効果をうまく活用して、何かに対する判断や反応を早くしたりすることも可能ではないでしょうか。頭の回転を早くするのに、意味的プライミング効果も一役かっているようです。(MM)

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プライミングとは、まず先に聞くとか見るとかして受けた刺激が、あとから受ける刺激の情報処理の仕方に無意識的に影響してしまうことをいいます。これは、直接プライミングと間接プライミングというものに分けられます。

 直接プライミングというのは、先に受けた刺激が後に受ける刺激と同じ単語だったときの影響のことをいいます。間接プライミングというのは、先に受ける刺激が後にうける刺激と違う単語だったときの影響をいいます。意味的プライミングは、間接プライミングの一種で、先に受けた刺激と後に受けた刺激が意味的につながりを持っていて、後に受けた刺激を分かるのが早くなる、という影響のことです。

 たとえば、「パン」という言葉を見せたあとで、「小泉首相」という言葉を見せたときより、「小麦粉」という言葉を見せたほうが、言葉の意味が早く分かる、ということです。(TK)

  

意味ネットワーク(semantic network>

「カラス」―「鳥」―「飛ぶ」など、複数の概念をネットワーク形式で表現し、意味関係を表したものを「意味ネットワーク」といいます。例えば、「鳥」と「カラス」の間は「カラスは鳥の一種である」という関係、「鳥」と「飛ぶ」の間は「鳥は飛ぶという性質がある」という関係で結ぶことができます。人間が長い間覚えていられる量には限りがありますが、このようにいくつかの概念を結び付けて考えることで長期記憶が可能になります。

上の例でいえば、「カラスは鳥である」「カラスは飛ぶ」「鳥は飛ぶ」などと一つ一つを覚えていくと数が多すぎて大変ですが、ネットワークでつなげてひとつのまとまりにすると、少ない知識で色々なことを覚えることができます。「カラスは鳥の一種であり、鳥は飛ぶ」という関係から、「カラスは飛ぶ」ということを導き出すことができるのです。(OM)

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意味ネットワークとは、言語の意味、あるいは一般的な知識を人間の直感によって効率よく表現しようとする試みのことである。意味ネットワークは、それぞれの概念を「リンク」と呼ばれる線で結ぶことにより、様々な意味や知識を表したり、概念と概念の関係を明示できる。これを平面上に表そうとすると、フレーム風に記述することができる。またこのネットワークによって膨大な量の知識を効率よく収めたり、引き出したりすることができる。

しかしこの便利なシステムも、様々な問題を含んでいる。意味ネットワークは概念の「内包」と「外延」を区別して扱えなければならないなど、より複雑システムを必要としてしまうため、効率が下がってしまうことなどがあげられる。意味ネットワークは一見簡単そうで、人間の直感にマッチしているように見えるが、だからこそ混乱が起きやすく論理的に整ったネットワーク構造を提案するのは大変難しい仕事である。外部表現をネットワークに組み込む方法、ネットワークの手続き的な操作方法および形式的な表現形式、そしてその上で推論を行うエンジンの動作定義なども含めて議論されなければならない。(YJ)

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ものが持つ概念やその関係をネットワーク構造によって表現し、知識として記憶しておくネットワークのことを、意味ネットワークといいます。人間の記憶は、コンピュータ記憶とは異なる構造であるため、ビットやバイトといった情報量で表すことができません。そこで、意味を理解し、記憶するためにはこの意味ネットワークが必要になってくるのです。意味ネットワークを考え出したコリンズとキリアンによれば、概念は『ノード』と呼ばれる点で示され、概念間の関係は、『リンク』と呼ばれる線で結ばれ、ネットワークはピラミッド式に、上位概念から下位概念へと成り立っています。例えば、『ゴールデンレトリバー』という概念(ノード)は、その上位概念である「イヌ」と、その上位概念である「動物」と、リンクで結ばれています。このとき、もっとも一般的な特性が一番上の上位概念に位置するようになっています。このようにして、私たちは意味ネットワークの概念(ノード)を増やし、何かを理解するときや、記憶するときに役立てているのです。(HM)

  

意味符号化(semantic coding>

人間の記憶の過程は、符号化(記銘)、貯蔵(保持)、検索(想起)の3段階に分けることができます。「符号化」とは外部の刺激が持つ情報を記憶として取り込むこと、「貯蔵」とは符号化したものを保って保存しておくこと、「検索」とは保存されていた記憶をある期間後に外に表すことを言います。

意味符号化とは、単語や言語的表現を記憶する時に、その音やそれを発声するのに必要な身体的運動ではなく、その情報を意味に変換し、記憶として取り込むことです。例えば「シンリガク」という音声を認知したとき、「心理学」という、意味のある言葉に置き換えて覚えるということです。(SI)

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私たちの記憶は、記憶を入れ込む「符号化」、記憶を保存する「貯蔵」、記憶を取り出す「検索」の3つの段階に分解できます。情報を符号化するためには、まずその情報に注意を向けなければいけないのですが、言語材料については項目の意味に基づいて符号化をします。これを意味符号化と言います。意味符号化は単語の場合でも起こるのですが、文章の場合が最も顕著に起こります。意味符号化は日常生活での記憶で広く行われていて、例えば複雑な討論の状況を説明するときに細かい内容については記憶違いをするものの、話の中身については正確に述べることができるのです。(IT)

  

隠喩(metaphor>

metaphorとは、「隠喩」と訳され、そのままカタカナで「メタファ」とも言われます。ここで使われる「隠喩」とは修辞表現的な「『〜のような』を用いない『たとえ』」だけを表すのではなくて、もっと感覚・知覚的な「たとえ」を表します。metaphorの一例をあげると…会話中、あなたが「何か飲みたい」と感じた時、‘ノドが渇きましたね?’と言ったのに対して、‘はい、渇きました。’と相手が答えたらあなたはどう思うでしょうか?おそらく思わぬ返答に驚くはずです。あなたは‘何か飲みましょうか。’という返事を期待していたはずですから。あなたが言った‘ノドが渇きましたね?’という字句の裏に「何か飲みたい」という意味があるのを相手に理解されなかったためこのような会話の食い違いが起こるのです。(KT)

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メタファーとはある事柄を他の事柄を通して理解し、経験することです。例えば、「鈴木先生は鬼なんだよ。」と友達に言われたとします。そうしたら、あなたが鈴木先生本人を知らなかったとしても、鬼のように厳しく、恐い先生だということがわかりますね。これは、鈴木先生という知らない人物を、すでに知っている鬼というものの持っているイメージに当てはめて理解しているということになります。つまり、鈴木先生を鬼にたとえて理解しているのです。このように知らない物事を、すでに知っている物事と関連付けて理解することを、私達は日常生活でよく行っています。これがメタファーです。私たちの思考過程の大部分はメタファーに基づいて成り立っています。また、メタファーは今までの自分の経験とは切っても切り離せない関係にあります。先ほどのたとえで、自分が鬼というものを知らなかったとしたら、鬼のイメージそのものがもてなくなってしまい、鈴木先生がどういう人かを理解することができないからです。このように、経験に基づいてメタファーは使われるのです。(SM)

  

メモリースパン(memory span>

メモリースパンとは、私たちが記憶できる範囲、つまり記憶の容量を表すものです。

具体的には、人が作動記憶(私たちが思考するときに用いるメモのような記憶)の中に保持することができる項目の数のことを指します。つまり簡単にいうと、一度にどれだけ覚えられるか、覚えられる記憶の量を、メモリースパンといいます。

では、メモリースパンはどう測ればよいのでしょうか。私たちは、ものの長さを測るとき、物差しをあてて目盛りの数を調べますよね。同じようにメモリースパンも、覚えられる項目の数を調べれば測ることができるのです。たとえば、こんな実験があります。まず、実験者が1秒につき1つの早さで、ランダムに単語を読み上げます。これを被験者に記憶してもらいます。そして、実験者が読上げ終わったあと、被験者に覚えた単語を覚えた順番どおりに思い出してもらいます。このとき思い出せた単語の数、つまり覚えられた範囲が、その人のメモリースパンとなります。ちなみに、一般的な大人は、平均して7つの単語を覚えられると言われます。(SY)

  

「ウ」

ウォーフ仮説(Whorfian hypothesis>

 いきなりですが、少し難しい話をします。人がこの世界を感じとったり、何かを考えたりする仕方は、その人の母国語の特徴が決める。また、違う言葉を話す人達は、世界の感じとり方や考え方に違いがある。という2つの考え方から成る説をウォーフ仮説と呼びます。ウォーフというのはアメリカの言語学者の名前で、この説を中心的に唱えた人です。

さて、この説をもう少し分かりやすく説明してみましょう。日本語を母国語にしている人の物事の感じとり方や考え方は、日本語の特徴によって決まります。そして英語を母国語にしている人の感じとり方や考え方は、英語の特徴によって決まります。つまり、日本語を話している人と英語を話している人の感じとり方や考え方は、違っているというわけです。

 もっと具体的な話をしてみましょう。冬、空から降ってくる白い物を見たらあなたは…「雪だ!」と思いますね。しかし、イヌイットの人達は同じ雪は雪でもその状態によって詳しく区別をして、3種類の別々の名前で呼びます。さらにその3種類の名前をまとめた「雪」に対応する言葉がイヌイット語にはありません。日本語にも「ぼたん雪」や「粉雪」など、雪を区別する言葉がありますが、それらの言葉をまとめて「雪」と呼びますね。このことから、雪の感じとり方が日本人とイヌイットの人々とで違っていることが分かります。(SK)

  

「エ」

エコーイック記憶(echoic memory>

エコーイック記憶(echoicmemory)とは、聴覚における感覚記憶のことです。音声や、音楽といったものは、瞬間的なものです。例えば、誰かが自分の名前を呼んだとしても、自分が名前を呼んだ人のほうを振り向くころには、その「○○さん」と呼びかけられた音声はもう消えてしまっています。ですから、その「○○さん」という音声を一時的にでも記憶しておかないと、自分の名前だということを頭の中で理解し、そして振り向くという、動作を行うことができません。その一時的な記憶システムをエコーイック記憶と呼ぶのです。そこに保存される情報のことをエコー(echo)といいます。

このような一時的な記憶システムで、視覚における感覚記憶でアイコニック記憶(iconicmemory)というものがあります。アイコニック記憶に保存できる情報の保持時間がおよそ0.2秒であるのに対し、エコーイック記憶に保存できる情報の保持時間はおよそ5秒であるといわれています。先ほども述べたとおり、音声や音楽などの聴覚情報は、瞬間的なものです。ですから情報の保持時間が短くてもその代わりに、常に目の前に存在するものなら入り続けてくる情報を扱うアイコニック記憶よりも、エコーイック記憶の保持時間が長いのだと言われています。

アイコニック記憶の中の情報は、情報整理されて、短期記憶に送られない限り、忘れ去られてしまうか、後から入ってくる情報に置き換えられます。例えば「○○さん」と呼ばれた後、「そういえばあの時あの場所で自分の名前を呼ばれたな」と思い出すことはまずないでしょう。しかし、口での約束で「明日の夕方から一緒に勉強をしよう」と言われたときにはその約束は、大抵は覚えていて約束は守られます。このときは、聴覚からの情報がエコーイック記憶を通して、短期記憶に送られたことになります。(HM)

  

エピソード記憶(episodic memory>

エピソード記憶という言葉は、1971年にTulvingという人によって初めて使われました。「小学3年生の時、運動会の100m走で一等賞をとって、賞状をもらった」「昨日、部活が終わった後、家に帰って夕飯のカレーライスを食べた」などといった記憶はエピソード記憶です。このように、「いつ」「どこで」「誰と」「何をしたか」などを含む記憶のことを、エピソード記憶と言います。

記憶には、中身を言葉で表現できるものとできないものがあります。自転車の乗り方など、言葉で表現できないものを手続き記憶といいます。言葉で表現できるものには2種類あり、一つは意味記憶、もうひとつがエピソード記憶です。意味記憶は、「2×3=6」などの事実に関する記憶です。 

我々が1歳や2歳の時のことを覚えていないのは、エピソード記憶が意味記憶や他の記憶に比べて発達が遅いためだと言われています。また、エピソード記憶は、その出来事を体験した時の感情によって記憶の残り方に違いが出ます。嬉しかったこと、悲しかったこと、腹が立ったことを、時間が経ってもよく覚えているのはそのためです。(MY)

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エストニア生まれでカナダの心理学者タルヴィング(Tulving,E)は、長期記憶(=数時間から数年、数十年にわたって保持される記憶)をエピソード記憶と意味記憶とに分類しました。エピソード記憶とは、私たちが意識的に「思い出そう」とすることで思い出すことができる顕在記憶という記憶の種類のうちの1つで、たとえば「昨日の夕飯にはすき焼きを食べた」とか、「小学生の頃、自転車で転んで骨折した」など、個人が経験した時間的・空間的な記憶のことを指します。このエピソード記憶に対して、教科書や辞書などに書いてある知識の記憶を意味記憶といいます。意味記憶も、覚えたときは「いつ」「どこで」覚えたというエピソード記憶的要素が含まれることがありますが、その後、そのようなエピソードが記憶から抜け落ち、意味記憶化することがあります。このようなプロセスで、例えば何十年も昔のことは自己の体験であってもそれを知識として記憶していることもあり、この場合は自分の記憶でも意味記憶となるのです。(TH)

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エピソード記憶とは、我々が一人一人もつ経験としての記憶です。この記憶は「物語」として脳にインプットされているため、経験したことを思い出すはずなのに、第三者の目線で自分を含めた全体を見渡せる位置から「物語」を見るように経験したことを振り返ることが出来るといった面白い特性があります。

また、このエピソード記憶は覚えやすく忘れにくいため、最近ではよく記憶術で登場します。ただし、非常にもろい記憶であるため先入見や誤情報によって簡単にゆがめられてしまう一面もあります。つまり、個人的な意識の操作によって管理できる記憶なのです。

生まれてから物心つくまでの数年間のことが思い出せないのは、エピソード記憶が未発達だったためと言われています。エピソード記憶は、記憶の中でも最も後期に発達する最も高度な記憶なのです。(KT)

  

「オ」

音声知覚(speech perception>

音声によるコミュニケーションの仕組みについては、おおむね(1)音声の産出(2)音声の伝播(3)音声の知覚、認識、理解の3つの領域に分けることができます。

 まず、音声の産出において重要なことは、話し手は聞き手に理解してもらえるように話しているということである。これはあたりまえのことのように思えるかもしれませんが、音声を生み出すことと音声を知覚することは、密接な関係にあるのです。しっかりとした音声が発せられて初めて、きちんと相手の音声を理解することができるのです。

 音声知覚は、ある人の発した音声を他の雑音などと区別し、言語や話者の感情などを認知する過程のことです。このように言葉で言う分には、とても簡単なことのように思えるかもしれませんが、音声知覚の過程は実は非常に複雑であるということが研究によってわかってきました。この過程には相手がなんと言ったかを理解することに集中できるように、という自然の計らいがあって、その複雑さが覆い隠されているのかもしれません。もしこのようなことが自然にできず、音声知覚に必要なすべての処理を意識しなくてはならないとしたら、おそらく言われたことのほとんどが、話の聞き手に理解される前に消えてしまうでしょう。 

 最近、このような複雑な過程で行われる音声知覚を、機械に行わせる技術の研究が進められています。現在でも語彙数に制限はありますが、音声を認識して反応するコンピュータは実用化されています。音声知覚に関する研究がもっと進めば、声でテレビのチャンネルを変えるなど、リモコン要らずの生活が実現する日もそう遠くはないかもしれません。(SA)

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 日常の生活の中で、他人に何らかの感情や考えを伝えようとすることをコミュニケーションと言います。そうした時には、手紙の様に文字で表現したり、直接相手に言ったり、あるいは身振り手振りで示したり、などといった手段が使われます。その中でもおそらく一番頻繁に使用されるのは言葉を口にすること、つまり音声によるものではないでしょうか。

 音声は、声帯の振動が声道を通り、口蓋・舌・顎・唇などで調節されて発せられます。親子や兄弟姉妹などの声は似ていることもありますが、ひとりひとり微妙に違っています。また、同じ言葉でも、声の調子によってはまったく違うことを言っているように感じられたりもします。例えば、あなたが久しぶりに会った友達に「元気?」と聞いたとします。「元気だよ!」と明るい声で言われたならば違和感はありませんが、暗く沈んだ声で「元気だよ」と言われても、とてもそうは思えないでしょう。私たちは、ちょっとした声の違いからそれが誰なのか気がついたり、気持ちを読み取ったりということを、生活の中で何気なく行っています。このように、ある人の音声を他の音声から選出・区別し、言語の種類や話している人、またその人の感情などを認知する過程を、音声知覚といいます。(KM)

  

「カ」

概念形成(concept formation>

まず「概念」という言葉についてであるが、ここでは「三角形」を例に挙げてみる。例えば、大きさや色が異なる「三角形」があるとき、私たちはそれらがどれも同じように「三角形」だと分かる。これは私たちが「三角形」の共通の特徴をまとめているからである。そして、この共通の特徴を集めたものを「概念」という。また別の例を挙げれば、目の前に柴犬、チワワ、ブルドックがいたとき、それらを「犬」としてひとまとめに捉えられるのも、私たちの中に「犬」という概念があるからである。すなわち、「概念」とは様々な特徴から、共通なものを取り出してまとめたものである。

 さらにこの「概念」とは、例えば「三角形」を「三つの角に囲まれたもの」というように、その共通のものを取り出して捉えるのを内包と言い、「四角でも丸でもないもの」といったように他のものと比較することで捉えるのを外延と言う。

 そして、こうした「概念」をそれぞれの事物・事象から作り上げることを「概念形成」という。例えば子どもが様々な犬種と出会い、またその他の動物を見る中で、「これは犬で、あれは犬ではない」と判断できるようになるのは、この「概念形成」によるものである。(HH)

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概念が成立する心理学的過程を『概念形成』と言います。この概念形成は、知覚・認知・思考・発達・言語など心理学の各分野に関係します。概念は一般的に、経験を通じて習得されると考えられていて、この概念の習得過程は『概念学習』と呼ばれることもあります。Bruner(1956)は、概念の学習過程において、すでに学習された認知的枠組みを手がかりにして、新しい経験を分類して、概念を構成していく過程を『概念達成』と呼びました。例えば、例えば山にきのこ狩りに行ったとします。このとき、すでに持っているきのこについての手がかり(色・形)をもとに、毒キノコか?食べれるきのこか?を分類していき、毒キノコの概念を形成していきます。この過程が概念達成です。また、概念達成過程の状態を調べる典型的な手続きを『概念識別』と言います。(HM)

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 例えばAさんもBさんもCさんもみんな「人間」であるというように、私たちは個別のものを1つのまとまりとして考えることができ、「犬」や「カバ」のような他のまとまりとは分けて考えることができます。このまとまりのことを概念と言い、私たちが日常生活する上でこれがなければ大変不便なものになってしまうでしょう。

しかし、「質量」などの物理的概念や「契約」などの法的概念、「台形」などの数学的概念に比べて私たちが日常的に使用している概念は定義や境界が曖昧なものが多いです。例えば「イス」や「ゲーム」などの概念のように長年分析されたにもかかわらず、定義的特徴(ある概念を定義するのに必要にして十分な特徴)が見つけられない概念も存在します。

概念の定義や、どのように記憶に貯蔵されどのようにカテゴリー化されるのかを説明する理論として「プロトタイプ・モデル」「範例モデル」「理論ベース・モデル」などが提案されていますが、どの理論も概念を部分的には説明していても統一的に説明してはいません。したがってどのように概念が形成されるかについても明確な説明はできません。概念とは心理学だけでなく、言語学や哲学などの他の分野においても重要な研究対象です。(SJ)

  

顔の再認(recognition of faces>

顔の再認という言葉は、ある人の名前などから顔を思い出すという、ごくありふれた行為です。どこか見覚えのある人と街中で久しぶりに顔をあわせたときに、名前を思い出せないということはよくあることです。この顔の再認実験は、実験室で行うその成績は一般的にかなり正確です。しかし、実験室を一歩離れると、顔の再認というものは大変誤りやすい物となります。例えば、裁判では、その証言が大変重要なものなのにもかかわらず目撃者が顔の特徴を間違えていたということがありますし、目撃者の証言に基づいた指名手配犯のモンタージュ写真も、実際の犯人とは似ても似つかないということがよくあります。

また、見慣れた顔を見たことのない顔と区別するのは、その人の名前を思い出したりその人がどのような職業のカテゴリーにいるかという分類をすることよりも早く行うことができます。(TH)

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再認とは、過去に見たり聞いたりしたことのあるものだと確認することです。つまり、ある人の顔を見て、「見覚えがあるな」と分かることを『顔の再認』といいます。『顔』は人とコミュニケーションをとるための大切な媒体です。それを覚えて『再認』することは、私達が生活する上で欠かせないことだといえます。では、どのようにすれば顔を記憶することが出来るのでしょうか。顔の記憶に関するこれまでの研究では、次のとが分かっています。まず一つめは、示差性の高い顔、つまり目立つ顔は再認しやすいということです(示差性効果)。二つめは、知っている人のほうが知らない人より再認しやすいということ(既知性効果)です。まず、その人を知ることが顔を覚える第一歩といえるでしょう。そして三つめは、顔の形の特徴に注目するより、顔から受ける印象について判断した方が再認しやすいということです(意味処理優位効果)。例えば、「目が大きい」「鼻が高い」といった形の情報で顔を覚えるより、「優しそう」「親しみやすい」といった印象を覚えた方が後で思い出しやすいといえるでしょう。(SY)

  

学習方略(learning strategies>

 皆さんは今英語を学習していると思いますが、どのように学習を進めているでしょうか?英語の単語帳を何度も繰り返しながら一つ一つ覚えて英語を覚えるやり方もありますし、英語を話す友達と話をしたり、手紙を書いたりしながら英語を覚えるやり方もあるでしょう。

 学習を効果的に進めるための方法にはいろいろなものがあると思いますが、これらの方法を「学習方略」といいます。学習方略は、学習の内容に関わる「直接方略」と、学習内容には直接関わりませんが、結果的に学習を進める「間接方略」の二つに分けることが出来ます。直接方略の種類には、単語を何回も復唱したり、語呂合わせを利用したりして覚える「記憶方略」や、新しい文法を日本語と比べて覚えるような「認知ストラテジ−」などがあります。間接方略には、英語を話す友達と会話をして覚えるなどの「社会的方略」などがあります。(OM)

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 心理学において、学習は「遂行の結果として生じる比較的永続的な行動変化」と定義されています。しかし、これでは難しくて何のことだかわかりませんね。つまり、私達の行動を考えてみると、生まれつき得たものと、その後の経験や学習によって得られた行動があります。そこで、何らかの行動を変える際に学習によって変えよう、というのが学習方略です。

 どのような方法があるかというと、古典的条件づけやオペラント条件づけと呼ばれるものがあります。古典的条件付けは、たとえば犬にえさをあげるときにベルをならすようにすると、犬はべルの音で「餌がくる!」と学習し、それだけでよだれを流すようになるといったようなものです。オペラント条件づけは、たとえば犬に何か芸を教えたいときに、少しずつその芸に近づくことによって餌を上げるなどの褒美をすれば、次第に犬はその芸に近づいていきいずれはできるようになるといったようなものです。

 このような学習方略はあらゆる場面で効果的に使われているのです。(AN)

  

確信判断(confidence judgment>

私達の脳には、確信に基づいて判断する働きがあります。例えば、寿司を食べるときのことを考えてみましょう。寿司を食べると、まず私達の脳にはその寿司の「味」の情報が送られます。次に、その情報を今までに食べたことのある寿司の知識やデータと照らし合せ、おいしいかどうか『判断』します。この『判断』は、私達の『確信』にもとづいて行われます。例えば、事前に「高級寿司店の特上寿司」だという情報が与えられているとします。私達の脳は“おいしい寿司だろう”という仮説を立てます(これを『確信』といいます)。脳ではその仮説に基づいて「味」の情報が処理されます。その結果寿司は“おいしい”と判断されます。一方、「スーパーで半額で買った寿司」という情報が与えられたとしたらどうでしょう。私達の脳では“おいしくない寿司だろう”という仮説(確信)が立てられ、それに基づいて「味」の情報が処理されることになります。すると、同じ寿司を食べたとしても、“おいしくない”という判断をしてしまいます。このように、私達は『確信』する(仮説を立てる)と、その確信を裏付けるように頭の中で情報を処理して『判断』します。このことを、『確信判断』といいます。(SY)

  

カクテルパーティー現象(cocktail-party phenomenon>

あなたは今、友人たちと遊園地に来ています。しかし、気がつけば、あなたは一人逸れてしまいました。周りには他の入園者たちが大勢いて、とても友人たちを見つけられそうにありません。また非常に騒がしくどうも友人たちを呼んでも、届きそうにありません。と、思ったそのとき、あなたは自分の名前が呼ばれた気がして、その声のほうを見ると、友人たちがこっちに向かって手を振っていました。

このストーリーのように、自分の名前など自分に関係のある言葉なら(注意を向けやすい言葉なら)、周りが騒がしくても区別して聞き取れることがあります。この現象を「カクテルパーティー現象」と言います。人が音を聞くときには、すべての音を捕まえるのではなくて、音を選んで注意を向けます。注意を向けた音は良く聞こえますが、注意を向けてない音は聞き取れません。ですから、自分の名前のように注意を向けやすい音が、注意を向けてない騒がしさの中で聞こえたのですね。また、音の違いよりも音の方向のほうが注意を向けにくいので、夜道を歩いていて、何か声が聞こえたらそれは空耳でないかもしれませんね。(TK)

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賑やかな休み時間の教室で、友達に呼ばれた気がして振り向いてみたら、本当に友達が自分の話題で盛り上がっていたという経験はありませんか?とても賑やかで、それまではその友達たちの会話なんて耳に入らなかったのになぜだろうと思いますよね。このように、自分に関連のある情報だけを選択して注意を向けて、他の情報は無視してしまうことを、カクテルパーティー現象といいます。実際、友達は周りの多くの雑音と同じくらいの声で話していたはずです。それなのに自分に関連することだけは聞き取れてしまう、これもカクテルパーティー現象の一つです。また、向かい合って話している友達の声が良く聞き取れるというのもカクテルパーティー現象の一つです。実際には、周りの雑音とそんなに変わらない声で話しているはずですが、聞こうという注意が自然と向けられているので、会話が成立するのです。このように、カクテルパーティー現象は身近なところでよく起こっている現象なのです。(SM)

  

活性化の拡散(spreading activation>

 次に挙げるものには、ある共通点があります。考えてみてください。

 りんご 消防車 ハート

 なにか分かりましたか?答えは「赤い」ということです。

 このように、連想ゲームのように、あるものとあるもののイメージがつながっていくことを、活性化の拡散といいます。たとえば上に挙げた三つのものから、りんごから梨や果物、消防車から救急車や火事、ハートからダイヤやクローバーなどをイメージしたかもしれません。そのように、イメージがどんどん膨らんで、色々なものが蜘蛛の糸のように連想され、また別のところで色々なつながりが出来ていくことを活性化の拡散というのです。

 「794」という数字だけではなかなか連想ができませんが、これに「年」というヒントを足すと「794年」となり、ここからならたいていの人が、「うぐいす」と「平安京」を連想すると思いますが、これも、この「794年」「うぐいす」「平安京」三つのつながりがとても強く、よく知られているものからだということが出来ます。(KJ)

  

活性伝播(spreading activation>

例えば、「りんご」という言葉を聞いたとき、そこからどんな言葉を思い浮かべることができるでしょうか。きっと多くの人は「果物」「赤い」などという言葉を連想して、「野菜」「黒い」などという言葉を思いつく人はあまりいないでしょう。このように言葉と言葉の間にはつながりがあり、連想しやすいものとそうでないものがあります。このつながりが強いほど、簡単に連想することができるようになります。ある言葉が活性化され、他の言葉に繋がっていくこのことを、活性伝播といいます。

もう一つ例を挙げてみましょう。ほとんどの人は「鳥」という言葉を聞いたときには「飛ぶ」という言葉を、「スズメ」という言葉を聞いたときには「鳥」という言葉を思い浮かべると思います。鳥は飛ぶもので、スズメは飛ぶことができるから鳥の仲間だ、ということは、すぐに理解することができます。けれどこれが「ダチョウ」や「ペンギン」ということになると、少し違ってきます。典型的な飛ぶ鳥であるスズメと違い、ダチョウやペンギンは飛ぶことができないからです。「ダチョウ」と聞いて「飛ぶ」と連想する人は、まずいません。このように、つながりが弱い単語を連想するのは、強いつながりのある単語を連想するよりも難しく、時間がかかることなのです。(KM)

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私たちは、ものや出来事を、その特徴を集めあわせて概念として形にしています。一つ一つの特徴は、またさらに他の概念を指しています。例えば、カラスという鳥は、鳥という大きな集まりの中の一つで、色=黒、場所=人間の家のある所、というように情報を整理しています。この方法は『意味ネットワーク』と言います。そこで、その整理された知識から必要な情報を探し出す方法が、『活性伝播』と呼ばれます。

例えば、「カラスに皮膚がありますか?」という質問をされたとき、カラスと皮膚それぞれに関係のある概念が活発に働きます。その両方をはじめとして、活発に働く部分が網の目のように広がっていきます。そのネットワークの上で、両方が出会ったときに、上の質問の答えが見つかったことになるのです。

意味ネットワークは、一つのものにたくさんの特徴をつけているところが、知識を樹の枝のしくみに例えた『判別ネット』よりも優れていると言われています。判別ネットとは、例えば、動物についての知識を表す樹の場合は、鳥や哺乳類などを表す枝があり、さらに、鳥の枝の下には鳴く鳥、肉食の鳥などを表す枝があり、最後にはカッコウやヒバリがくるという考え方です。(YA)

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外を歩いているとき、ツバメを見かけたとします。このとき、みなさんの頭の中には、「ツバメ」→「飛ぶ」→「鳥」→「動物」という概念の階層構造が出来上がっていて、ツバメは何かということを理解することができます。このように、名詞概念が階層的ネットワーク構造で結合され貯蔵されることを『階層的ネットワーク・モデル』と言います。Collins&Loftusは、この階層構造を否定し、『活性伝播』と呼ばれるモデルを考え出したのです。『活性伝播』とは、ある概念の活性が、それに結びついた別の概念を活性化する過程のことです。例えば、「カラス」という言葉を思い浮かべるとします。このとき、「カラス」は「飛ぶ」といった鳥としての定義を多く持っているので、カラスという言葉からすぐに「カラスは鳥だ」と判断できます。しかし、次に「ダチョウ」という言葉を聞かされたとします。このとき私たちの頭の中には、ダチョウは「飛ぶ」という鳥としての定義がないために、ダチョウを鳥として判断するのには時間がかかります。このように、概念(鳥の種類)と概念(飛べるかどうか)の結びつきが弱いと、概念を理解するのに時間がかかり、概念と概念の結びつきが強ければすぐに概念を理解することができるのです。(HM)

  

カテゴリー知覚(categorical perception>

カテゴリー知覚は、範疇知覚とも呼ばれています。

この言葉は、音声心理学でよく使われる言葉です。ここでは、例を出しながら紹介していきましょう。

 まず、次の言葉を発音してみてください。rightとlightです。

 どうですか?上手に発音できましたか?おそらく、学校の授業でこの「r」と「l」の発音の仕方の違いを習ったと思いますが、なかなか上手くできるものではなく、この二つを聞き分けるとなると、さらに難しい作業になると思います。ではなぜ、この音を聞き分けるのは難しいのでしょうか?

 この鍵を握るのが、カテゴリー知覚です。私たちは会話をするときに、言葉を、自分がおもに使っている言語の枠、範疇、つまりカテゴリーに当てはめて考えます。これが今回のテーマであるカテゴリー知覚で、つまり、rightもlightも、「ライト」にしてしまうのです。

こうすることで、「なんとなく」、外国語を発音できたり聞き分けたりできるようになりますが、決して正確に発音できたり聞き分けたりすることはできません。一番の理想は、外国語のカテゴリー自体を習得することですが、これもそう簡単に出来ることではありません。日々の努力が必要です。

riceを注文すれば「ご飯」が出てきますが、liceを注文すると、大量の「シラミ」が出てきてしまいます。気をつけたいですね。(KJ)

  

感覚貯蔵庫(sensory store>

私たちは過去の色々な経験やできごとを記憶しています。記憶する仕組みは3つの段階で説明できます。

@符号化:見たり聞いたりしたことに意味を与えて記憶しやすい状態にします。

A貯蔵:符号化された情報を頭の中に残すことです。

B検索:頭の中に残しておいた情報を思い出すことです。

人間はテープレコーダーとは違って、入ってくる情報をそのまま残しておくことはできません。その内容に解釈や予想を付け加えて、それも含めて記憶します。

しかし、情報にそのように意味を与える前に、見たり聞いたりしたとても多くの情報をそのままの形で感覚貯蔵庫に残します。残しておけるのは1秒以内です。その多くの情報を特徴ごとにまとめて言語にできるようになると短期貯蔵庫に送られます。ここには数分間残しておけます。このとき送られなかった情報は消えてなくなります。また、さらにその情報が何回も思い出されると、ずっと忘れずに覚えていられる長期貯蔵庫に送られます。

英語の単語を何回も繰り返し読んだり書いたりするとずっと忘れないのは、このような記憶の仕組みがあるからなのです。(YA)

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感覚貯蔵庫とは、目や耳などの感覚器官を通して外から入った情報が、感覚記憶としてほぼそのままの形で、貯蔵されるところです。感覚記憶の容量は無限大と考えられていますが、せいぜい1/2秒〜3秒くらいの非常に短い間しか、記憶を留めておくことが出来ません。しかし、知覚した大量の情報のほぼ全てをかなり正確に表します。感覚記憶が失われてしまう前に、注意がはらわれると、その情報は短期記憶へと移されます。つまり、感覚貯蔵庫は、入ってきた情報が短期記憶へと移る前のほんの短い間、一時的に情報を留めておくところなのです。情報は、次々と感覚貯蔵庫に飛び込んできますが、普通の状態では、それらはほんの少しずつだけしか違わない情報なので、情報間の融合が起こります。映画の1枚1枚は静止した連続絵を1秒間に24コマくらいの間隔でどんどん見せると、なめらかな動きのある映像が見えるのは、ここでの情報融合の機能によるものです。しかし、非常に短い間隔で、異質な情報を次々に見せられると、情報内容がお互いに邪魔しあって、ある情報が消えてしまうこともあります。これはマスキング現象と呼ばれています。(SI)

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 私たちが物事を記憶したとき、それを保存しておく場所には三つの種類があります。この三つというのが、感覚貯蔵庫、短期貯蔵庫、長期貯蔵庫です。

私たちが外の世界から情報を受けたとき、その情報はまず感覚貯蔵庫に送られます。しかし、感覚貯蔵庫ではごくわずかな間しか保存しておくことが出来ません。例えば目で見た情報は一秒も経たないうちに無くなってしまいます。

ところで食べ物は、そのまま置いておくとすぐ悪くなってしまいますね。そうならないように、私たちは冷蔵庫や冷凍庫に食べ物を入れておきます。

このように私たちが必要だ、重要だと思った情報は、その情報が悪くなってしまわないうちに、より長い間保存しておけるように短期貯蔵庫に送られ、さらに重要なものは、さらに長い間保存しておける長期貯蔵庫へと送られるのです。

ところが短期貯蔵庫というのは、入れておける量が少なくて、その数は七個くらいであると言われています。では長期貯蔵庫はどうかというと、ここには殆んど無限にものを入れておけるし、とても長い間保存しておくことができます。こうしたところは、本物の冷蔵庫とはちょっと違いますね。(YO)

  

「キ」

記憶術(mnemonic techniques>

 Mnemonictechniques(記憶術)とは、そのままでは記憶することが難しい多量の材料を、速やかに記憶するための実際的な技術のことです。歴史は古く、ギリシャ時代から様々な技術が考案されてきました。たくさんの記憶術がありますが、もとになっているものは共通性が多いです。

 まず、1つの共通性は、記憶すべき材料を適当に分けて、新たな単位を作ることによって、記憶負担を減らすことです。たとえば、皆さんも歴史の年号を覚えるときに、語呂合わせを使いますよね。「1192年に鎌倉幕府が開かれた」を「いい国(イイクニ:1192)作ろう鎌倉幕府」と覚えましたね。このとき、数字4つが、1つの言葉という新たな単位に組みなおされたことによって、記憶負担が減ったのです。

 もうひとつの共通性として、イメージを利用することです。これは、順序や関係を覚えるときに特に有効です。たとえば、「猫、鉛筆、チョコレート、アメリカ」という単語をこの順序で覚えなければならない場合、たとえば、家に帰ってからの流れにこのイメージを結び付けます。「家のドアには猫がいて、玄関には鉛筆が落ちていた。靴箱をあけるとチョコレートの匂いがして、投下の壁にはアメリカ国旗が貼ってある。」という光景をイメージし、記憶します。つまり、すでに記憶されている事柄と結びつけることで、順番の記憶を用意にしたのです。

 記憶術によって、記憶が飛躍的に増加するという報告があがっています。しかし、これらの記憶術は無意味な材料や構造の無い材料を覚えるのに有効ですが、文章などの有意味材料には有効でないという報告もあります。

 皆さんも、記憶術を身に付けて、テスト対策を十分に行ってくださいね。(ME)

  

記憶の階層構造(hierarchical organization of memory>

 みなさんは普段、何かを覚えようとしたとき、どのようにそれを記憶しますか?ひたすら書いて覚えますか?それともひたすら口に出して、独り言を言い続けますか?ここでは、上手な記憶の仕方、つまり、思い出しやすい記憶のやり方を紹介します。簡単に一言で言ってしまえば、覚える内容をグループ化して整理することで、記憶の再生、つまり思い出すという作業が簡単にでき、また、間違いも減らせるということです。これは本来、パソコン機器などの分野で使われてきた仕組みですが、人の脳にだって十分応用可能です。

 例をあげてみましょう。あなたは3日後、社会科の地理のテストを控えています。しかし、あなたは今日までまったく勉強していません。ところが、今回のテストは、これまでよりも範囲が広いため、お手上げ状態です。そんな時登場するのが、この記憶の階層構造を利用した暗記の仕方です。ピラミッドの形のように、上から順番に覚えることを書き出してみましょう。一番上に「東北地方」と書いたら、そこはどんな気候・風土の特徴がみられるか、また、なんという都道府県名があって、名産品はなんなのか、…これをくり返していけば、「東北地方」というキーワードを基にした1つの階層をもつ図ができあがります。そして、これを各地方別に作ればいいのです。少々時間はかかっても、見やすく、書きながら整理して記憶することも可能です。知っていれば、とても実用的な方法だと思いませんか?(NK)

  

記憶の体制化(organization of memory>

私たちが何かを覚える時、関連する情報をまとめ、整理して覚えるやり方を記憶の体制化と呼びます。

たとえば、英単語を覚える時の事を考えて下さい。

ランダムに並んだ単語をそのまま覚えるより、動詞や形容詞などの種類でグループ分けしたり、意味が似ているもの同士をまとめたりという風に、整理した方が覚えやすいですよね。これが体制化です。

意味や種類がバラバラな英単語の場合でも、私たちは何らかの形で関連をこじつけて覚える事が出来ますが、このような体制化は「主観的体制化」と呼ばれます。

但し、主観的体制化については、記憶法として効果はあるものの、こだわりすぎるとかえって学習を邪魔してしまうという指摘があるようです。(HA)

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 似ているものや関係のあるものをまとめ、整理して覚える記憶法のこと。例えば、りんご、テレビ、ピアノ、みかん、ラッパ、ラジカセという6つの単語を覚える場合に、(りんご、みかん)、(テレビ、ラジカセ)、(ピアノ、ラッパ)というように、果物、家電、楽器の3つのまとまりに分けて憶えることで、6つの単語を覚えやすくなり、思い出すのも簡単になる。(HT)

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 私たちは何かを覚えようとする時、似ている情報を整理し、まとめながら覚えようとします。このような方法を記憶の体制化と呼びます。例えば、順番は気にせずにりんご、パンダ、車、ピアノ、バナナ、飛行機、きりん、猫、太鼓、メロンという10個の単語を覚えようとする場合を考えてみましょう。この場合、ただやみくもに覚えようとするよりも、りんご、バナナ、メロンは果物、パンダ、きりん、猫は動物、車、飛行機は乗り物、ピアノ、太鼓は楽器、というふうに関連したまとまりごとに覚えた方が覚えやすいと思いませんか?これが記憶の体制化です。

 また、私たちはそれぞれに何ら関連をもたないもの同士を覚えようとする時でも、色々なこじつけをつくり関連づけて覚えようとします。この場合の覚え方を主観的体制化と呼びます。記憶の仕方については人それぞれの工夫があるのだということですね。

 この記憶の体制化を心がけて、暗記の必要なテスト勉強などに役立てることができるかもしれませんね。(MM)

  

記憶の状態依存(state-dependent memory>

 知っているはずのことをどうしても思い出せないという経験はありませんか?いわゆる度忘れです。その原因のひとつとして記憶の状態依存というものが考えられます。記憶の状態依存とは、人が何かを覚えるときと思い出すときの気分や状況が同じかどうかで思い出せるかどうかに違いがある、ということです。

 何かを覚えたのが楽しい気分のときだったら楽しい気分のときのほうが、悲しい気分のときだったら悲しい気分のときのほうが、それを思い出しやすい、ということです。また、たとえひどくお酒に酔っているときでも、その状態で覚えたことは、同じように酔っているときのほうが思い出しやすいそうです。(NH)

  

記憶範囲(memory span>

 皆さんに問題を出します。今から私が読み上げる言葉を、その順番通りに覚えて下さい。「をるぬりちとへほにはろい」…さて、皆さんはいくつ正確に覚えていられましたか?

 この時に、皆さんが完全な順序で記憶できる項目の最大の数のことを「記憶範囲」と言います。この記憶範囲は、ほとんどの大人が7±2であるということが数々の実験から判明しています。つまり、一般的な大人は5〜9個まで、問題に出したような単語を順序通りに正確に覚えていられるということです。

 この記憶範囲は、必ずしも7±2に限られているというわけではありません。例えば、私が出した問題の単語の列をもう1度思い出して下さい。実は、先ほどの単語を反対から読むと「いろはにほへとちりぬるを」となるのです。このことに気がついた人は、気がつかなかった人よりも沢山の数を覚えていられたでしょう。このように、意味のあるかたまりにして記憶することを「チャンキング」と言います。チャンキングによって、記憶範囲の容量はもっと大きくなるでしょう。(NA)

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心理学者ミラーによると、成人の記憶範囲の限界は7±2(つまり、5〜9)だそうです。この記憶範囲というのは例えば、いくつかの数字や文字などを見せて、その直後に思い出せるそれらの数字や文字の数が7つであるということを指します。この記憶範囲は、その文字や数を意味のあるかたまり(チャンク)にすることで増やすことができますが、やはり7±2が限界だそうです。

これを用いて、例えば会社が商品の説明をするときにセールスポイントをいくつも並べても、人は覚えられないので意味がありません。最も言いたいことだけを、5〜7個に絞ることで、消費者の記憶には残るでしょう。9というのは限界ぎりぎりなので、避けたほうがいいとは思います。また、4つや5つに絞ってしまえば記憶しやすいだけでなく、説明される側も分かりやすいと感じます。情報がどうしても多すぎる場合は、2つに分類すればそれは2つのチャンクとなり、記憶できる、ということになります。その他にも、記憶するための工夫としては、何度も思い出すリハーサルや、自分に何か関連付けて覚える事故関連付けなどがいいと言われています。(SS)

  

機械的暗記(rote memorization>

 日常的な言葉で言うと丸暗記。私たちは、意味を持つものを記憶する場合にはその意味を使ってよりしっかりと記憶することができる。例えば、(り、ん、ご)という3つの文字を記憶する場合、その3文字を果物のりんごとして記憶することによって覚えることも、思い出すことも簡単になる。しかし、意味を持たないものを記憶する場合には、(りんご)の時のような方法で記憶することはできない。例えば、(ら、ま、め)という3文字を記憶する場合には、そこに何らかの意味を見出すのは難しいため(ら、ま、め)という文字をそのまま暗記しなければならない。このように意味のないものをそのまま記憶することを機械的暗記という。(HT)

  

機械的記憶(rote memorization>

 意味を考えることなく、繰り返しと再生によって記憶することを機械的学習といいます。心理学では、無意味つづりという実験が行われています。ドイツの心理学者・エビングハウスが行ったこの実験は、意味のない単語、例えば「あた」、「めお」などを繰り返すことで記憶していくものです。この機械的学習による記憶を機械的記憶といいます。私たちは何かを記憶する際、意味付けをします。birdという英単語を覚える時、「鳥」という文字や鳥の姿を、b・i・r・dというつづりの並びと結び付けます。しかし、機械的学習ではこうした結びつきは生じません。例えば、毎日通る通学路があるとします。友達と話をしていたり、急いで走っていたりと、周囲の風景に気を留めることはあまりありません。しかし、何週間、何ヶ月と通り続けていると、意識しなくてもどこにビルがあり、どの辺りに交差点があるのか覚えています。これが機械的記憶です。(HU)

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記憶には、丸暗記といわれる機械的記憶と意味や内容を理解して覚える論理的記憶の二つがあります。機械的記憶の例をあげるなら「かけ算九九」を覚えたときの記憶方法がそれにあたります。

皆さんは「九九」を覚えた際に声に出したり、書いたりしてまるで機械のように「くり返す」ことで記憶したと思います。また一気に大量に記憶できないので、「小さく区切る」(二の段、三の段と分ける)ことや「リズムにのせて」(ニニンガシ、ニサンガロクなど)覚えたと思います。ただこの「ニニンガシ」という言葉には、何の意味もなくそのまま丸暗記しています。だから「無意味記憶」と言われることもあります。

人の脳は学習する内容が難しくなればなるほど、機械的記憶だけでは記憶できなくなります。そのため小学校低学年から中学1年の時期には、機械的記憶を最も得意としていますが大きくなるにつれて1つ1つの意味や内容を考えてから覚えようとする、意味的記憶へと移り変わっていくのです。(YM)

  

逆行干渉(retroactive interference>

 逆向抑制とも言います。これは「忘却」つまり「忘れること」の主な原因の1つです。例えば、社会の勉強をしてせっかく覚えたことが、次に理科の勉強をした後には忘れてしまうことがあるでしょう。これは後の勉強(ここでは理科)で覚えたことが、先の勉強(社会)で覚えたことを忘れさせてしまっているからです。すなわち、逆向干渉とは後続の勉強(理科)によって、先の勉強(社会)が干渉、つまり妨害されることを言います。この妨害は、2つの学習の間が短かったり、覚えることが似ていたりすると大きくなります。また特に後の勉強の方が覚えることが多ければ、先の勉強は大きく妨害されます。ちなみに、この反対に先の学習が、後の学習を妨害することを「順向干渉」といいます。(HH)

  

逆行抑制(retroactive interference>

逆行抑制とはある事柄についての記憶がその後に経験した事柄の記憶によって干渉、邪魔を受けることです。例えば友達Aさんが引越しをして電話番号が変わったします。そしてあなたは新しい電話番号を覚えました。するとあなたは古いほうの電話番号をなかなか思い出せなくなるでしょう。これはどうしてでしょうか。それは「友達Aさんの電話番号」という手がかりを使って古い電話番号を思い出そうとしてもこの手がかりは新しい方を先に思い出させてしまい、その結果、古いほうの電話番号を思い出すことを邪魔してしまうのです。もう一つ、実験を例にあげましょう。二人の学生に同じ内容の複数の単語を暗記してもらい、一人は睡眠をとり、もう一人はずっと起きていてもらいました。その結果、起きていた人のほうが睡眠をとった人よりも多くの単語を忘れていました。これは起きているときのほうが寝ているときよりも刺激をたくさん受け記憶が増えるために、暗記した記憶に、より多くの邪魔が生じた結果だといえます。このように後からの記憶によって前の記憶が薄れてしまうことを逆行抑制といいます。(KH)

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 「逆向抑制」とは、人の忘却のしくみに関係する言葉です。日々の生活の中で、ちゃんと暗記したつもりでも、忘れてしまうことがありますね。これは、前々からあった記憶が新しい記憶を妨害するためか、新しい記憶がそれまでの記憶を妨害しているために起こります。このように記憶同士が互いに妨害しあう現象を「干渉説」といいます。中でも、新しい記憶によって古い記憶が妨害されることを「逆向抑制」といいます。例えば、いくつかの単語を覚えた後、意味のない数字を復唱するという作業をしてみると、意味のない数字を覚える作業をしなかったときよりも、覚えている単語の量が少なくなるでしょう。これは「逆向抑制」の働きによるものです。この反対に「順向抑制」というものもあります。これは、以前に記憶した情報が、その後に提示した情報に干渉をしてその情報の記憶を妨害するというもので、逆向抑制とは反対の働きを言います。逆向抑制をわかりやすく表すと【前の記憶←じゃま(干渉)←新しい記憶】となり、順向抑制を同じように表すと【前の記憶→じゃま(干渉)→新しい記憶】というようになります。私たちの記憶、忘却のシステムにも様々な働きがあることがわかります。(YN)

  

「ク」

具体的操作(concrete operations>

  具体的操作とは、具体的な場面や実際的な課題における対象について、見かけに左右されずに論理的な考え方をすることをいいます。

  ピアジェという人の思考発達段階説というものによると、人の知能の発達は4つの時期に分けられます。1つ目は感覚運動的知能期(0〜2歳)、2つ目は前操作期(2〜7歳)、3つ目は具体的操作期(7〜12歳)、4つ目は形式的操作期(12〜13,14歳)です。

  ここでは具体的操作期に注目して考えます。この時期には、子ども達はある程度論理的に考えられるようになります。ただし、具体的に目の前にあるものに限ります。例えば、1リットルの水を平べったい容器に入れた場合と、ペットボトルに入れた場合、これ以前の段階の子どもは、これが違う量として判断してしまいますが、具体的操作期の子どもは同じ量として判断できるのです。しかし、目の前にないものを論理的には考えられません。「もし〜ならば〜である」といった仮定的なことや抽象的なものは扱えないのです。(TY)

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 ピアジェ(J. Piage, 1896-1980)は、子どもの知的面の発達の過程を大きく4つの段階に区分しました

1.感覚運動期(0〜2歳前後)

2.前操作期(2〜6歳前後)

3.具体的操作期(6〜11歳前後)

4.形式的操作期(11歳〜成人)

このうち、6〜11歳前後の具体的操作期にあたる子どもの思考の特徴を「具体的操作」と呼びます。

 具体的操作期では、数や長さ、質量などの保存の概念を身に付けること、部分と全体の関係を理解することやまとめること、また、他人の視点にたって客観的にものごとを考えること、などの具体的な場面や実際的な課題における対象について、見かけに左右されずに論理的に考えたりすることができるようになります。

 例えば、同じ容量だけ入る容器ならば、水面の高さが違っても同じ量の水が入っていることが分かります。

 しかし、眼の前の具体的なものを直接操作することによって考えることができるのであって、抽象的や一般的な形で考えることはできません。(KM)

  

「ケ」

形式的操作(formal operations>

ピアジェという心理学者は、知能が発達していく段階を6つに分けて考えました。その6番目の段階で、およそ11〜12歳になった子どもが、大人の思考形態に達した状態を形式的操作段階といいます。形式的操作とは、「複数の命題の関係理解」のことです。例えば、形式的操作の思考をみる検査に、次のようなものがあります。子どもには振り子が与えられ、何が振り子が前後する時間の変化を決めるのかを発見するよう指示されます。つるす重りを変えてみたり、ヒモの長さを変えてみたり、子どもは色々と試すでしょう。形式的操作段階にある子どもは、重さが変化を決めていると推理したならば、重り以外の条件は一定にし、重りだけを変えて調べてみて、その変化が影響を与えないと分かれば、また別の条件だけを変えて調べてみようとします。そのように、すべての可能性を考えながら、仮説、結果を導いて肯定や否定をする思考を、形式的操作というのです。(AN)

  

系列位置曲線(serial position function>

皆さんは、古今東西というゲームをしたことがありますか?最初の人が「りんご」、次の人は「りんご、みかん」、その次の人は「りんご、みかん、バナナ」というように、前の人が言った言葉に重ねてどんどん単語を言っていくゲームです。皆さんはこのゲームのとき、最初のいくつかと、直前の人が言った言葉は覚えているけど、真ん中がさっぱり思い出せない、といったことはありませんでしたか?このように、覚えようとした単語の位置(最初の方とか、真ん中とか)によって、思い出しやすさが異なることを、系列位置効果といいます。

「かばん、花、学校、車・・・」など、10から20個の単語を、一定の間隔を空けて読み上げた後、その単語を思い出せるだけ思い出すという実験があります。すると、最初の方と最後の方の単語がよく覚えているという結果になります。単語の位置によってどのくらい思い出しやすさが違うかをグラフに表すと、真ん中がへこんだUの字型のグラフになります。このグラフのことを、系列位置曲線といいます。

最初の方の単語が思い出しやすいことを初頭効果といい、最後の方が思い出しやすいことを、近親性効果といいます。初頭効果は、まだ頭の中が真白な状態のときに単語が入ってきて、頭の中でその単語が繰り返され、しっかり覚えることができるからです。これは長い間ものを覚えていられる長期記憶という記憶に関係しています。また、近親性効果は、はついさっき聞いたばかりだから覚えているということです。これは、ほんの短い間しか覚えていられない短期記憶という記憶に関係しています。系列位置曲線は、記憶が長期記憶と短期記憶の二つから成り立っていることを示しています。(SI)

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以前、マジカル頭脳パワーというクイズ番組で「おぼえてしりとり」というコーナーがあったのを覚えている人はいますか?単純にしりとりをするのではなく、挙げられた言葉の全てを列挙しながらしりとりをしていくというものです。解答者の間違い方は、不思議なことに似ていて、普通に考えれば最初のほうの言葉のほうが思い出しにくそうですが、多くの解答者は途中の言葉が思い出せなくなるのです。逆に言えば頭とお尻の言葉は忘れにくい、覚えやすいということになりますが、これを系列位置効果と呼びます。

ある実験によって、上に述べた現象についての研究がなされています。この実験は単語を用いて行われましたが、示された思い出しやすさのグラフは、最初のほうと終わりのほうに提示された単語のほうが想起(思い出し)しやすく、中盤の単語は想起しにくいという結果から、真ん中がへこんだU字型のものでした。このU字曲線のことを、系列位置曲線と呼びます。

 さて何故このようになるかということですが、それは人間の記憶の仕方には二つの方法があるからです。一つは短期記憶、そして、短期記憶を繰り返すことによって可能となる長期記憶です。最初のほうの単語を覚えやすいのは初頭効果と呼ばれますが、覚えることが少なくてよいため頭の中で何度も復唱することが可能で、長期記憶になりやすいからだと考えられます。また、終わりのほうの単語を覚えて置きやすいことは近親性効果と呼ばれますが、時間的に直前のことなので、短期記憶として保持しやすいからだと考えられます。

 このメカニズムを知ると、例えばテスト勉強でギリギリまで暗記をするのも、無駄な抵抗とは言えなくなるかもしれません。とはいえ、しっかり長期記憶に保存しておいたほうがいいのはもちろんです。(KJ)

  

限界容量モデル(limited capacity model>

人が物を見てそれが何か判断をする、つまり注意をする時、一定の時間の中で分かる情報の量には限界がある、という考えのことを限界容量モデルといいます。

注意資源、という考え方があります。いくつかのことを一緒にやるのは困難ですよね。これは、人が注意をするときには、全体の量が決まっている資源を使っていて、沢山のことをするにはその資源が足りなくなってしまうからなのです。

つまり、人は注意資源がある分しか注意をすることができません。そのため処理できる情報の量に限界が出来るのです。

たとえば、1ホールのケーキの大きさは決まっています。ケーキは食べてしまえばなくなってしまいます。全体のケーキの大きさが限界容量で、ケーキは注意資源、それを食べることは注意をすることとたとえられますね。ケーキは、1ホール食べてしまえば無くなり、注意資源は限界容量の分、注意すればなくなってしまいます。

しかし、これとは反対に、一定の時間の中で分かる情報の量に限界はないという無限容量モデルという考え方もあります。この場合、すべての情報は同時に処理されるということになります。ケーキは無限にある、ということですね。(TK)

  

言語相対性(linguistic relativity>

 言語相対性理論というのは、私たちのものの考え方や文化と言葉の関係についての仮説で、アメリカの言語学者であるサピアとウォーフによって発表されました。 この仮説の解釈の仕方は2通りあって、1つは「強い仮説」と呼ばれ、もう1つは「弱い仮説」と呼ばれています。

 強い仮説の考え方は、言葉が私たちのものの考え方や見え方を“決めている”というものです。この考え方によれば、私たちが見ている世界は、私たちが使っている言葉によって変わるというのです。例えば、昔の日本語には唐紅(からくれない)という、赤の濃い色を表す名前があります。この言葉を知らず、赤という言葉しか知らない人には、唐紅という色と赤い色の区別は出来ないというのです。ですが、私たちは唐紅という言葉を知らなくとも、赤の中にも様々な濃さの色があることを知っています。このことから、強い仮説は今では否定されています。

 弱い仮説の考え方は、言葉の種類が私たちの考え方に“影響を与えている”というもので、現在はこちらの説が有力です。

 しかしどちらの解釈についても、この説が正しいと証明できる確実なデータは全くといっていいほど得られておらず、まだまだ課題は多いようです。(YO)

  

「コ」

コネクショニズム(connectionism>

認知心理学におけるコネクショニズムは、近年の人工知能研究において現れた用語である。近年の人工知能研究は、研究開始当初主流であった記号主義に対して、神経回路網モデルやPDPモデルがさかんになってきている。こうした立場では、処理単位としての記号を直接扱うことなく、ニューロンに対応するユニットの興奮状態と結合関係によって心的過程をシュミレートしようとしている。こうした立場は心理学者ゾーンダイクの結合主義と類似しており、そのためコネクショニズムと呼ばれる。(KA)

  

「サ」

再生 vs 再認(recall vs. recognition>

 再生と再認という用語は似たような意味をもつため、認知心理学ではしばしばセットで現れます。

 再生とは経験したことをそのまま思い出すことで、再認とは問われたものが経験したことであるかどうかを確認をすることです。一般的に再生することよりも再認することの方が簡単である、といわれています。

 たとえば、「あなたは昨日の夕食に何を食べましたか?」と聞かれると答えるまでに少し戸惑ってしまうのではないでしょうか。しかし、「あなたは昨日の夕食にカレーを食べましたか?」と聞かれた場合は前の質問に比べてすぐに答えることができると思います。

 また、テストで単語の意味を書かせる問題よりも、選択肢の中から単語の意味を選ぶ問題の方が簡単であるという経験をしたことがあると思います。これも再生より再認が簡単であるという一つの例です。

 最近のパソコンや携帯電話などではコマンドを入力して機能を呼び出す代わりに、機能をメニューから選ぶようになっています。これは再生より再認が簡単であるという考え方を用いて設計されているからです。このような場所に再生と再認の考え方が使われています。(HY)

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 再生と再認の違いは何でしょうか。どちらも記憶と言う人間の重要な機能の一つの最終過程です。つまりものごとを覚えるというとき、人は何かただ物理的に存在するものを意味を持って知覚します。そしてそれを頭の中に蓄えておきます。そうして必要なときに思い出してみることができます。この一連の働きが記憶です。思い出すときには二種類の思い出し方があります。それが再生と再認です。例えばテストのとき私たちは教科書などに書いてある文字、これは単に紙の上に黒いインクがのっているにすぎませんが、それを日本語の文章として意味あるものに捉えて、頭に残そうとします。そしていざテストのときに単語の穴埋め問題が出ました。このときある問題は記述式の穴埋め、もう一つの問題は選択式の記号問題でした。前者の問題で頭から思い出そうとすることを再生、後者の問題で答えに合うものを選択肢の中から見て思い出していくのが再認です。一般に再生よりも再認のほうが簡単です。パンダの似顔絵を書いてくださいと言われたとき、口が黒かったかどうかは迷う人が多いでしょう。しかし、パンダの写真を見たときパンダだとわからない人はほとんどいないはずです。年齢による差について述べますと、再生能力は加齢とともに落ちていきますが、再認に関して差はあまり見られません。これらが再認と再生の違いです。(KR)

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 Recall(再生)とは何のヒントもなく自力で思い出すことです。それに対してRecognition(再認)は以前見たものを再び確かめることです。よって例えば先生から質問をされたとき何も見ずに答えられれば再生が行われたことになり、答えられず解答を聞いて思い出したら再認ということになります。 再生には2つのメカニズムがあり、それは慣れと検索です。見慣れない物はそれだけで印象に残りやすく、思い出しやすいのですが、見慣れた物は刺激がないため他の情報も頼りにしながら思い出します。

 再生と再認の関係からみてみると、例えば単語を覚える際珍しい語はよくみかける単語より再認されるけど、再生されることは少なかったという結果があります。

 通常一般的に、再認は再生より行われやすいようです。(TT)

  

作動記憶(working memory>

working memoryは、作動記憶と訳されます。すなわち、頭で「作業」するときに必要な「記憶」です。私たちが、計算・読解などの複雑な仕事を頭のなかで行うときには、必要とされる情報をどこかに記憶する必要が起きます。たとえば、私たちが暗算を行うとき、「記憶」をどのように利用しているのかについて考えてみましょう。ためしに、35×8という計算を、暗算してみてください。

今、頭の中には

●与えられた、「35」「8」という数

●問題の「×」という要求

●「8×5=40」「8×3=24」という計算するための要素

といった情報が一旦記憶され、それを使うことで計算をしたと思います。このような記憶が、ワーキングメモリー(作動記憶)です。つまりワーキングメモリーは、必要な情報を書き込む、保存する、あとで確認できる、という三つの働きを持ったメモのようなものです。ところで、さきほど指摘したような情報は、作業で利用した後はすぐに忘れてしまいましたよね。このような情報は短期記憶と呼ばれます。つまり、作動記憶とは、「短期記憶を一時しまっておき、また思い出すことを可能にする貯蔵システムである」と言えます。(SY)

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 作動記憶とは、短期記憶に代わるモデルとして提出された、課題遂行中に一時的に利用されるタイプの記憶のことを言います。

 作動記憶は音声、言語情報を扱う音韻ループ、視空間情報を扱う視空間スケッチパッド、これら2つを統制すると同時に課題遂行のための活動を担う中央実行系から構成されると言われています。音韻ループまたは視空間スケッチパッドでは情報の取入れが行われ、中央実行系が課題の経過を見ながら、どの記憶または作業へより多くの注意を払うかを調整します。

 作動記憶の例は、私たちの日常の中から容易に探すことができます。例えば、私たちが数学の問題を解こうとする場合、問題中に「定数Kは…」という説明が入っていたとすれば、私たちは、Kが定数だということを一時的に記憶して問題を解かなければなりません。また、公衆電話を使う場合には、電話番号を暗唱しながら、テレフォンカードを取り出し電話をかけなければなりません。このように作動記憶とは、短期記憶のように記憶自体を目的とするのではなく、目標達成のために記憶を道具として用いる場合に使われる概念です。(HT)

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作動記憶とは短期記憶の考え方を発展させたものである。

「短期記憶が情報の貯蔵機能を重視したものであるのに対して、作動記憶は会話・読書・計算・推理など様々な認知機能が働いている間に情報がどのように操作される変換されるかといった処理機能を重視する。

例えば最初にあって名前を聞いた直後にその人の名前を思い出すことができれば、それは作動記憶の1つであり、二度目に会ったときにその人の名前を思い出すことができればそれは長期記憶の1つである。(OC)

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 作動記憶とは、必要な情報を「一時的に保持」し「操作する」機能で、計算・判断・推論・思考・など様々な認知活動の基礎となるものです。つまり、日常の生活の中で少しだけ記憶に留めておき、計算・行動などが終わると忘れてしまう記憶のことです。

例えば、カップラーメンを作り、3分待っている間にテレビを見ているとします。テレビを見ている間、ラーメンを作っていることは記憶しています。他にも、会話などで、相手の会話の内容を全てではありませんが、ある程度覚えておかなければ会話はできません。このように私たちは日常の生活の中で活発に作動記憶を使っているのです。

これと同じように短期間記憶する短期記憶というものがありますが、それとの違いは、短期記憶は一定時間保存されて、その中の一部は長期記憶になっていくのですが、作動記憶はその場が終われば消滅してしまうというものです。この作動記憶はすぐに消滅してしまいますが、言語理解や推測などの認知機能の重要な基礎であると研究されています。そのため、作動記憶を活性化させることは、ちょっとした物忘れを解消する大きな役割を持っているかもしれません。(AG)

  

「シ」

視覚心像(visual imagery>

視覚心像とは、心の中にある写真のような視覚的イメージのことです。私たちは、何かを考えるときには必ず、この視覚イメージを使っています。例えば「あなたの家の窓はいくつありますか?」と質問をしたとします。すると、おそらく全員が、心の中で視覚的イメージ(自分の家の風景)を思い浮かべて窓の数を数えると思います。これは、過去の記憶を視覚的イメージによって思い出しているのです。

また、これから何が起きるかを予想するときにも視覚イメージを使います。例えば、「今日の夜ご飯は何を食べようか?」と考えるときには、それぞれ心の中で料理を視覚的に思い浮かべます。

ほかには、物の変形・移動をしたらどうなるのかを実際にやっているかのように視覚イメージを思い浮かべ、操作しています。例えば、立方体の展開図に対して決められた2つの辺が、実際に組み立てると重なるかどうか?を心の中で視覚イメージを変形・移動することによって理解できます。(HM)

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視覚心象とは心の中にある、視覚的なイメージのことです。我々が何か思い出したり、考えたりする時必ず、心の中でイメージを描いて考えています。たとえば、立方体の展開図を考えたり、するときは頭の中で展開していきますし、逆に展開図からそれがどんな図形か考える時心の中で、視覚的に組み立てます、心の心の中に目があるイメージです。

また、何かを何かを思い出すときも必ず心の目で考えている。人に道を教える時、その場所を実際に歩いていなくても、視覚的に地図を描き人に説明します、このように視覚心象は日常生活でもよく使われているのです。(OC)

  

自然概念(natural concepts>

natural categoryとは、「自然概念」と訳され、人間が生れつきもっている複合的で曖昧な判断・考え方のルールです。

例えば、此処に桐と檜があるとします。桐という名前、檜という名前、そして木という分類、それらを全て知らなかったとしても桐と檜が「同じようなもの」という判断が出来るはずです。これが自然概念です。

ところが、これとは別に明らかな判断・考え方のルールである人工概念というものもあります。この人工概念では、桐はゴマノハグサ科の「草」、檜はヒノキ科の「木」というように明らかな分類を与えられます。(KT)

  

自伝的記憶(autobiographical memory>

自伝的記憶とは、それまでの生涯を振り返って個人が再現するエピソードのことをさします。それは個人的な体験に基づく記憶であり、例えば、子どもの頃震災に罹災した、今朝何を食べたか、夏休みに旅行してどこに行ったか、などです。自伝的記憶の機能としては、自己機能、社会機能、指示機能の3つの機能が挙げられます。自己機能は人間に自己の一貫性を与えます。この機能により人は「現在まで成長質し続ける自分」を認識することができます。社会機能は、会話に自分の体験を盛り込むことで人を楽しませたり、何かを教えたりできる機能です。また、集団で同じ記憶を共有することでメンバーの親密度を高めたり、集団の動機付けが高まる効果も報告されています。指示機能は自分の態度や価値観や動機付けを再確認するための機能です。たとえば、過去の失敗から教訓を得て将来に生かす、ある経験がきっかけで将来なる職業を選択する、などです。(SH)

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・今まで生きてきた中で1番心に残っている経験は何ですか

・子どものときの思い出を教えてください。

 あなたはこのような質問に答えることができますか?そのときに必要となってくるのが「自伝的記憶」です。

記憶にはいくつかの種類がありますが、このように過去から現在までの生涯を振り返って思い出される、自分自身に関する情報や出来事の記憶のことを自伝的記憶、または自分史ともいいます。これらの記憶は意図的・無意図的に関わりなく、何度となく思い起こされます。

 自伝的記憶は自分とは関係ない社会的な出来事の記憶と比べると個人的な意味や強い感情を含んでいて、アイデンティティ(個性)と密接に関係しています。時間は過去から未来へと一方向に流れているけど、その時間の流れの中で私たちの心の中に生み出される過去の記憶、現在の認識、将来に関する展望は互いに影響しあっています。過去の記憶は現在の認識や将来の展望に影響を与え、現在の認識は過去の記憶、将来の展望に影響を与え、同じように将来の展望は現在の認識と過去の記憶に影響を与えているのです。(KM)

  

自動化(automatization>

 自動化とは、一般的に人手をかけず、機械が処理する方式に変えることをいいます。人間は完璧に行動することはできません。人の行為がその時の状況にふさわしくない場合、それはヒューマン・エラーと呼ばれます。たとえば車の運転中、居眠りをしてしまうのは状況にふさわしくありません。これがヒューマン・エラーです。この為、人がする作業を機械にさせる場合が生まれます。

 人は何か行動する時、情報処理を行っています。ただ歩くだけでも、両足は交互に動かす、道の状態・障害物の有無を確認など多くの情報を整理して成り立っているのです。こうした情報量は行動の種類によって異なりますが、情報処理にはそれに対する注意が必要になります。

ある課題の情報を繰り返して行えば、その行動に関する情報量が変わらなくても、注意は減少させることができます。たとえば車の運転、特に乗り始めたばかりでは、大変注意を必要とします。しかし、何度も運転をするうちに、人と話しながらでも運転することができるようになります。つまり「慣れ」です。私たちの生活の中には、このような行動が多く見られます。これは自動処理と呼ばれます。(HU)

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 皆さんが自転車に乗れるようになった時を思い出してください。最初は前を注意しようと思っても思うように注意できず、何度も転び、よろよろしながら少ししか進めなかったはずです。しかし乗れるようになった今では、何も考えることなくいくらでも走ることが出来るようになり、もしかしたら片手を離して傘をさしたり携帯電話で話しながら走る事だって出来るようになっているかもしれません。

自転車だけに限らず、私たちの生活は様々な作業の組み合わせで成り立っています。この様々な作業をまるで作業を機械で処理しているようにすばやく、意識することなく簡単に行えるようになる事を自動化といいます。

 この自動化は知識や技能を学習によって身につけることによって起こります。つまり、慣れない作業でも何度も何度もくりかえし行うことによって、その作業をする効率がどんどん上がり、ついには無意識で行えるようになるという訳です。ですから、もしあなたに苦手なことがあったとしたら、何度でも何度でもくりかえし挑戦してみましょう、いつかは無意識にでも出来るようになっているはずです。(OM)

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もともとは自分で意識的に注意することが必要だった反応が、習慣化されることを自動化といいます。ピアノの演奏の練習をしている時のことを例に挙げて説明します。初めて練習する曲を弾く時には、集中して楽譜を見て、指の動きを何度も意識的に確認したりしながら演奏をしますが、練習を重ねていくにつれて楽譜を見なくても弾けるようになったり、話しをしながら演奏することだって可能になっていきます。このように、活動に意識的な制御がほとんど必要なくなる状態を、自動化というのです。(AN)

  

自動的符号化(automatic encoding>

 人の記憶は、(覚える・覚えておく・思い出す)の3つの段階から成り立っているが、その一番最初の段階である「覚える」という作業のことを符号化という。自動的符号化とは、この符号化という作業がやろうとしないのに勝手に起こってしまうこと、つまり覚えようとしていないのに覚えてしまうことである。例えば、学校で今日の朝ご飯が何だったかということを話す場合、多くの人は朝ご飯を食べているときに覚えようとしていたわけではないのに、何を食べたか簡単に思い出せるはずである。このように自動的符号化は、記憶のあとの2段階である覚えておく・思い出すと結びつくことによって自分でも知ることができるが、自動的符号化だけが起こって、覚えておく・思い出すの段階へと結びつかない場合には知ることができない。(HT)

  

自由再生(free recall>

フリーリコールとは、フリーは自由、リコールは思い出す、ということで、順番などといった約束事なしで自由に思い出すことを言います。専門的に言えば自由再生と言います。自由再生が実際どういうものなのか、よりわかってもらうためにこれを利用した実験方法を紹介します。記憶に関する実験方法に再生法というものがあります。そしてこの再生法は自由再生法と系列再生法に分けられます。自由再生法は特別な条件をつけないで思い出すまま自由に再生(思い出す)方法であり、系列再生法は順序通りに思い出させる方法です。たとえば実験参加者に「電車、時計、本屋、鉛筆」という言葉を一つずつ見せて、その後に「電車、時計、本屋、鉛筆」という風に思い出させるのが系列再生、「時計、鉛筆、電車、本屋」という風に思い出すままに思い出させるのが自由再生、というものです。身近なものでいうと、クラスの子の名前を挙げていくときに、名簿順に思い出して挙げていくのが系列再生、思い浮かんだ順に挙げていくのが自由再生といえばわかりやすいでしょう。(HK)

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『自由再生』とは、ある情報を学習したあとで、それを自由に思い出してもらう(思出すこと、つまり再生です)という課題の一つです。例えば、意味に全く関連のない10個の単語(ケーキ しまうま ベッド ラーメンetc.)を覚えたあと、ここにかかれている順番に関係なくとにかく思い出してもらうというのが自由再生実験です。この自由再生実験で分かることは、一般的に、単語リストの最初のほうと最後のほうを思い出しやすいということ(これを系列位置効果と言います)です。逆の言い方をすれば、私たちが学習するときにはその範囲の中程で学んだことをあまり覚えていないことが多いということなのです。これを解決するためには、覚えるときにその単語たちをある決まりに従って自分の頭で整理することがポイントです。先の例では、ケーキやラーメンなどの単語が提示されているので、「食べ物」という枠で覚えたりするなど、自分の覚えやすい方法でカテゴリーごとに分類して頭に入れることが思い出すときには役に立ちます。(TH)

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フリーリコール(freerecall)とは、日本語では自由再生と訳します。Freeは皆さんも分かるとおり、自由という意味です。ここでの自由とは、順番や規則などに縛られないことです。Recallとは、認知心理学において、再生と訳します。認知心理学では記憶の過程を〈記名→保持→再生〉に分けてみています。これは、人間の脳の処理をコンピュータの情報処理過程のように置き換えているのです。コンピュータは、私達が打ち込む情報をコード化(記名):コンピュータの中で処理できる暗号にかえ、それを貯蔵(保持):ハードディスクなどに情報を保存し、検索(再生):再び、その情報を呼び出すことができますよね。人間において検索(再生)作業は、簡単に言えば「思い出す」ことです。

自由再生とは、いくつかの単語などを覚えた後に、順番などの規則にとらわれず、覚えたものを出来るだけ多く上げていくという、記憶実験の一つの方法です。これに対して、覚えた順番通りに思い出す方法が系列再生法です。たとえば、動物園を回ったときに、「まわった順に動物を上げていってください」というのが、系列再生。「とにかく見た動物を出来るだけたくさん上げてください」というのが自由再生です。しかし、順番を無視しているにもかかわらず、実験では、初めと終わりの数個が思い出す確率が高いという結果が出ています。(EM)

  

状態依存記憶(state-dependent learning>

状態依存記憶とは、ある心理的、あるいは身体的状態で記憶したことは、同じ状態の時に最もよく思い出せるという傾向のことを言います。たとえば、酒に酔った状態で隠した酒や金を、素面のときは見つけることが出来なかったのに、酔っぱらったとたんに思い出せる、というようなことです。イギリスで行われた有名な実験では、水中で覚えた単語リストは、水中で最もよく思い出され、陸上で覚えた単語リストは、陸上で最もよく思い出されるという結果が出ました。同じような効果は気分にも見られます。楽しい気分の人は快い体験を思い出しやすいのに対し、悲しい気分の人は不快な体験を思い出しやすい、という現象はこの効果によります。これは気分一致効果といいます。(SI)

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私たちはあることを思い出すとき、記憶したときと同じ状況化に置かれると、より思い出しやすくなります。これを状態依存記憶と言います。例えば運動中に覚えたことは、じっとしているときよりも、運動をしているときの方が思い出せるのです。なぜかというと、その状況下で引き起こされる感情やその状況自体が、符号化された情報を検索するときの手がかりとなるからです。(IT)

  

情報処理アプローチ(information-processing approach>

 入力されたいろいろな情報を操作して、操作結果を出力することを情報処理といいます。ここで、情報を見る・聴く・かぐ・触るといった感覚として考えると、人はこれらの情報を頭に取り入れて、何らかの判断をし、それをもとに行動したり、周囲に対して態度をとっていることになります。このことは、人が機械のように情報処理を行っていることと同じく考えられます。とりわけ言葉の情報を使った対話や会話などは、最も高度な情報処理です。

 このように、人が五感から感じ取った情報をどう頭の中で扱い、それをどのように行動に出すかという流れを、コンピュータが行う情報処理の流れと同じように考えるというのが、情報処理アプローチです。

 情報処理アプローチでは、感覚器から得た情報をどう判断するかということを「処理」、それらを覚えておくことを「貯蔵」といいます。(NA)

  

情報処理心理学(information processing psychology>

見たり、覚えたり、考えたりすることを認知機能と呼びます。認知機能は頭の中でおこなわれていますので、それがどのようになっているかを外から観察したり、コントロールすることができません。したがって、観察できることに研究対象を限定した、行動主義心理学では、研究の対象からはずされてきました。

60年代から、人の頭の働きを、コンピュータがおこなう情報処理になぞらえて考えてみようという、情報処理心理学が登場してきます。

たとえば、自動販売機(コンピュータの一種)でジュースを買うとします。お金を入れてボタンを押すとジュースが買えます。この一連の過程で機械の中でおこなわれている情報処理と同じように、たとえば、人が本を読んで内容を理解し口に出す過程をとらえてみようとするのが、情報処理心理学です。

人の「情報の取り込み(符号化)」「加工」「情報の取り出し(検索)」はどのようにおこなわれているかが、主要な研究テーマとなっています。(KI)

  

初頭効果(primacy effect>

順番に沿ってあるものを覚えたり、思い出したりすることを系列学習といいます。この系列学習を行ったとき、順番が早いものの方が、真ん中に近いものよりも思い出しやすいことがあります。これが初頭効果です。

たとえば、紙に書かれた20個の単語を見た後、その紙を見ずに1から20までの順番にできるだけ沿って書き出してもらうとします。この時、1、2番目の単語はすぐ書けますが、9、10番目の単語はなかなか思い出せません。しかし、19、20番目の単語になるとまた思い出しやすくなります。順番が遅いものが思い出しやすいことは親近効果といいます。系列学習では最初と最後のほうが覚えている率が高く、真ん中の方ほどその率は低くなります。

何かを覚えようとする時、最初の方ほど「覚えよう」という意識が高く、印象に残りやすい為、初頭効果が現れます。逆に、親近効果は最後のほう、つまり新しい記憶である為、印象に残ります。ただ、初頭効果と違い、親近効果は時間が経つと薄れていきます。また、人に会う時、その人について最初に知った情報の方が、後で知った情報よりもその人の印象に大きく影響を与えます。これも初頭効果の一つです。(HU)

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 一連の物事を記憶しようとするときに、最初のいくつかの物事と、最後のいくつかの物事は、中間にある物事よりも記憶に残りやすい。これは、ある物事が記憶される確率は、その物事が一連の物事のうちのどこに位置するかに影響されるためである。この影響は、Uの形をしている。それぞれ、最初のいくつかの物事をよく覚えていることは、初頭効果、最後のいくつかの物事をよく覚えていることは親近性効果、と呼ばれる。 例えば、数個の英語の単語を1度ずつ聞いた後で、思い出した順に自由にもう一度思い出す(再生する)ように求められると、リストの最初にあった単語と最後にあった単語は、中央部の単語よりも再生されやすい傾向にある。この時、初頭効果の再生は、長期記憶に基づいている。長期記憶とは、情報を短くても数分間、長い場合は生涯にわたって残すことである。対して、親近性効果の再生は、短期記憶に基づいている。短期記憶とは、短期間しか情報を保つことのできない記憶組織の構成体のことである。(YM)

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例えば、古今東西ゲームで、「りす、ゴリラ、イノシシ…クマ」という様に覚えようとしたときに、途中の方で覚えた単語よりも、覚えはじめに覚えた単語の方が、思い出しやすいということがあります。つまり、10個の単語を順序良く覚えたとして、1個目や二個目の方が、5個目や6個目の単語より思い出しやすいと言う事がある。

このように順番よく覚えていくことを、系列学習と呼び、系列学習をグラフにしたもののことを、例列位置曲線と言います。真ん中が溝になった様なグラフになる。系列学習の最初の方に覚えたことが思い出しやすいことを、初頭効果と言います。また、逆に覚えたばかりの単語の方が思い出しやすい事を、親近効果と言います。

では、何故初頭効果や親近効果が現れるのか?まず、初頭効果は覚えようと言う意識があるので、自発的に何度も繰り返す為、単語が長期的な記憶に保存される。数日から数年間、記憶が維持する。逆に、親近効果は真新しい記憶なので覚えている状態で、短期間しか持たないものの事である。(SR)

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 こんな実験があります。全くつながりのない単語を10個(例えば、りんご、バス、掃除機、休日…といったように)次々と聞かせていった後に、「今の単語を出来る限り思い出してください」と指示したところ、まんなかあたりで言った単語はなかなか思い出せませんが、最初の方に言った単語と最後のほうに言った単語は結構覚えていることが多くなります。このように、覚えようとした単語の位置によって覚えてる割合が異なる現象を「系列位置効果」といい、このうち、最初の方の単語が思い出しやすくなる現象を「初頭効果」と言います。

初頭効果は、最初に課題(ここでは、単語を覚えてもらうこと)を与えられた時に、頭の中がその課題に集中している所へ、初めて頭の中に入ってくるものなので印象に残りやすく、覚えている割合も高くなるため発生します。また、初頭効果は長期記憶と密接な関係があり、人間の記憶に長期記憶が存在することの証明にもなっています。(OM)

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「ごりら、手紙、ジュース、CD、本、カメラ・・・」のように、あるものを順番に覚えていくことを系列学習といいますが、この系列学習の際、最初と最後に提示した単語は良く答えられて、真ん中あたりに提示された単語はあまり答えられないという結果になります。このように、最初に提示されたものの方がよく思い出せること「初頭効果」といいます。

人の記憶には短期記憶と長期記憶というものがあります。短期記憶とは、電話をかける時に一瞬電話番号をおぼえることです。この場合電話をかけた後には、番号を忘れてしまいます。一方長期記憶とは、何度も同じ番号に電話を掛けていると、次第に覚えてしまうといった記憶です。人は何かを記憶しようとするとき、短期記憶から長期記憶へと記憶を移していきます。特に、英単語などを記憶しようとするときには、リハーサルということをします。上の系列学習の例で言うとリハーサルとは、「ごりら、ごりら、ごりら・手紙、ごりら・手紙・ジュース、・・・」というように何度も繰り返して覚えようとすることです。初頭効果には、このリハーサルというものが関係しています。つまり、系列学習の際に最初に提示された単語は他の単語よりも多くリハーサルされ、短期記憶から長期記憶へと移行したので、思い出しやすくなっているということなのです。(IT)

  

処理フレームワークのレベル(levels-of-processing framework>

 「処理フレームワークのレベル」とは、何かを覚えるときに、その覚えようとするものの特徴によって同時にいくつかのレベルで覚えようとするということです。たとえば、目で見たことや、前から知っていることと関係することはより深いレベルで覚えようとします。

 この考え方は、長い間覚えておくためには別々のステージを使っているという考え方に代わるものとして、クレークとロックハートによって示されました。「処理フレームワークのレベル」は主に、言葉を覚えるときに使われるといわれますが、本を読んだり言葉の学習をするときにも使われるようです。(TT)

  

親近性効果(recency effect>

私たちは、日々身の回りで起こることを記憶というシステムによって頭の中に保存しています。そして、「思い出す」という形で、必要に応じてその記憶を呼び起こしながら、考えたり行動したりしていますね。この「思い出す」という働きについて考えてみます。

今、あなたが明日のテストのために30個の英単語を覚え、それを覚えているか確認するために思い出そうとしているとします。このときに、最後の方の29個目や30個目に覚えた英単語が、他の英単語より思い出しやすい、という経験をしたことはありませんか?これを親近性効果といいます。最後の方に覚えた英単語は、覚えてから思い出すまでにあまり時間がたっていないため、すぐに思い出すことができるのです。これは、人間の記憶のシステムのうち、短期記憶という仕組みに関係しています。短期記憶は、短い時間しか覚えていられず、時間がたつと思い出せなくなってしまうのが特徴です。そのため、もしあなたが英単語を暗記してからすぐに思い出そうとせず、数学の宿題をやってから思い出そうとしたとすると、親近性効果は消失してしまいます。

覚えてから思い出すまでの時間が短いのが短期記憶ですから、短期記憶で覚えていることのできる量に限度があることはわかりますね。ですからテストの時には、親近性効果に頼って直前にすべて覚えようとしても無理です。前々からこつこつ勉強して、長い間覚えていられていつでも思い出せるようにしておかなければなりません。こうした記憶のことを、短期記憶に対して長期記憶といいます。短期記憶は、何度も繰り返し覚えようとすることによって、長期記憶に変化させることができますよ。(NC)

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私たちは、一度にたくさんのことを見たり聞いたりしたとき、そのことを全て同じように覚えていられるわけではありません。

例えば、「時計、鏡、冷蔵庫、歯ブラシ、にんじん…」というように、10〜15個くらいの単語がひとつずつ書かれたカードを、一定の速さで順番に見せます。その後で、カードに書かれていた単語を、思い出した順に紙に書いてもらいます。このような実験を行うと、その単語を書いたカードが何番目に見せられたかによって、思い出しやすさに差が出てきます。このことを、系列位置効果といいます。普通、初めのほうに見せられた単語と、終わりのほうに見せられた単語が思い出しやすくなります。このように、初めのほうに見せられた単語が思い出しやすいことを初頭性効果と呼び、終わりのほうに見せられた単語が思い出しやすいことを親近性効果と呼びます。

系列位置効果は、折れ線グラフで表されることがよくあります。横軸を系列位置(上の例の場合なら、見せられた単語の順番)、縦軸を再生率(どのくらい思い出しやすかったか)とします。すると、初めのほうに見せられた単語は思い出しやすいので再生率は高くなり(初頭性効果)、中頃で見せられた単語になるにつれだんだん再生率が低くなっていって、また終わりのほうの単語になると再生率が高くなる(親近性効果)という、ちょうど真ん中がくぼんだグラフを描くことができます。(SM)

  

人工知能(artificial intelligence>

A.IはArtificial Intelligenceを略したもので、日本語では人工知能と訳されます。戦後、イギリスの数学者アラン・チューリングを先駆けに知的な機械の研究が始まり、1956年、アメリカのジョン・マッカーシーによってこう名付けられました。

一般に人工知能の研究は、2つの立場に分けられます。1つにはドラえもんのように、人間と同じ知能を持った機械を作ろうとする立場です。そしてもう1つの立場は、人間が知能を使ってしていることを機械にさせようとする立場です。例としては、1997年にチェスの世界チャンピオンを破った『DeepBlue』などのゲームプログラムが挙げられます。

現在の人工知能研究は人間の心の明らかになっている部分、つまり人間の「知的さ」を追求しています。これに対し、笑いやユーモアといった「人間らしさ」を感じさせるプログラムを創ろうと、人工無脳が開発されました。これは知能を持たない会話プログラムで、ゲームソフト『どこでもいっしょ』などにも使われています。(KH)

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 「人工知能」とは、人間が行っている知的な作業をコンピュータによって再現するものです。

「知的な作業」というのは、様々な情報を処理することです。例えば簡単な計算をしたり、与えられた問題の内容を理解し、推理や判断をしたり、知識を得てそれを整理することなどです。つまり、人工知能とは「人のように考える機械」を作ることを目的としていると言えるでしょう。

 今現在では、ゲームやパズルを解いたり、外国語の翻訳をしたりすることの出来るコンピュータが動いています。チェスの世界では、1997年にコンピュータが世界チャンピオンに勝ちました。また、人工知能の研究から派生して出来た、特定の分野の専門家の知識を土台にして、それから推論をすることにより問題を解決する「エキスパート・システム」というものも、社会で実用化されています。

 しかし、本当の人間の様に、感情を持ったり、乳児が自発的に様々な学習を品柄大人に成長するような、人間そのものと言えるような人工知能はまだ出来ていません。これについては、現在あるコンピュータでは限界があることが指摘されており、解決方法はまだ研究途中の段階です。(HT)

  

深層構造(deep structure>

深層構造とは言語学者、チョムスキーが考案した言葉で、すべての言語に備わっているとみられる基本的文法の普遍的な特性のことを指します。これと対比する語として表層構造という言葉があります。表層構造というのは、ある特定の言語が持つ文法の型と文章の構造のことで、その言語を他の言語と区別するものです。深層構造はすべての言語に共通な基本的原理なので、子供はそれを生まれながらに持っており、生まれたあと、周りから聞こえる言語の表層構造を解読するのに使います。

つまり「ありがとう」でも「Thankyou」でも英語と日本語という言語の違いはありますが、意味することは同じです。これは表層構造は違うが、同じ深層構造をもった文だということができます。どこの国でも、どんな文化をもった地域でも、感謝の気持ちは誰もが抱き、その感情は全世界共通です。ただ表す言葉が違うだけなのです。子どもは生まれた土地で生きていくためにその土地の言葉(表層構造)を学ばなければならないのです。

 このことは同じ言語の中でもあてはまります。英語を例にあげてみると、

@ Jane hit the boy.

A The boy hit by Jane.

この@とAの文章は、一方は能動態、他方は受動態というように一目見ると違う文章のように思えます。しかし、これらふたつの文の意味はまったく同じです。この文であれば、一見してわかる句構造が表層構造であり、ふたつで句構造が違っても意味は同じというのは深層構造が同じであるということができるのです。

 つまり、なにかものごとを人に伝える場合でも、伝え方(表層構造)は違っても、伝えたい内容(深層構造)が伝わればよいのです。「Janeが男の子をぶった」でも「男の子がJaneにぶたれたでも」同じ意味なのですから。(SA)

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 この言葉は、アメリカの言語学者、チョムスキーの考えた生成文法という理論の中に出てきます。チョムスキーは、人間が生まれてからわずか数年の間に無数の単語を組み合わせ、無数の文章を作り出すことができるのは、誰でも生まれながらにして言語を生成できるメカニズムを備えていると考え、このメカニズムのことを生成文法と名づけました。

 この考えによると、文章には2つのレベルがあり、実際に書かれたり話されたりして表面に出てくる表層構造のほかに、基底にある文章の意味を反映するレベルとして深層構造があります。

 例えば、「警察が泥棒を捕まえた」という文と「泥棒が警察に捕まえられた」という文は、表面的な文の構造は違いますが同じことを意味しています。つまり、この2つの文は表層構造は違いますが深層構造は同じなのです。また、「家の中を見てみたら、母は外出していません」のような文の場合、「母が外出して家にいない」という意味と「母は外出してはいなくて、家の中にいる」という意味の2つの意味を考えることができます。この場合、異なる深層構造を持つ2つの文が、たまたま同じ表層構造になったわけです。(SJ)

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チョムスキーは、ある言語の外に別の何かがあり、人がしゃべる言葉はすべてそこへもどして、あるいはそれと関係づけることによって説明するとしました。そして、彼はその何かを「深層構造」と名付けました。人の口から出る言葉は、単に表面に現れた現象であり、その基礎はすべて深層構造にあるとしたのです。つまり深層構造とは、実際にわれわれが読み、聞くことのできる文の背後に仮定された高度に抽象的な構造で、その文の本当の意味を決定するものです。彼の理論「変形生成文法」の中核となる考え方は、意味解釈を決定する深層構造と、音声解釈を決定する表層構造とは一般に別の物であり、深層構造に対し文法的変形と呼ばれる形式操作を繰り返し適用することで表層構造が決定される、ということです。したがって、みかけの構文が異なるのに意味のよく似た文や構文が同じなのに意味が違うような文が存在し、また私たちが理解できるのは、深層構造が存在しているからといえるのです。

 また彼は深層構造は人類共通のものでありあらゆる言語に共通しているとし、人類にとって普遍的な存在である深層構造を抑えれば、あとは変形の手法によって、どんな言語も説明できると考えたのです。そのためどんな子供でも、自然にその国の言葉を話せるようになるのは、深層構造をあらかじめ持っているからだと考えることができるのです。(YM)

  

心的イメージ(mental imagery>

 日常会話でよくこころに思い描く、頭の中で思い描くなどと言われるイメージは知覚体験とよく似た体験ですが、イメージは知覚のための適当な刺激がないときに起こります。

 例として実際にイメージを体験してみましょう。2本の平行に並んだ線分を思い描いてください。その2本の線分は垂直方向に向いています。次に、2本の線分のうち左の線分の上端と右の線分の下端を線で結んでください。今、あなたの頭の中に特定のアルファベットの大文字が描かれていると思います。これが、イメージです。あなたは‘N’という視覚刺激を受け取っていないにもかかわらず、頭の中に‘N’を思い浮かべました。

 私たちはイメージを過去に実際にあった知覚体験の再現であるように感じたり、望ましいもしくは恐怖となるような未来の体験を予期するようなものと感じたりします。したがって、イメージは記憶と動機づけの両方でとても大きな、中心的な役割を果たしていると信じられてきました。また、空間視覚に関する推論や創造的な思考にも深くかかわっていると一般に信じられ、すべての思考プロセスに決定的な影響を与えると考えられています。しかしながら、特に20世紀の間にイメージに対して異義を唱えられていた時代があり、現在でもイメージという言葉の確固たる定義はない状態です。(YT)

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私たちは、実際には対象となる視覚刺激が存在しないにもかかわらず、まるでその対象を見ているかのように思い浮かべることができます。この、実際にものを見ているときに近い心的な経験のことを、私たちはイメージと呼んでいます。

私たちは日常の中で、イメージをうまく使って生活していると言えます。たとえば、部屋の家具の配置を変えたいとき、実際に動かす前に、動かしたあとの部屋の光景をイメージすることがあげられます。このように、イメージするということは、それまでの経験で見てきたものだけでなく、それらを組み合わせたり、空間的に操作したりすることもできます。このことから、心的イメージは創造性の源泉だと言えるかもしれません。

また、イメージは記憶とも深くかかわっていると考えられています。例として、記憶の保持率とイメージに関するある実験によると、私たちが単語を記憶するときに、めがねやテレビなど実際に対象を見たことがある単語に比べて、努力や気合といった、形がなく、目で見ることのできない単語のほうが忘れやすいという結果が得られました。

以上のようなことから、イメージは、空間的な思考や創造的な思考、記憶能力など、私たちの思考プロセスに大きな影響を与えていると考えられています。(JY)

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 心的イメージはきわめて主観的であるためにその存在を他者に伝えたり、科学的に取り扱うことは困難で、行動主義心理学ではほとんど問題として取り上げられることはありませんでしたが、認知心理学の台頭に伴い問題視されるようになってきました。この心的イメージ、イメージとは何でしょうか。視覚的イメージとは物理的な対象が存在しないにもかかわらず、生じる擬似視覚的な体験のことです。ここでいう擬似視覚的体験はものを見ているときに近いような体験のことです。認知心理学で主に扱うのは記憶イメージや想像イメージであり、それらを称して心的イメージといいます。

 私たちはイメージを使っていろいろな利益を得ています。その例が、言語材料の記憶の際にイメージ化しておくと、イメージ化してないときに比べて、成績がよくなるということなどです。(NS)

  

心的回転(mental rotation>

人が物を見るとき、どのように見ているかを説明するのに心的回転(Mental rotation)という言葉が使われます。人は物を見るときその物を頭の中に思い浮かべて、それを回したりして同じかどうか考えます。

たとえば、ある実験で、図形を回して、違う方向から見たものか、鏡に映したようにまったく逆の図形を回したものか考えるというものがあります。このとき、回した角度が大きいほど分かりにくくなるということが分かりました。これは頭の中で思い浮かべたものを同じ速さで回してみて、同じかどうか考えているということを表しています。この実験をしているときに聞いてみたら、そうやって物を見ていると自分でも分かっている人もいました。

よって、物を見て頭で考えるときは本物の物を回してみるように頭の中でも同じように回しているといわれています。(TT)

  

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突然ですが、あなたがいつも使っているマグカップを思い浮かべてみて下さい。きちんと思い浮かべられましたか?次にそれを右回りに180°回転させて下さい。できましたか?最初に思い浮かべた時と比べ、マグカップの柄は反対向きに、取っ手も反対側になっているはずですね。

 今、あなたは絵に描いたわけでもないのに、きちんとマグカップを思い浮かべて、さらに回転させることもできたわけです。このように、何かの形を心の中でひとつの向きから別の向きへと回転させていくことを心的回転と呼びます。

さっき心の中でマグカップを回転させた時のことを思い出してみて下さい。「180°回転させて」と言われた時、いきなり180°ひっくり返ったマグカップが心の中に浮かびましたか?そうではなく、マグカップは30°,60°,90°,120°,150°,180°と少しずつ順番に右回りに回転していったはずです。これが心的回転の特徴です。心の中では、実際にマグカップをひっくり返す時と同じように、途中を飛ばさずに全ての角度を通って回転させていくわけです。つまり、180°回転させるには90°回転させる時より時間がかかることになります。(SK)

  

「ス」

スキーマ理論(schema theory>

人は新しい事柄を覚えようとする時に、自分の持つ知識の塊に関連づけて覚えます。この知識の塊がスキーマと呼ばれるものです。スキーマはそれぞれの人によって異なるので、同じ事柄や同じ話を聞いても、それについての理解の内容や、記憶の内容も人によって異なるのです。たとえば、巨人ファンの人は巨人のニュースをよく覚えているけれど、そうでない人はほとんど覚えていないといったことがよくあるはずです。スキーマの特徴をもとに、スキーマを情報処理のシステムとしてコンピューター上に表すという試みもなされています。例えば、レストランで食事をするということにかかわる知識を、客がレストランに入る、客がテーブルを探す、客がどこに座るかを決める、客がテーブルのところまで行く、客が座る、という具合にいくつかの場面ごとに、スキーマとしてコンピューターのプログラムに組み込みます。するとそのプログラムは、レストランで食事をするという出来事についての文を適切に細かくし、その要点をまとめることができるようになるのです。ここで、このようなプログラムは、大変すぐれたものだと思われるのですが、先にも述べた、人によってスキーマに違いがあるということが十分に考え合わせられていないという 問題点もあるのです。(MM)

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スキーマとは、私たち一人ひとりが独自に持っているイメージの塊のことです。人は新しい情報を自分の持つこのスキーマに照らし合わせて整理して覚えます。例えば、初めて食べたパンナコッタに対し、「プリンみたいな味がするなぁ」と思うことは、パンナコッタを自らの持つプリンというスキーマで捉えて整理していることになります。ある情報に対して強いスキーマを持っているほど、その情報を簡単に記憶から再生できます。プリンの好きな人ほど、そうでない人よりもおいしいお店の場所をたくさん覚えていられるわけです。人が持つスキーマはそれぞれ違うので、プリンを「冷奴みたいだ」なんて豆腐というスキーマで捉える人もいるかもしれません。すなわち行動や思考の個人差は、スキーマによって説明することもできるのです。しかし、あまりにも一般的なスキーマは、時として私たちの認識をも狂わせることを忘れてはいけません。イタリア人がみんな軟派なわけではないし、政治家がみんな腹黒いわけでは・・多分言い切れません。これは「ステレオタイプ」とも呼ばれる、偏見の一つです。(AG)

  

ストループ効果(Stroop effect>

ストループ効果とは、色の情報を答えようとする時に、意味の方の情報が干渉することをいいます。例えば、「赤 黄 緑・・・」と漢字が並んでいて、音読して下さいと言われれば、それはさほど難しい事ではありません。また、赤という漢字が赤い色、黄という漢字は黄色い色、緑という漢字は緑色で書かれていたとしても、むしろ音読の助けになるくらいで、難しさは変わらないでしょう。しかし、もし赤が緑色で、黄が赤色で、緑が黄色で書かれていたら・・・実際に試してみるときっとよく分かると思いますが、音読はそれまでよりも難しくなるものです。このように行われた実験によっても、音読の反応が遅れるという結果が出ています。この現象は、文字の意味を理解しているかどうかと関係があり、チンパンジーの認知能力の研究でも扱われています。チンパンジーにも、反応が遅れるという現象が起こっており、チンパンジーも言葉の意味を理解していたという事が証明されたのです。(AN)

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皆さんに2つの課題を出します。1つめは「あか・あお・き・みどり」と、名前の色と同じ色で書かれた文字を読んでもらうという問題です。もう1つは、名前の色とは違う色で書かれた「あか・あお・き・みどり」の文字を読み上げてもらうというものです。たとえば、この場合だとあかがみどりで書かれていたりします。この2つの課題のうち、どちらが皆さんは早く文字を読めるでしょうか。このテストは1935年にJohn RidleyStroop博士によって考えれ、彼の名前をとってStroopTestと呼ばれています。この課題によって、単に文字を読む・色を言い当てるということだけではなく、色の判断と文字を読むという2つの異なる情報が同時に脳に入ったときの「葛藤」により色を答える反応が遅くなるということがわかります。そして、それがストループ効果と呼ばれるものです。最近の研究では、文字を読むことは色を命名することよりも簡単だということが明らかになっています。(AN)

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ストループ効果とは、色と意味が一致しない単語の色を言うときは、それらが一致する単語の色を言うときよりも時間がかかることをいいます。つまり、青色で書かれた「青」という字の色を言うときはすんなり読むことができるけれども、緑色で書かれた「青」という字の色を言うときは少しとまどってしまって、時間がかかるということです。

このストループ効果は1930年代に、ストループという人が発見した現象です。この現象は「青」という色の名称が描かれている実際の色を口にすることを妨げるために起こってしまうのです。課題にとって不必要な言葉が自動的に読まれてしまって、その結果、反応が遅れてしまうのです。この現象は、色のみではなく、文字を使って形を表す場合などにも生じます。ストループ効果はもちろん、その言語を理解できない人には現れません。漢字を読むことのできない子供や外国の人にはこの現象は現れないということです。(AG)

  

「セ」

精神時間測定法(mental chronometry>

私たちが、目や耳から入ってきた情報を、頭の中で理解したり把握したりするまでには、一瞬ですがほんの少し時間がかかります。また、必要に応じて、その情報をもとに正確な行動に移すときにも時間がかかります。精神時間測定法とは、そのように、人が情報処理を行うときにかかる時間の速さや、その反応の正確さを測ることを言います。

この方法は、複雑で現在でもまだわからない部分が多い情報処理というしくみの中から、基本的で単純な情報処理のしくみや活動を明らかにするために、実験心理学という分野でとても重要とされてきました。

実験心理学とは、実験室において統制された条件の下で、被験者(実験の対象になった人)が自分の意識(直接的経験)を観察し、報告するという心理学独自の実験的自己観察(内観)を用います。心理学を、哲学や間接的経験を扱う自然諸科学と異なる対象と方法をもつ研究領域として定めたのはヴントという人物で、実験心理学の父と呼ばれます。

精神時間測定法は、言語学から精神物理学、また、知覚から行動に至るまで、幅広く使用され、様々な分野に貢献しています。(YA)

  

精緻化リハーサル(elaborative rehearsal>

 リハーサルとは短期記憶に貯蔵された情報を、意図的にまたは無意図的に、何度も反復して想起することです。リハーサルによって、短期記憶内に記憶を維持し忘却を防いだり、長期記憶に転送したるすることができます。前者のリハーサルを維持リハーサル、後者のリハーサルを精緻化リハーサルと呼びます。維持リハーサルとは、単に反復を行うだけのリハーサルである一方、精緻化リハーサルとは、情報に対するイメージの構成や意味的処理によって、既有知識と関連付けながら行うリハーサルです。処理の浅い維持リハーサルよりも、処理の深い精緻化リハーサルのほうが、短期記憶を長期記憶に転送しやすいのです。

例えばこんなことはないでしょうか、英単語を覚えるときに単に反復するよりも、その単語と今現在覚えている単語と結び付けて覚えたほうが覚えやすいなんてことないでしょうか。これが精緻化リハーサルを行っての記憶の向上です。 (NS)

  

宣言的知識(declarative knowledge>

知識には大きく分けて二つの種類があります。一つは、宣言的知識、もう一つは手続き的知識と呼ばれています。

宣言的知識というのは、例えば、「地球は丸い」とか、「りんごは赤い」、「ケーキは甘い」などといった、誰が見てもそうであるという、事実に関する知識のことです。宣言的知識は、「何々は何々である」という文章の形で表すことができます。

一方、手続き的知識というのは、ピアノの弾き方や、自転車の乗り方、車の運転の仕方、話し言葉によるコミュニケーションなど、習い覚えて身についた技能のことを言います。手続き的知識は、「もし、何々すれば何々になる」という規則の集まりですが、必ずしも言葉やイメージで他人に伝えることができるとは限らず、無意識のうちに働いていると考えられています。

私たちは、膨大な量の宣言的知識をもっていますが、それを使って手続き的知識を持つようになる、と言われています。(MY)

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  宣言的知識とは、言葉によって言うことのできる知識で、辞書に載っているようなものを言います。例えば、「〜は〜である」「〜するためには〜が必要である」といったことです。もっと具体的に言うと、「鎌倉幕府ができたのは1192年である」といった知識のことを言います。それが何であるかを知っていること(Knowing-what)が宣言的知識にあたります。

  反対に、記憶しているにもかかわらず、意識したり言葉に出して言い表したりできない知識ややり方を知っていること(Knowing-how)を手続き的知識といいます。自転車の乗り方や折り紙の折り方などがこれにあたります。

  一般的に、宣言的知識よりも手続き的知識の方が長続きするのが普通です。例えば、社会や理科で習った事や人名(宣言的知識)は長い年月が経つと忘れられてしまうことが多いですが、何年自転車に乗っていなくても、乗り方(手続き的知識)を忘れてしまうことはめったにないですよね。(TY)

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宣言的知識とは、「○○とは▲▲のことである」という、辞書に記述されているような知識のことです。宣言的知識を説明するときに深く関わってくる、習い覚えて身につけたような知識を手続き的知識といいます。どちらの知識も長期記憶の中にあるといわれています。

 例えば自転車に乗る練習をするとします。「自転車に乗るにはハンドルを握り、サドルに座り、ペダルをこぐ。自転車をとめるには、ハンドブレーキを握る。」この知識が、宣言的知識です。ただ、この知識だけがあっても、実際に自転車に乗る練習をしなければ、手続き的知識は身につかず、自転車には乗れません。そこで、宣言的知識に基づいて、自転車に乗る練習をしたとします。最初はもちろん乗ることはできませんが、練習しているうちにだんだん上手になり、ついには自転車に乗ることなんかなんでもなくなり、一種の移動の手段として使えるようになっていきます。この知識が手続き的知識です。このように、宣言的知識だけがあっても、手続き的知識がなければ、役に立たないことがしばしばあります。「知識だけがあっても、行動が伴わない」といわれるのは、宣言的知識のみしか身につけていないときです。

 宣言的知識をくり返して使用することによって、手続き的知識を蓄積することができます。(HM)

  

潜在学習(implicit learning>

 強化や報酬が与えられなくても生じる動物の学習を潜在学習といいます。また、同じ状況での人間の学習は偶発学習と呼ばれます。強化とは、ある行動の頻度が、刺激を与えることで、刺激がない時よりも高められることをいいます。例えば、パブロフの、犬を使った実験では、ベルが鳴ると餌が現れます。この場合、餌が反応を強化し、餌がなくてもベルが鳴るだけで犬はよだれを出します。また、ねずみがレバーを押すと餌が出てくる、もしくは電流が止まるという場合も、餌や電流の除去がレバーを押すという反応を強化します。こうした強化がなくても学習を行うことが潜在学習、または偶発学習といいます。例えば、流行の曲が頻繁にテレビやラジオで流れ、買い物先の店内でもその曲がかかっているとします。その曲が好きなわけでもなく、覚えたからといって特によいこともありませんが、聞いているうちに歌詞やメロディーを覚えてしまう。これも潜在学習の一種です。(HU)

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 次のような実験があります。ネズミを3つのグループに分けて20日間1日一回迷路をさせます。1つめのグループには迷路のゴールに毎回餌を置きます。2つめのグループには餌を置きません。3つめのグループは11日目、つまり後半から餌を置くようにします。餌が与えられるグループのネズミは間違える回数が徐々に減っていきます。餌が与えられないグループは間違える回数が多く、なかなか減りません。しかし,3つめのグループは餌が与えられた翌日から急激に間違える回数が減り,すぐに1つめのグループの成績に追いついてしまいます。これは餌が無い時期にもちゃんと迷路の学習ができていたのに成績として表れず,それが餌を与えることで目に見える形となって表れた、ということです。これは餌というご褒美がなくてもきちんと学習はできるということを示しています。成績として、つまり目に見える形で表れていない学習を潜在学習といいます。(NH)

  

選択的注意(selective attention>

私たちは普段すべてのことがらについて注意を向けているわけではありません。例えば、授業中に教官の話に注意を向けていると、他の物音には気づきません。しかし、実際にはさまざまな音が存在していて、「聞こえている」はずです。それにも関わらず、私たちは「聞いていない」のです。このような特定の情報のみが選択される現象は、カクテルパティー現象として知られていますが(Cherry 1953)、このことは、私たちが必要な情報のみに注意を向け、不必要な情報を排除できることを示しています。このことを選択的注意といいます。

 また、注意は情報選択という観点とは別の側面から考えることもできます。自動車を運転することに慣れている人は、車の運転をしながら助手席の友人と話をすることができます。しかし、初めて車を運転する場合には、その操作に注意を振り向ける必要があるために、そうはいきません。これらのことは、注意の振り向け方によって複数の情報処理を同時に行うことができたり、できなかったりすることを示しています。このような問題は、注意の分割(dividedattention)という観点から研究が進められてきました。(SC)

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 皆さんは何かをしている途中で突然大きな音がしたらそれに耳を向けたり、周りがうるさくても、自分と相手との会話は聞き取ったりすることができますよね。それは選択的注意というものが働いているからです。選択的注意とは、たくさんの情報が存在する中から特定の情報だけに意識を向ける、という注意の種類です。突然の音や動きに対して無意識に注意を向ける場合と、自分で意図的に注意を向ける場合とがあります。前者を不随意的な選択的注意、後者を随意的な選択的注意と呼びます。最初にあげた会話の例はカクテル・パーティー効果とも言われます。

 1953年にチェリーという人が次のような実験をしました。右耳と左耳に違うメッセージを聞かせ、片方の耳のメッセージに集中しその内容を声に出し、もう片方の耳のメッセージは無視します。無視しているほうのメッセージを男声から女声にしたり、英語からドイツ語に変化したりします。その無視したメッセージの内容をどれだけ理解しているか、変化にどれだけ気づいたか、などで選択的注意を研究しました。(NY)

選択的注意とは、簡単に言ってしまうと""自分の周囲にさまざまな情報がある中で、いくつかの特定の情報のみを意識すること。""である。注意には範囲があり、多くの刺激を瞬間的に見せられた時に知覚できる数は7〜8個となっている。情報処理容量には限界があるため、注意の範囲が広くなればそこでの情報分析能力は粗く、注意の範囲が狭くなれば詳細な情報分析がなされる、と考えられる。多くの情報がある中で人間は、無意識のうちに情報を取捨選択している。これを選択的注意と呼ぶ。

例えば、東京駅などかなり多くのホームを持つ駅では、アナウンスに男性と女性の声を起用している。これは選択的注意が持つ特性を多いに活かしたことである。男性と女性は声の質やトーン音程が異なり、注意を向けやすいのである。

そこで東京駅では、ホームごとに女性、男性、女性、男性・・・と交互に起用し、聞き取りやすさを追及しているのである。(AG)

  

選択反応時間(choice reaction time>

 皆さんは、モグラ叩きというゲームを知っていますよね?たくさんの穴から出てくるモグラをおもちゃのハンマーで叩き、得点を競うゲームです。では今、モグラ叩きをしている皆さんの前に、モグラが顔を出したらどうしますか?勿論、叩きますね。このように刺激(モグラ)が示されてから反応(叩く)が起こるまでの時間を、反応時間といいます。

 それでは再び、モグラ叩きを思い浮かべてください。今度のモグラ叩きでは、モグラとウサギが出てきます。ウサギを二回叩くと、モグラの三倍の得点が得られます。この『モグラだったら一回叩いて、ウサギだったら二回叩く』というように、示されるいくつかの刺激に対して違った反応をする場合の反応時間を、選択反応時間といいます。

 選択反応時間は一般的に、示される刺激の数によって変わります。また、何度もモグラが出た後にウサギが出た時と、ほぼウサギだけが出ている時では、ほぼウサギだけが出ているときの方が二回叩きやすいですよね。このように選択反応時間は、刺激の示される確率でも変わります。(HK)

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選択反応時間とは、単純反応時間と並ぶ「反応時間」という概念の1つです。反応時間とは最初、天体観測の際に個人個人によって星の発見する時間に差があるというところから研究が進み、第2次大戦後、様々な高速交通(車や鉄道、飛行機など)の発達に伴い、反応時間と事故についての問題から研究が進められました。単純反応時間とは、1つの刺激に対して1つの反応が決められている状況で、その刺激が提示されてから反応するまでの時間を計るというものです。例えば、「危ないっ」と思ったときにブレーキを踏むことは、単純反応時間と自己との関係とをよく示す例です。一方で、選択反応時間とは、2つ以上の刺激に対して対応する反応をする際の時間を計るというものです。例えば、キーボードのタイプにおける初心者は最初、画面に提示された文字にしたがってボタンを押していきます。練習してしばらくは、この反応時間がとても長く、ボタンを目で追ってしまいますが、何度も訓練すると反応時間は短くなり、ボタンを見なくてもキーを打つことができます。他にも、街中で見かける信号(青・黄・赤)に対するそれぞれの反応(進め・徐行・止まれ)に関する反応時間も、この選択反応時間といえます。(TH)

  

「ソ」

相関の錯覚(illusory correlation>

 相関の錯覚とは、実際には何も相関関係がない2つの事柄の間に、関係があると思い込んでしまうことです。日常生活の中からわかりやすい例を挙げてみます。例えば、めがねをかけている人は頭がいいというイメージはないですか?確かに、テレビもテレビゲームもない昔の話ならば、本をたくさん読んでいたために目が悪くなってしまった、と考えることができます。その結果、周りの人よりも知識が豊富だったために、めがねをかけた人は頭が良いと思われていたかもしれません。しかし現在では、目が悪くなる原因は読書だけではありません。テレビやパソコンなど近くを見る機会が非常に増えただけであって、目の悪さと知識の量にはほとんど関係はありません。このようなことは、現代人なら誰もがわかっていることではないかと思います。にもかかわらず、私たちはめがねをかけている人に対して知的なイメージを抱いてしまうのです。このように思い込みや偏見から相関の錯覚は起こるのです。(SA)

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 2変数の間に共変関係が見られるとき、相関関係にあるというような言い方をするときがあります。相関の錯覚は、実際には相関関係にない2変数を相関関係にあるように勘違いをしてしまうことです。たとえば、遠くに住んでいる友人の夢を見た数日後にその友人から連絡が来たという例です。この例では、友人の夢を見ずに連絡が来たこともあるだろうし、夢を見ても連絡が来なかったなんてこともあると思いますが、夢を見て連絡が来たということが印象強く残り、この2変数に相関関係があるように錯覚してしまうのです。これと同じものに雨乞いがあります。雨乞いという儀式は世界中にあったそうですが、なぜまかり通っていたのか。雨乞いをしてもしなくても雨は降ったのです。しかし、人々は、雨乞いをした結果雨が降ったということのみ印象強く残り、そのほかの事例を忘れてしまったため雨乞いが広まったと考えることができます。このように強い印象などによって相関の錯覚は起こるのです。(NS)

  

「タ」

対象の永続性(object permanence>

 対象の永続性とは、対象がたとえ視界から見えなくなっても存在し続ける認識ということである。これは生後8ヶ月くらいに概念に達する。つまり生後8ヶ月に達していない幼児が手を伸ばそうとしているオモチャを布で覆うと、その幼児はすぐさま行動を止め、まったく興味を失ってしまったかのように行動する。それに対して、生後10ヶ月の幼児に同じ状況をつくった場合、積極的に布やスクリーンに隠された対象物を探そうとする。(OC)

  

対象物の永続性(object permanence>

対象物の永続性とは、「対象物が視界から見えなくなっても存在し続けるという認識」のことで、心理学者ピアジェが出した発達段階理論の一つです。生後数ヶ月の赤ちゃんの前におもちゃを置いておくと、赤ちゃんはそれを見つめたり、手を伸ばして触ろうとします。そこで、布や仕切りなどでおもちゃを隠し見えないようにすると、赤ちゃんは驚いたり泣いたりもせず、見つめていた行動や手を伸ばす行動をやめ、まるでもともとそこにおもちゃがなかったかのように振る舞い、おもちゃを探そうともしません。対照的に、生後10ヶ月ぐらいの幼児はおもちゃを見えなくすると、布を引っ張ったりして積極的に隠されたおもちゃを探そうとします。こういうふうに、対象物が視界から消えても、そこにまだおもちゃがおいてあると考えることを「対象物の永続性」と言います。後からの研究で、3ヶ月半ぐらいの赤ちゃんでも対象物の永続性を示すことが明らかとなりました。(KJ)

  

代表性バイアス(representativeness bias>

 日常の生活の中で、あることがどの程度「ありがち」なことかを確率で判断しようとします。この時、私たちは実際に自らがより多く経験していること、つまり代表性にたよってしまいます。

 ここで言う代表性とは、目立った特徴や表面的な特徴で物事の類似性を表現することをいいます。例えば、魚の絵を簡単に書いてみようとするとき、多くの人がラグビーのボールのような形の胴体と、三角形に近い形の尾ひれで魚をあらわそうとするのではないでしょうか。この時私たちは魚の表面的な形の特徴を、魚の代表性として用いているのです。

 私たちが何か物事を判断するのに、いちいちすべてを詳しく検討したり、分析していたのでは時間がかかってしまいます。そこでこの代表性に着目することによって、私たちは簡単に物事の類似性を見つけたり、類似性に基づいて判断を下すことができるようになります。

 しかし、この代表性に頼りすぎてしまうと、それは判断の誤りの原因となります。この代表性による誤った認知を代表性ヒューリスティックというのです。(MM)

  

短期記憶(short-term memory>

記憶には、長い間覚えていられるものと、短時間で忘れてしまうものがあります。

例えば、自転車の乗り方や、自分の家の住所などは、ある日突然忘れてしまった、などという事はまずありませんね。このように、一度覚えたら忘れることのない記憶は、『長期記憶』といいます。

それに対して、電話帳で電話番号を調べて電話をかける時、一瞬は電話番号を覚えますが、番号をプッシュした後はすっかり忘れてしまいます。このように、短い時間しかもたない記憶を、『短期記憶』といいます。

『短期記憶』は、記憶できる時間が数秒間と、大変短いのが特徴です。さらに、記憶できる量もかなり限られています。人によって違いますが、普通の人が一度に記憶できるのは、だいたい7項目前後だと言われています。一度に7個以上の単語や数字を覚えようとするのは、なかなか難しいものです。

また、『短期記憶』は、記憶の中身を何度も意識的に反復することにより、『長期記憶』へと移行することもあります。一度見ただけではすぐに忘れてしまう英単語も、何度も発音し、書く練習をすることで、時間が経っても忘れずに覚えていて、テストの時に生かすことが出来ますね。(MY)

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短期記憶とは、その言葉の通り、短期間保持される記憶です。記憶には長い間覚えていられる記憶と短時間のみしか覚えていられない記憶があります。因みに長い間覚えていられる記憶は長期記憶といいます。

短期記憶の例としては、初めて会った人に名前を聞き、その場所では覚えているが、次の日になると忘れてしまっているような記憶が短期記憶です。 自転車の乗り方や、自分の家の電話番号や住所など、一度覚えたら忘れることのない記憶が長期記憶です。

短期記憶は、記憶できる時間が約20秒間と、大変短いのが特徴です。記憶できる量も限られていて、人によっても違いますが、大体一度に記憶できる量は7±2まで(5から9)だといわれています。この事実は心理学者ジョージ・ミラーによって発見されました。7±2という数はマジカルナンバーと呼ばれています。

短期記憶の情報は時間の経過とともにかならず忘れてしまいます。しかし短期記憶を長期記憶にしていくことができます。長期記憶は時間が経過してもなかなか忘れることはありません。短期記憶の内容を何度も確認することにより、短期記憶は長期記憶になります。友達の家の電話番号など、よく電話をかけることでいつのまにかその電話番号を覚えてしまっていることがあります。この短期記憶から長期記憶に記憶を転送することを精緻化リハーサルといいます。(HM)

  

「チ」

チャンク仮説(chunk hypothesis>

 今から言う数字を覚えてみて下さい。

2,2,3,6,0,6,7,9

覚えられましたか?

 今言った8つの数字を「ただでたらめに並んでいる」と思うと覚えるのは大変です。しかし「富士山麓オーム鳴く」と語呂合わせをすると、あっという間に覚えられますね。このように語呂合わせをすると、8つの数字を「富士」「山麓」「オーム」「鳴く」と4つの単語にまとめられます。今のように、バラバラの数字や文字などを単語などにまとめること、それをチャンキングと言います。そして「富士」や「オーム」といった1つ1つのまとまりをチャンクと呼びます。

 人間が何かを短い間だけ覚えておこうとする時、7±2、つまり5から9チャンクの内容を覚えられると言われています。1つのチャンクの中にたくさんの数字や文字をつめこむほど、一度に覚えられる量が増えるわけです。

  人間の記憶についてのこのような考え方をチャンク仮説と呼びます。テスト前などにみなさんが頼りたくなる記憶術、その中にもチャンク仮説が活用されています。(SK)

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チャンクとは記憶における情報の1単位で、チャンキングとは情報のかたまりを小さくすることです。たとえば電話番号で11チャンクの0-9-0-1-2-3-4-5-6-7-8を3チャンクの090-1234-5678とする、というように使います。

このように、いくつかの要素をまとめて高次の単位に構成することを「チャンキング」、その構成された単位を「チャンク」と言いました。

人間の短期記憶の容量は、チャンク数にして7±2といわれています。例えば、個々のアルファベットf・e・s・t・i・v・a・lは7つのチャンクですが、festivalという単語にすれば1つのチャンクになります。チャンキングは短期記憶をする際に有用で、例えば、憲法の前文をノートに写す時、一字一字見ながら写すと大変だが、ある程度の意味のまとまりで写すと効率がよくなり、そのまとまりが大きくなればなるほど、写す速度は速くなります。また、長期記憶においても、チャンキングは役立ちます。例えば、鎌倉幕府の始まりを、1192年と数字を丸覚えするより、「良い国作ろう」と覚えた方が覚えやすい、数学の問題で使う公式の組み合わせのパターンを覚えてしまえば、機械的に解答できるなどです。(SH)

  

注意(attention>

注意という言葉は日常でも良く使われている言葉です。心理学の世界で注意に関する研究が行われるようになったのは20世紀中ごろになってからです。

注意には2つの側面があります。「焦点的注意」と「注意の分割」です。

焦点的注意とは、ある1つの対象に注意を集中させることに関するものです。それは、主に視覚的なもの、聴覚的なものがあります。例えば、一度にいくつかの違う情報が耳から入ってきたとき、その中からひとつの情報をうまく選択して聞き取ることができるのは、焦点的注意の働きがあるからです。

注意の分割とは、同時に生じる2つ以上の刺激のすべてに注意を向けて、同時にそれらの処理を行うということに関するものです。ここでポイントになるのが注意資源という考え方です。人間が持っている情報処理の容量には限界があり、その決まった量をいくつかに分けて情報処理を行っているというのが、注意資源の考え方です。この量が多ければ多いほど同時にいくつものことをできます。例えば、車の運転になれていない人は運転しながら会話をすることは難しいでしょう。これは、運転初心者は運転することに注意資源がかなり必要なため、会話に注意を分配できないからです。またこの注意資源は、補給されたり消費されたりするものです。そのため長時間集中するときには休憩を入れるなどして注意資源を蓄える必要があります。(YN)

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人間は,目や耳などのから入力された膨大な情報のすべてを処理しているわけではなく、生活するのに必要な情報を 選択的に処理しています。この選択をする行動が注意です。

人間の情報を処理する能力には限界があるため、注意には範囲があります。注意の範囲が広くなればそこでの情報分析能力は粗く、注意の範囲が狭くなれば詳細な情報分析がなされる、と考えられています。注意の範囲は、ストレスあるいは覚醒レベルによって影響を受けます。たとえば、ストレスが溜まっていたり、眠かったりすると注意の範囲は狭くなります。

また、私たちは特定の情報だけに注意をむけ、そのほかの情報を無視も出来ます。たとえば、大勢の人間が話をしている場所で、自分の名前だけが聞き取れた経験があるでしょう。この場合、あなたの注意は自分の名前にだけ向けられていて、そのほかの情報は無視されています。これをカクテルパーティー現象といいます。

人間の注意の状態をリアルタイムで客観的に推定することは、作業をしている場面での事故防止や作業効率の向上などに役に立ちます。現在では、脳波の状態も含めて、注意の状況を総合的に調べる研究も行われています。(TK)

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注意という語は日常的に用いられる用語ですが、心理学の立場からは、すでに今から100年ほど前に、ウィリアム・ジェームスによって説明されています。それは、『注意がどんなものであるかは、誰でも知っている。それは、同時に存在しうるいくつかの思考の対象や連鎖のうちの一つを、明白かつ鮮明な形で心にとらえることである。意識の焦点化、集中が注意の本質である。それは、ある事柄を効果的に取り扱うために、それ以外の事柄を引っ込めてしまうことを意味する。』というものです。

なかなかこれを聞いても良くわからないと思うので、ここで一つ例を挙げて説明してみたいと思います。それはカクテルパーティー現象というものです。多くの人々が集まったパーティ会場では、あちらこちらに人の輪ができて、にぎやかに談笑が行われています。会場全体がかなり騒々しさに包まれていますが、そのなかで誰かと話に夢中になっているときには、周りのほかのグループの話し声やざわめきはあまり気のなりません。また、たまたま隣のグループの話題が自分の関心事であることに気が付き、そちらで交わされている会話に耳を傾けると、急に隣の人の声が大きくなったわけでもないのに、そこで話されている内容が理解できるようになる、というものです。

この例でもわかるように、注意には2つの側面があります。ひとつは、周りの騒々しさが気にならなくなり、話している相手の声がしっかりと聞き取れるようになる焦点的注意ともうひとつは、相手と話しながらも、隣のグループの話題にも耳を傾けることができる注意の分割と呼ばれるものです。(SA)

  

長期記憶(long-term memory>

私達は生活していく中で、見たり聞いたりとあらゆる瞬間に様々な経験をし、その経験を覚えているということは、とても重要です。もし覚えることができなかったら、自分が何者なのかも分からなくなる、ということになってしまいます。つまり「記憶すること」は、私達の生活に欠かせません。

心理学の世界では、記憶を長期記憶と短期記憶と呼ばれる二種類に分け、区別して考えます。長期記憶とは、数時間から数年、数十年に渡って保持される記憶のことをいいます。

例えば、今日初めて会うAさんを知り合いから紹介されて、次の日Aさんに会った時に、「Aさんだ」と思い出す時に使う記憶は、長期記憶です。また、紹介されてすぐに、その場に来た別の友達にAさんの名前を教えるような時に使う記憶は、短期記憶です。

一般の人が「記憶」と言う時には、たいてい長期記憶だけをイメージしていると思います。しかし、人の記憶の機能はとても複雑で、長期記憶と短期記憶の二種類があるだけでなく、長期記憶をいくつかの種類に分けて考える必要もあり、その分類が記憶についての正確な理解をするうえで大切なことになってきます。(AN)

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長期記憶とは、一言でいうと文字通り、長く覚えている記憶のことです。「記憶」という言葉は、普段は「英単語を記憶する」などのように使われます。心理学の世界での「記憶」は、普段使われているよりもっと広い意味で使われ、いろいろな種類がありますが、大きく分けると長期記憶と短期記憶の2つになります。短期記憶は、ほんの一瞬から長くて1分くらいは覚えているけれど、それ以上たつと忘れてしまうという記憶です。長期記憶は1分以上から何十年と覚えているもので、理屈の上では永遠に忘れないといわれています。

例えば、最近やった数学の問題を思い出してみてください。新しい公式はノートなどを見直さないとわからなくても、かけ算のやり方など小学校のときから何度も使っているものは、ほとんどの人が何も見ずにできると思います。このとき、新しい公式は短期記憶、かけ算のやり方は長期記憶だということができます。くり返し使うことで忘れなくなる、というのも記憶の特徴のひとつで、新しい公式も何度も使っていけば覚えられることになります。また、かけ算のように、意識的に思い出さないけれど日常的に使用しているというものは、長期記憶の中でも特に潜在記憶と呼ばれます。

こうして例をみると当たり前のことのように思えますが、当たり前に思えることもしっかりとしたデータに基づいて確かめる、というのが心理学の基本的な姿勢です。(BT)

  

調節(accomodation>

 調節とは、人間の発達において、心理学者ピアジェが提唱したものです。

 ピアジェは、人間の発達を、シェマの同化と調節と考えました。シェマとは、認知的枠組みとも言われ、簡単にいうと、自分が存在している環境に適応するために、それぞれの人がもっている認知的な構造のことです。同化とは、自分のシェマに合うように情報を変化させて取り入れることを意味し、今日のテーマである調節とは、いまもっているシェマを修正することをいいます。かたい言葉だと難しいので、今回は例として、ウィンタースポーツのスキーを例に紹介します。

 始めてスキーを体験する人は、テレビでみたりしたスキーのイメージなどをもとにして何とか滑ろうとします。つまり、今もっているシェマで、なんとか「スキー」という初めての状況に対応しようとします。これが同化です。でも、今もっているシェマではどうにも滑れないため、なんどもこけたりしながらも、徐々にこつをつかんでいきます。この状況はつまり、「スキー」という慣れない環境に対してシェマを修正している状況であり、これが今回のテーマである「調節」になります。その後、中級者、上級者コースへとスキルアップしていくときにも、同様に、同化と調節が行われていきます。(KJ)

  

直接記憶範囲(immediate memory span>

 1回にどれくらいの量の記憶ができるのかという能力の限界を「直接記憶範囲」、または「記憶範囲」と言います。

 ここで問題です。次に読み上げる数字を覚えてください。「5、7、8、6、3、4、1、9、2」覚えた数字を順番どおりに書き出してみてください。いくつまで正しく言うことができますか?

 このように、数や文字や図形の系列を1つずつ読み聞かせるか見せるかして、すぐに再生させ、間違えずに再生できた最長の長さを記憶範囲としています。記憶範囲には個人差・年齢差があります。ミラー(Miller, G.A.)は大人では7±2、つまり5〜9の記憶範囲があることを明らかにしました。記憶範囲はチャンクという意味のあるかたまりにすることで増大し、まとまりの数で言ってもやはり7±2が限界であるとされています。このことから7を記憶のマジックナンバーと呼んでいます。例えば、人に何かの説明をするとき、説明したいことを5つ以下に絞れば覚えてもらいやすくなるでしょう。

 また、記憶範囲の平均は5歳児で4、7歳児で5、12歳児で6、と年齢とともに増加していきます。(KM)

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 突然ですが、今から言う数字を順番通りに覚えてみて下さい。「9,3,6,0,9,1,7,4,5」。そして覚えた数字を口に出してみて下さい。何桁まで正しく言うことができますか?

 数字や文字を1つずつ聞かせたり見せたりして、すぐにその覚えたものを口に出したり書いたりしてもらいます。そうして間違えずに思い出すことのできた列の長さを直接記憶範囲と言います。つまり、先ほどの数列で1まで思い出せた人の直接記憶範囲は6となります。

 ミラーは直接記憶範囲は7±2、つまり5から9であると発表しました。

 この時、いくつかの数字や文字をひとまとまりにしたものを単位にして7±2を数えることができます。つまり「1,1,5,7,9」を「1,1,5(いい子)」、「7,9(泣く)」と区切れば2かたまりと数えられます。3つの数字を1かたまりにすれば、15桁から27桁の数字を覚えることができるのです。携帯電話の番号を覚える時などに活用できますね。(SK)

  

直観像(eidetic imagery>

直観像とは、映像を見たまま写真に撮るように記憶する能力の事です。対象が消えた後も鮮明にイメージを思い浮かべる事ができ、細部の様子まで詳しく述べる事ができます。通常は成長するに従って失われていく能力ですが、成人でもこの能力を持っている人もいます。(HA)

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 目で見たことを覚えておく力のことを直観像とよびます。それは、ほとんど写真と同じくらい細かいところまで覚えておくことができ、明瞭なものです。そのような像は、昔見て覚えていて思い出せるものよりずっと細かいところまで正しく、詳しいところまで描かれることができます。(TT)

  

「ツ」

対連合学習(paired-associated learning>

単語のリストを被験者に覚えてもらい、あとから思い出してもらうといったような記憶測定の方法に、再認と再生があります。再認とは、例えば「先ほどの単語リストにサボテンは書いてありましたか?」といったように、学習した項目と学習しなかった項目とを被験者に提示し、学習時に提示した項目を指摘させる方法のことです。それに対して再生とは、「先ほどの単語リストに何が書いてありましたか?」というように言って被験者に正確に再現させる方法のことです。

再生にはさらにいくつか種類があります。思い出した順に自由に再生する方法は自由再生であり、提示された順序通りに再生する方法は系列再生です。この他に、手がかりを利用した再生があります。この手がかりを利用した再生の代表的なものが対連合学習です。

 対連合学習は、2つの項目を対にして学習し、一方を手がかりとしてもう一方を再生する方法です。例を挙げると、「peace-平和」のように英単語と日本語を対にして覚え、「peace」を提示して「平和」と答えさせるようなことも対連合学習です。ここでの「peace」のように手がかりとなる語を刺激語、「平和」のように再生させる語を反応語といいます。(SJ)

  

「テ」

手続き的知識(procedual knowledge>

知識には大きく分けて二つの種類があります。一つは、宣言的知識、もう一つは、手続き的知識と呼ばれています。

手続き的知識というのは、例えば自転車の乗り方や、ピアノの弾き方、車の運転の仕方、話し言葉によるコミュニケーションなど、習い覚えて身についた技能のことです。手続き的知識は、「もし、何々すれば何々になる」という規則の集まりですが、必ずしも言葉やイメージで他人に伝えることができるとは限らず、無意識のうちに働いていると考えられています。

一方、宣言的知識というのは、例えば「地球は丸い」とか、「りんごは赤い」といったような、誰が見てもそうであるという、事実に関する知識のことを言います。私たちは、そういった膨大な量の宣言的知識をもとに、手続き的知識を持つようになると言われています。(MY)

  

「ト」

同化(assimilation>

 同化という言葉はピアジェという人が考え出しました。同化の意味は、外の世界の事柄を自分が持っているシェマ(特定の概念を表すための知識のこと)に合わせて対象を変化させて、自分の内部に取り入れる働きをいいます。これは、子供の知的発達において重要な働きをしています。

 例えば、中学校に入学すると小学校までの生活とはかなり違った生活になりますよね。勉強が大変だったり、本格的な部活動を始めたり、と。今まで知らなかった世界でも私たち人間は徐々に適応していきます。今まで積み上げてきた知識を使い、新しい世界をうまく自分の中に取り込んでいくのです。同化の他に、調節という働きもあります。これは、新しい世界をうまく自分の中に取り入れられなかったとき、自分の中の知識を修正して、その世界に適応していこうという働きです。この同化と調節という機能を使って人間は成長・発達していくのです。(HK)

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ピアジェの認知発達理論によると、乳児が既存のシェマ(スキーマ)を使って新奇の事物や事業を理解する過程。ピアジェは子供達に外界に対し実験を試み、結果として何が生じるのかを探った。その結果、子供はシェマを構築する、すなわち、既存のシェマに合わせて理解しようとする。もし古いシェマがこの新しい事象に上手く同化しなかったら、有能な科学者のようにそのシェマの修正を試みる。それゆえ、外界関する理論は進展していく。(OC)

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発達心理学者であるピアジェは、子どもを「好奇心豊かな科学者」と表現し、その子どもは環境へ積極的に働きかけ、シェマを形成していくとしました。シェマとは、心の中のモデルを言い、学習などの経験を通じてできた、物事に対する理解や概念を示します。新たな物事に出くわしたとき、子どもは既にもっているシェマを使って、それを理解しようとします。ピアジェはこの認知過程を同化と名づけました。(KJ)

  

統制処理(control process>

 普段よく聞く言葉や、自分の趣味などに関する言葉は、あまりよく考えなくても理解したり、納得したりすることができます。しかし一方で、ほとんど聞くことがない、あるいは初めて聞くような言葉の場合は、そう簡単に理解することはできません。自分が既に知っている言葉や知識の中から、似ていると思われるものを探してみたり、先生や友達に聞いてみたり、辞書で調べたりして、ようやく理解することができます。よく知っている言葉のように、意識的な努力をしなくても入力される情報を自動的に処理することを自動処理と言います。そして初めて聞く言葉のように、意識的な努力や注意力が必要となってくる情報処理を統制処理と言います。

 自動処理によってすんなりと理解できるのは、その言葉を何度も何度も繰り返し見たり使ったりした経験があるためです。それに比べると、知らない言葉、また知っている言葉でも、それをいくつか組み合わせて意味の通る文を作り上げるのには、大きな負担がかかります。こちらは統制処理にあたります。新しい言葉に出会ったら、その言葉と共に、文法の知識やどんな文脈で使われていたのかを記憶しておけば、言語処理全体がとても楽になるのです。(KM)

  

トップダウン型処理(top-down approach>

私たちが見たり、覚えたり、考えたりすることを、情報処理過程として理解するときには、異なるタイプの処理過程を区別することが必要です。

その処理過程は2つに分けることができます。それはボトムアップ型処理と呼ばれる処理過程とトップダウン型処理と呼ばれる処理過程です。

トップダウン型処理というのは、見たものや聞いたものからの情報によって、低次なレベルからより高次なレベルへと情報処理が進むボトムアップ型処理とは異なり、私たちがすでに持っている知識や経験、期待によってなされる情報処理であり、概念駆動型ともよばれます。

例えば 「TДE CДT」 という文字を見たときに前半のДをHに、後半のДをAに読むのはトップダウン型処理です。

実際に私たちが認知するときには、トップダウン型処理とボトムアップ型処理の2つの過程が互いに補うように生じています。(YA)

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人間の脳はコンピュータのように、見たり聞いたりした情報を処理します。そして、私たちはその情報を理解したり解釈したりします。

概念駆動型処理とも呼ばれるトップダウン処理とは、人の記憶や知識をたよりに情報を解釈する仕組みです。例えば、お土産をもっていったときに、「つまらないものですが」と言うのをよく聞きますが、受け取る方は本当につまらないものだろうとは思いません。これは、日本人にはそのように謙虚にものを言う文化があることを、もともと知識として持っているからです。

また、目の前のできごとを、知識や記憶からできる期待や予測に、うまく合うように理解したりもします。

これとは反対の仕組みが、ボトムアップ処理で、データ駆動型処理とも呼ばれます。文字や音声などのそのままの情報をもとに全体を理解する仕組みです。例えば、「文字を見る」→「単語を理解する」→「文を理解する」→「文章を理解する」という段階をとります。

私たちはこの2つの仕組みを使って、目の前の情報を処理し理解しているのです。(YA)

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人間の能動的な情報処理にはトップ・ダウンアプローチとボトム・アップアプローチと言った2種類の仕組みがあり、これらは情報処理の方向性を表します。

トップ・ダウンアプローチ(処理)とは、私たちが、すでにもっている知識やその時々に頭に思い浮かんだ期待や仮説などの考えを先行させて、見ているもの・聞いている音・読んでいる文を理解する方式のことで、概念駆動型処理とも呼びます。すなわち、高次の水準にある概念や理論などから動かされ、入力データを予想や仮説、期待などのもとに処理していくもので、人間の記憶に依存することが大きい処理方法です。

トップ・ダウン処理とは、もっとわかりやすく言うと、高いレベルの情報が低いレベルの情報に影響を与える処理のことで、トップ・ダウン処理においては予想することが大きな役割を果たします。例えば授業中に居眠りしたとしても、予習などによって授業がどう進むのかがわかっていれば、次の要点はわかるのです。また、このトップダウン処理を読み方で考えてみると、テキストに書かれている1語1語の意味よりも、書き手の意図やテキスト全体の意味により注意を払いながら読みを進めていく読み方であると言えます。読解力の優れた学習者は、このようなトップダウン処理的な読み方をする傾向があると言われています。(KJ)

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もともと持っている知識、文脈、記憶、行為経験・動機などを助けにして、頭の中でイメージすることで、物事を考えるというやり方。

例えば私達が、犬が吠えているのを見て「犬が吠えている」と考えるのは、知識や記憶、経験から、今目の前にいる動物が犬という名前で、「わんわん」と発する声が、犬という動物の鳴き声である、と知っているからである。

このように、外からの刺激に対して、知識などの助けを借りて頭の中でイメージする方法をTop-Down Approachと呼ぶ。(AH)

  

「ナ」

内的表象(internal representation>

コンピュータに論理的推論を解くプログラムを入れると、コンピュータは入力された問題の論理構造を引き出し、そこに論理推論ルールを適用して問題を解いていきます。コンピュータに対して、人間にはそのようなプログラムが内蔵されていません。それでは人間はどのように問題を解くのでしょうか。問題が与えられると、まず、その解釈理解という理解過程が始まります。その過程とは、私たちが入力情報を統合的に理解しようとするために、すでに持っている知識を利用しながら矛盾の無い意味世界を構成する過程であることが知られています。例えば異文化での出来事を聞いた場合、その内容が自分の文化に合うように歪められて記憶されることがあります。また、欠けている情報は、すでに持っている知識を利用して補われることもあります。私たちはそのように構成された意味世界(内的表象)に基づいて推論しています。(SC)

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内的表象とは心に浮かぶ像のことを指します。刺激がないのにもかかわらず、物事が頭に浮かぶことです。例えばあなたは今学校にいるのにもかかわらず、自分の部屋を思い浮かべることができます。これを内的表象といいます。(IT)

  

「ニ」

認知(cognition>

 人間がどのように物事を理解し覚えるのか、記憶した情報をどのように引き出し、使っていくかという心の動き。また、外界からの刺激を取捨選択して取り入れ、分類・変換・記憶・判断する過程の事を指す。

この人間の「知」の働きを科学的に探求していくのが、ナイサー(Neisser,U)が1967年に提唱した認知心理学という学問である。認知心理学ではコンピュータ科学をモデルとして使うことが多い。例えば、電話番号を覚えるとき、音として頭の中にインプットし、記憶の中に貯蔵し、貯蔵されている記憶から検索し、取り出す。このようにコンピュータの用語をよく用いる。ナイサーが提唱して以来、心理学の大きな流れとなった。現在では、言語学、神経科学、人類学、哲学、人口知能などと結びついて発展していっている。(AH)

  

認知技能(cognitive skills>

記憶は、陳述的記憶と手続き記憶に大きく大別され、それぞれが、さらに細かな記憶の種類に分類できる。陳述的記憶の中に含まれるのは、エピソード記憶(物語化された記憶)、意味記憶(記号と意味)である。そして、手続き的記憶の中に含まれるのが、条件反射(パブロフの犬のように刺激に反応する記憶)、熟練技能(自転車の乗り方や楽器演奏の技術)、認知技能(スポーツやゲームなど半分無意識にある記憶)である。手続き的記憶に含まれる認知技能は、心の合理的、分析的、創造的な能力である。何かを理解しようとするとき、わたし達はこの能力を使う。相手より迅速な認知技能を持っていれば、あなたは相手より速く考え、答えることができる。認知技能は、たくさん練習をすれば、みがかれる。速く考えて、決定をするやり方を学べば学ぶほど、より速く考えて、決定ができるようになる。(YM)

  

認知的技能(cognitive skills>

 2桁同士のかけ算をするということは、どの桁から計算を行い、繰上りをどうするかなど、一定のルールに基づいて一連の手続きを実行することです。このような認知的な手続きを実行する能力のことを認知的技能と呼びます。何らかの認知的技能を学習する場合には、手続きを理解して憶えるだけでなく、実際に手続きについての知識を用いることにより、徐々に誤りなく早くできるようになっていきます。このような学習についてアンダーソン(Anderson,1982,1983)は次のような3つの段階を考えています。

 第一の段階は、宣言的段階です。通常、技能の学習の出発点において、学習者はその手続きを知りません。そこで、手続きを実行できるだけの知識が学習者に与えられ、学習のこの段階にある技能は、命題的な知識を1ステップずつ解釈しながら実行されます。

 第二の段階は知識の翻訳の段階です。この段階では前の段階で得られた知識が実際に使われることによって解釈なしで直接使えるような使いやすい形に翻訳されます。

 ひとたび知識が手続き的な形に翻訳され技能が自動化された後も、通常その技能は使われつづけることによって徐々に正確さを増し効率的に実行できるようになっていきます。この段階が手続き的段階です。手続き的段階は技能が一通り学習された後、長期にわたって続く場合が多いです。(SC)

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認知的技能とは手続き的記憶の下階層に存在している、頭の中でする暗算のような認知的処理を行う能力のことを言います。この技能の学習には、3つの特徴があります。これはどの技能においてもそうなのですが、

@その技能がその社会、文化の中で学習するに値するものであるということ。

 したがってその習熟度は違っても誰でもが、それなりに身につけているものでもあるということになります。

A長期間の反復練習が必須ということ。

 どれくらいの期間、どれくらいの反復練習をしたかが、その技能の習熟度を規定することになります。

B熟達レベルに到達すると、技能の透明化、すなわち、技能が意識から消えて、技能の結果のみが見えるということ。

 そこには、技能の熟達が有する、状況への即応という適応的な機能があります。ただしそれによって創造性を失うことにもなります。

この認知的技能は一種の長期記憶であるためいったん技能を獲得した場合それを忘れることはほとんどなく、長期にわたって繰り返すたびに習熟していくと考えられています。(YM)

  

認知的不協和(cognitive dissonance>

 1975年にアメリカの心理学者フェスティンガーが唱えた、ものごとの捉え方についての理論です。ものごとを捉えることを認知と呼びます。対になる二つの認知があるとき、一方の認知が他方の認知から導かれるなら、両者は協和すると言えます。しかし、一方の認知が他方の認知の逆から導かれるなら、両者は不協和な関係にあるとします。また、二つの認知が互いに原因となる関係(これを帰因関係と呼びます)にないとき、あるいは二つの認知の互いの逆にも帰因関係にないときは、両者は無関係であるとします。なお、「協和」とは、ある人が一方の認知を持ったなら、他方の認知も当然持っているだろうと第三者が考えるような認知間の関係をさします。 また不協和関係とは、次の三種の不協和を少なくする行動をしようという状態をいいます。その三種とは、

@ 認知を変えること

A 不協和な認知の重要さを低くすること

B 正しいとさせるような認知をつけ加えること

です。不協和関係の例としては、タバコの話があげられます。

 ここにAさんという、タバコを吸う人がいます。しかしAさんは「タバコは身体に悪い」ということを知っており、これは「自分はいけないと知っていることをしている」という矛盾を起こし、不協和関係となります。この不協和を少なくする行動として、上にあげた三種の方法から考えると、

@ 禁煙することによって、自分がタバコを吸うという認知を変える。

A タバコを吸うことによって健康が損なわれると言う事実を否定したり無視したり、軽視する。

B 「低タールのものしか吸わない、タバコでよりも交通事故で死ぬ可能性の方が高い」といったような、正当化する認知をつけ加える。

という方法があります。この中ではBがもっとも一般的で簡単な、不協和を少なくする行動です。

 認知的不協和は、不協和理論(dissonance theory)ともいいます。(NA)

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 あなたには好きな相手がいると仮定します。嫌われているかもしれないと思ってしまうような態度や行動をその子からされたら、あなたはどんな気持ちになりますか?

1:私は○○さんのことが好きだから、○○さんも私のことを好きでいてほしい

2:もしかしたら私は○○さんに好かれていないかもしれない

このような2つの相反する情報を持っている状態を「認知的不協和」と呼びます。認知的不協和になるととても嫌な感じになるので、この不快な状態をどうにかしてなくしたり、減らしたりしようとする心の動きのことをFestinger(1957)は「認知的不協和理論」と提唱しました。

 例えば、上のような状況の時に「自分の思い違いかな」とか「たまたま相手の機嫌が悪かったのかもしれない」と思い込むようなことです。他にも、ダイエットをしようと思っている人が「食欲を我慢することは逆に良くない」と言ってなかなか始められなかったりすることが挙げられます。

 このように、自分の行為や環境・他の要素の捉え方を都合の良いように変化させることによって、不協和を解消しようとします。単なる言い訳や自分を肯定化するためのような気もしますが、このようにして人は心の安定を保っているのです。(KM)

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実際の気持ちや状況と現実とのバランスが取れていない状態を認知的不協和といいます。人は何とかしてその認知的不協和の状態から抜け出しバランスとろうとする、という考え方を認知的不協和理論といいます。

例えば、大地震などの大きな災害の後によく流れる噂があります。地震はあったものの被害はそんなに大きくない場合に、「近いうちにもっと大きな不幸が起こるだろう」というような噂が広がることがあります。地震が起こったときにとても不安な気持ちになったのに、現実の被害はそれほどひどくなかったため不安な気持ちだけが残ってしまいます。その気持ちと現実とのバランスを取るために、不安を引き起こすような噂が流れるのです。

タバコを吸うということについても、このようなことは存在します。タバコを吸うと、落ち着くことができますが、身体によくありません。「落ち着くことができる」から「タバコを吸う」というのは納得がいきます。しかし、「身体によくない」のに「タバコを吸う」ということには納得がいきません。そのため、タバコをやめたり、本数を減らしたり、タバコのよい面しか考えなくしたりして現実とのバランスを取ろうとします。(NH)

  

「ノ」

‘喉まで出かかる’現象(tip-of-the-tongue phenomenon>

テストに向けて勉強した単語があった。今、まさにその知識を使う時、いざその単語を答えとして紙に書こう、と思ったら、思い出せない!何ページの何行目に書いてあった、何文字の単語であるかというところまではわかるのに、肝心のその単語自体の形が思い出せない……。こんな経験は、誰にでもよくあるのではないだろうか。思い出せそうで、なかなか思い出せない、どうしても思い出せない、というこの現象を、「喉まででかかる現象」と呼ぶ。この場合、思い出したい情報の一部分が断片的に思い浮かぶことが多い。例えば、「industrious(勤勉な)」という単語を思い出したい時に、音は似ているが意味が異なる「industrial(工業用の)」という単語が思い浮かんだり、あるいは意味は似ているが音が違う「diligent(勤勉な)」などの単語が浮かぶことがある。また、「最初が”in”で、最後が”ous”だった」のように、目的となる単語の一部の文字がわかっていることもある。このことは、目的とする単語について、意味的、音韻的な情報の検索がある程度はできることを意味している。通常、記憶検索は高速になされるが、この喉まで出かかっている状態では、検索のスピードは遅くなる。(YM)

  

「ハ」

パターン認識(pattern recognition>

 パターン認識は自然情報処理の一つである。画像、音声などの雑多な情報を含むデータの中から意味を持つ対称を選別して取り出す処理である

 音声データの中から人間の声を認識して取り出し命令として解釈する音声認識、画像データの中から文字を認識してテキストデータに変換するOCR、などがこのパターン認識に含まれる。

 人間の脳にとっては非常に当たり前な過程でありながら、コンピュータで実現するには精度・速度どちらの面についても困難を伴う。(IT)

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 パターンとは、点や線がある規則をもって並んでいるものを表すことが多い。またそれは点などに限らず、光の点滅や音の変化が規則性を持っていてのパターンという。

 そしてそうしたパターンを我々が「分かる」ことを「パターン認識」という。例えば、単に我々が「あ」という文字を「あ」だと「分かる」ことも「パターン認識」といえるであろう。

 では、我々はどのようにそのパターン認識を行っているのか。どうして我々が認識できるのかという問題には諸説あるのだが、例えば我々の頭の中には、パターンの原型を示す鋳型のようなものがあり、その鋳型に合わせることで我々はそのパターンを認識できるという「鋳型表現」というものがある。しかしこれはそのパターンごとに鋳型が必要であり、鋳型の数や、ちょっとだけ変形した形への対応といった問題がある。またパターン認識はどのような過程を取るのかにも諸説あり、例えばパターンの特徴を積み重ねることで認識できるとするボトムアップ処理や、知識を基にした仮説からパターンの特徴を分析することで認識できるとするトップダウン処理がある。しかし、やはりこの「パターン認識」については明確な答えというものがないのが現状である。(HH)

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人間は光や音などの外からの刺激を目や耳などで感知することでさまざまな物事を認知しています。しかし、光や音の刺激はそのままではそれが何なのか分かりません。見えたものや聞こえたものから意味のあるものを選んで取り出すことによって、はじめて物事が認識できるのです。このように雑多な刺激から意味のある対象を取り出すことをパターン認識といいます。)

例えば、聞こえてくる音の中から人間の声を認識してさらにそれを言葉として認識したり、または見えてくる画像の中から四角い図形だと認識したり、日本語で書かれた文字だと認識することもパターン認識です。)

現在、このパターン認識をコンピュータによって行おうとしています。特に、人の声を言葉として識別する音声認識や、画像のデータの中から文字を認識して文章のデータに変換することが積極的に研究されています。しかし、人間は瞬時に難なく出来るパターン処理ですが、これをコンピュータで瞬時に間違えないように行うのは大変難しいです。)

尚、パターン認識の対象例としては、先にあげた音声認識、文字認識、図形の認識の他に、個人の認識や表情の認識など人の顔の認識、動作やジェスチャーの認識などがあります。(SJ)

  

「ヒ」

ヒューリスティックとバイアス(heuristics and biases>

 ヒューリスティックとは、コンピューターの確率の計算などに頼らず、人間が推論、判断を下すことをいいます。ヒューリスティックは、面倒な計算等の手順をかけることなく、解決策を得られるなどの長所もありますが、ヒューリスティックによる判断は、状況やその事柄のインパクトの度合いによって左右されやすく、それによって誤った判断を下してしまうこともしばしばあります。人間が誤った判断を下してしまうことを、ヒューリスティックによるバイアスといいます。ヒューリスティックと、それによるバイアスには、以下のような種類があります。

1・利用可能性ヒューリスティック

 ある連想が、どの程度心に容易に思い浮かべられるかによってそれが実際に起こる頻度を判断することです。一般に、頻度の高い事例の方が、頻度の低い事例よりも容易に連想されます。

 利用可能性ヒューリスティックによるバイアスとしては、容易に連想される事柄やインパクトの強い事柄の過大評価が挙げられます。

 実際は自動車事故に遭う確率のほうが圧倒的に高いにも関わらず、事故のインパクトの強い飛行機事故を恐れる、というのはこのバイアス例といえます。

2・代表性ヒューリスティック

 ある事柄について判断するときに、その事柄が過去に起こった事例などの典型的な特徴(代表性)をどの程度持っているかに基づいて判断を行うことです。例えば、あなたの友人がモデルのオーディションを受けることになりました。あなたは、その友人が合格するか否かを予測するとき、その友人が典型的なモデルの特徴(たとえば顔立ちが美しい、背が高い、痩せているなど)をどの程度持っているかを考えるでしょう。(MA)

  

「フ」

符号化特定性原理(encoding specificity principle>

 まず、符号化という言葉について軽く触れましょう。この言葉は、「記憶」の用語解説でとり詳しく見れますので、詳しく知りたい方はそちらへ☆ 「符号化」とは、記憶するとき、外部の刺激が持つ情報を、人間の内部の記憶に取り込める形に変換することです。つまり、『覚える』という作業です。では、符号化特定性原理とはなんでしょう?

 これは、何かを覚えたときに、その符号化したものが、思い出すための手がかりとなる情報を同時に決定しているということです。つまり、覚えたものを思い出すときの手がかりの有効性の高さを無意識のうちに作っているのです。これは、『検索手がかり』とも関連しています。例えば、お気に入りのお香があったとします。しかし、買おうとしたときにそのお香の名前を度忘れしてしまいました!!そんなときの検索手がかりとしてお香の香りが役に立ってくれます。この場合、“お気に入りのお香”に対して、「お香の名前」という検索手がかりと共に、「お香の香り」も思い出すための重要な情報として符号化されているということです。何かを覚えようとするとき、それに関連し、また強い印象を持つものを近くに用意するのも、有効な符号化の戦略ではないでしょうか(^_^)(NK)

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 符号化特定性の原理というものは、ダルヴィングという人が考えたものです。専門的な言葉で言ってしまうと、項目や事象の記憶に必要な符号化(ある言葉等を覚える際にその言葉が頭の中で記号として処理されること)と検索条件(検索とは思い出そうとすること)に関する原理です。これではわかりにくいので、次に例としてある実験を紹介します。

 被験者に「クイーン」という単語を覚えてもらいます。そのときに「クイーン」と「レディ」を対として一緒に覚えてもらいます。そして思い出してもらう際に、思い出す手がかりとして「レディ」という単語を提示すると、「クイーン」を思い出すことを促進します。このとき「レディ」ではなくて「キング」を提示するとどうなるでしょう。「キング」と「クイーン」という単語にも意味的に強い関係がありますよね。しかし、「キング」を提示しても「クイーン」を思い出すことを促進することはありませんでした。このように、思い出す手がかりが効果的であるためには、それが覚えた単語と一緒に符号化されている必要がある、ということを符号化特定性の原理といいます。(HK)

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 我々は何かを思い出そうとするとき、その何かに関連した情報を手がかりにすることによって、思い出すことができることがある。例えばテストのとき、前日に勉強したところなのに、どうしてもその単語が出てこないとしよう。このとき、その単語を覚えたときに一緒に覚えた単語などを思い出すことによって、目標とする単語が出てくるということはないだろうか。これは結局我々がその単語に関連する事柄を手がかりにして、膨大な量の記憶の中から見つけ出す(検索する)からである。そしてそのための単語を「検索手がかり」という。

そしてこの「検索手がかり」が有効になる条件がある。例えば、「Black」という単語を覚えるとき、一緒に「White」という単語を覚えたとする。この時、たとえテストで「Black」という単語を忘れても、「White」という単語がテスト問題に混ざっていると「Black」を思い出せることがある。これは「White」が先の「検索手がかり」となったわけである。しかし「White」ではなくても、「Blue」や「Red」といった単語でもこれが可能であったりする。それは単語を覚える際の覚え方が「色」という次元で同じであったためである。すなわち、手がかりとして有効であるためには、覚える際の方法(符号化)が、覚える単語と同じであればよいのである。そしてこのことをタルビィングは「符号化特定性原理」と呼んだ。(HH)

  

符号化方略(coding strategies>

 私たちは何かを覚えるとき、まずその覚える情報を覚えやすいような形に変換して覚えようとします。これを「符号化」と言います。つまり、「符号化方略」とは、その方法のことです。

 たとえば、ある電話番号を覚えるときを考えてみましょう。みなさんは一体どのようにその番号を覚えますか?その覚え方は人によって異なるでしょう。その番号を何度も何度も口に出して唱えながら覚える人もいると思います。また、その番号が書かれた紙をじっと見て、あくまでも数字の並んでいるイメージで覚える人もいるかも知れません。

 このように、符号化方略にはいくつもの方法があります。

 覚えていなければならない時間が短い場合には、音で覚える方法(音韻的符号化)やイメージとして覚える方法(視覚的符号化)がとられることが多く、長期間覚えていなければならない場合は意味を重視して覚えることも多いと考えられています。(AN)

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 “coding strategy”を直訳すると、「符号化方略(戦略)」という言葉になります。しかし、このままでは、一体何を表しているのかわかりません。そこで、まず、「符号化」という言葉の意味を見てみましょう。)

 「符号化」には、大きく2つの意味があります。1つ目は、「記憶」をいう作業の中のプロセスとしての符号化です。「記憶」には、符号化→貯蔵→検索という3段階があります。ここでいう符号化とは、例えば「シンリガク」という言葉を認知したとき、「心理学」という言葉に置き換える、ある種言語化・記号化に近い意味を持ちます。そして、2つ目は情報工学の中における符号化です。ここでは、例えば、文字をモールス信号などに置き換えるというような、入力情報を情報システムの中で処理することの出来る信号に変換する過程を表しています。)

 ここまで見てくると、なんとなく「符号化方略」の意味が見えてきます。それは、ある情報をどのように処理するのか、また、どのように処理すると、その情報を活用しやすいのかという道筋ということができると思われます。テストの前に、「覚えることが多すぎてお手上げ!!」と思う前に、この符号化方略を考え、活用してみてはいかがでしょう?(NK)

  

不思議な数字7(magical number seven>

心理学においては、いくつかの面白い現象を実験によって体験することができます。「不思議な数字7」もその一つです。これは、『短い期間の記憶において、我々人間が完全な順序で思いだせる項目数は5から9の間である』という現象です。つまり7±2、だから不思議な数字7。・・信じられませんか?その場合は実際に試してみることをお勧めします。誰かに頼んで、問題を出してもらいましょう。覚えるのは数字や単語などの無関連な項目にする、すぐに順序通りに思い出す、というのがルールです。

あなたがどんなに記憶に自信があっても、9を超えることはほとんどないでしょう。もちろん、個人差・年齢差は多少あるので、5に満たなかったといって落ち込むことはありませんが、この現象はたいていの健常な成人に当てはまるものです。

ですから我々は、電話番号などを暗記する際、語呂合わせで覚えることで10個近くある数字の羅列を1個の文章に置き換えたり、何度も口ずさむことで繰り返し覚え直したりします。(IK)

  

「ヘ」

並列処理(parallel processing>

脳は一種のコンピュータだ、とする立場が認知心理学にはあります。脳のしくみに関して、中で別々の情報処理が同時に行われるという説明を、並列処理と呼びます。目に映った赤い物の映像が「これはリンゴだ」とわかるまでには、脳の中で何らかの道すじをたどると考えられています。これを情報処理と呼びます。では、どのような道すじをたどるのでしょう。言い換えると、人の脳で情報はどう処理されるのでしょうか。この疑問についての説明が、直列処理と並列処理という2つの考え方です。直列処理は並列処理と違って、情報が一度に一つずつ順番に処理される場合を指します。直列並列の意味は電池の直列つなぎ、並列つなぎと同じで、電気の流れが一本道なのか複数なのかで区別しているということです。

これまでのたくさんの研究の結果、人間の脳の情報処理のしくみは、直列並列のどちらか一方というわけではなく、場合によって違っていると考えられています。歌詞を見ながら音楽を聴く時は、目からの情報と耳からの情報を同時に処理する、つまり並列処理ができているように感じられますが、二人の人に同時に話された時、両方の内容を理解するのは簡単ではありません。

脳のしくみが解明されて、人工的に脳と同じ働きをするものを作りだすことができれば、できあがったもの、それは人工知能です。(BT)

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人間を一種の情報処理システムとみなす情報処理アプローチというものがあります。環境からの刺激を情報とみなし、その情報を処理して人間は反応したり、行動したりするというものです。その情報処理アプローチでは、人間は、認知課題を行っているときには、多くの異なる処理を行っていると考えています。これらの処理が一度に一つずつ、順番に行われている処理のことを系列処理といいます。そして、それに対していくつかの異なる処理が同時に並行して行われている処理のことを並列処理といいます。並列処理の例として、自転車で走っているときにわき道からボールが転がり出てきた場合、どうするのかというものがあります。まず、目がボールを発見し、ボールの存在を脳に伝えると、脳はいろいろな、ボールを避ける計画を考えます。その計画には、「右にハンドルを切ってボールを避ける」、「左にハンドルを切ってボールを避ける」、「ボールを踏まないように上を通過する」、「ブレーキをかけて止まる」等さまざまなものがあります。どれを選んでボールをよけるか、という決定は短時間に行われなければならず、決定に時間がかかると実行が間に合わなくなり、ボールを轢いてしまうことになります。このように、選択肢が多岐にわたる場合の情報処理は、並列処理で行われます。(HM)

  

変形(生成)文法(transformational grammer>

文は単語を正しい順序に並べたものであり、決して単語を思いつくままに並べあげたものではありません。言語にはそれぞれ固有の文法があり、文法に従って単語を並べることにより文が作られます。したがって文法について知識、すなわち統語論的知識がなければ文の意味を正しく理解することができません。統語論的知識というのはそれぞれの言語における1つの文の構成要素としての主語・述語、修飾語・非修飾語などの位置関係に見られる法則性についての知識のことです。チョムスキーはこの知識が文章理解において果たす役割分析し、変形生成文法と呼ばれる理論を提唱しました。その理論は文を書き換える規則の形をとっています。この規則に従うことにより英文を句構造として表すことや、They are cooking applesのような「それらは料理用のりんごである」と「彼らはりんごを料理している」などのいくつかの解釈ができる文の意味を句構造の違いとして表すことができます。この規則により、文の意味をより深く正確に理解することができます。(YA)

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生成文法とはチョムスキーによって1950年代に提案された言語学の文法理論で、初期のころには変形文法や変形生成文法、生成変形文法とも呼ばれました。言語にかかわる障害を持たない人間はみな母語にかかわらず言語能力である普遍文法(''Universal Grammar'')を生得的に備えていると仮定し、その探求を目指します。

チョムスキーによれば、言語の本質は人間の主体的な創造的心理能力にあります。ある言語とは、文法にかなった無限に多くの文の集合であり、人は無限の新しい文を作り出す言語能力をもち、その能力の内容をなす、この集合に属する文のみを生成し、非文法的な文は生成しないような文生成の規則の集合が文法です。この言語能力は理想的な話者のもつ能力であって、種々な条件によって制約されつつ生成する個別的・具体的な話者の言語運用とは区別されます。生成文法の研究の目標は、この言語能力の内容としての文法の解明にあります。(SH)

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 変形文法とは、言語学者であるチョムスキーによって提案された文法の理論です。

 チョムスキーは、私たちは誰もが生まれながらにして、言葉を話すための基本的なルール(チョムスキーはこれを普遍文法と名付けました)を身に着けて生まれてくると考えました。チョムスキーはこの基本的なルール(普遍文法)がどんなものかを調べ、そして見つかったルールの中の1つが、この変形文法なのです。

 「私は彼女に話しかける。(1)」という文があったとします。私たちはこの文を、ごく自然に違った形に書き換えることが出来ます。例えば、「彼女は私に話しかけてくる。(2)」とか、「私は彼女に話しかけない。(3)」といったように。これは、英語で習ったと思いますが、(1)の“能動文”と呼ばれる形の文を(2)受身形と(3)否定形に変化させたものです。このように、文の形をごく自然に変えることが出来るのは、私たちが変形文法という文法の知識を持っているからなのです。

 しかしこの変形文法だけでは不十分だったため、後に、この変形文法も含んだ大きな文法のルールとして、生成文法という理論が提唱されました。(YO)

  

「ホ」

忘却曲線(forgetting curve>

 私たちは、覚えたことをずっとそのまま記憶し続けることはできません。時間が経つにつれて、少しずつ忘れていってしまいます。その様子を表したのが、忘却曲線です。

 記憶には、長期記憶と短期記憶の二種類があります。自転車の乗り方や泳ぎ方のように、一度覚えてしまえば忘れないものを長期記憶といいます。もう一方の短期記憶というのは、英単語や歴史の年号など、短時間しか覚えていられないもののことです。忘却曲線は、この短期記憶に関係しています。例えば、今、いくつかの単語を覚えたとしましょう。見たばかり、聞いたばかりの単語は良く覚えています。けれど、せっかく覚えたその単語も、何もしなければ、二十分後には約四十ニ%、一時間後には約五十六%、九時間後には約六十四%を忘れてしまいます。その後は忘れる度合いは少し緩やかになりますが、六日も経てば覚えた内の約七十六%を忘れてしまいます。つまりどんなに完璧に暗記したものでも、六日後に覚えていられるのはたったの二十四%なのです。

 しかし忘れる前に復習することによって、忘れる割合(忘却率)はかなり低くなります。昨日学んだことを口に出して言ってみたり、頭の中でちょっと考えたりするだけで、ずっと忘れにくくなるのです。(KM)

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忘却曲線とは、100年以上前にドイツの心理学者エビングハウスが行った実験による検証で、時間と記憶(忘却)の関係を表した曲線のことです。人は記憶したことを20分後でおよそ42%、1時間後でおよそ56%、9時間後でおよそ64%を忘れ、その後は少しゆるやかになり6日後にはおよそ76%を忘れてしまいます。このように、時間軸にそって覚えている量が減少していく様子を図に表したのが、今日のテーマ「忘却曲線」です。最初は100%覚えていたものが、ほんの少しの時間で一気に半分までが記憶から消え、その後は緩やかに少しずつ消えていきます。

例えば皆さんが今日1日でがんばって英単語を100個完璧に覚えたとします。でも、覚えてそのままにしておいてしまうと、来週のテスト当日までには24個しか覚えていないということです。一度覚えたものを何度も繰り返し復習することで忘却率はかなり抑えられ、記憶にとどめておけることも実証されています。(OM)

  

ボトムアップ型処理(bottom-up approach>

 薔薇の「薇」という字を覚えなければならなくなったとき、皆さんは、どのようにして覚えますか?書き順に沿って、一画一画覚えていきますか?それとも、「草かんむりに微」と覚えますか? ボトムアップ型処理とは、書き順に沿って一画一画覚えていく方法のことです。「薇」という漢字を、情報としてもっとも小さな部品である線に分け、それらを組み合わせて「薇」にしていく。つまり低い段階のものから、高い段階へと情報を扱う方法です。データ駆動型処理とも呼ばれます。 一方、「草かんむりに微」という風に覚えていく方法を、トップダウン型処理、別名概念駆動型処理といいます。この方法は、「草かんむり」や「微」など、自分が持っている知識や期待という高い段階から、情報に作用する方法です。 実際の日常生活においては、ボトムアップ型処理とトップダウン型処理のどちらかだけが情報に作用するのではなく、ボトムアップ型処理とトップダウン型処理の両方で補い合い、扱っています。(KH)

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 私たちが見たり覚えたり考えたりすることを情報処理過程として理解するときには、異なるタイプの処理過程を区別することが必要です。その処理過程は2つに分けることができます。それは、ボトムアップ型処理とトップダウン型処理と呼ばれる処理過程です。ボトムアップ型処理というのは、見たものや聞いたものからの情報によって、低次なレベルからより高次なレベルへと進む情報処理で、データ駆動型とも呼ばれます。例えば、Kという文字が|と / と\ からなっているというように、文字を認識するときに1つ1つの線の組み合わせとして文字を認識するのがボトムアップ型処理です。実際に私たちが認知するときには、ボトムアップ型処理とトップダウン型処理の2つの過程が互いに補うように生じます。(YA)

  

「マ」

マジックナンバー7(magical number seven>

英単語を覚える時などに、1回で記憶できる量には限界がありますよね。そのことを「直接記憶範囲」と言います。心理学者ジョージ・ミラーはこの「記憶範囲」について研究をしました。

 その結果分かったのが、人の記憶の範囲は、7±2の中に収まるということです。しかしこの7±2というのは、単語そのものの数ではありません。

 人間は記憶をする時に、チャンクという単位に分けて覚えます。たとえば、「82463591」というランダムな数列は記憶しにくいけれど、同じ個数でも「88883333」ならば覚えやすいでしょう。これはそれぞれの数列のチャンク数が違うのです。

 このチャンク数は、語呂合わせや連想法によって減らすことが可能です。暗記のチャンピオンも、そうやってチャンク数を減らす努力をしています。ですから記憶力が悪い、良いというのはチャンク数にかかってきます。人間の記憶できる範囲は、あくまでチャンク数7±2なのです。みなさんも勉強する時にチャンク数を減らす工夫をしてみて下さい。(KY)

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 皆さんは「マジックナンバー7±2」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?この言葉はジョージ・A・ミラーが自身の論文「マジックナンバープラスマイナス」の中で 使った造語です。この「マジックナンバー7±2」というのは、人間が一度に記憶できる要素の限界数だと言われています。

 例えば、紙に10〜20種類の単語が描かれているとします。それを被験者に一定時間提示した後、紙を隠して覚えているものを回答させます。そうすると、平均5個〜9個、つまり7±2の範囲で回答できるという結果がでています。7±2が記憶の限界ということになるわけです。

 この「マジックナンバー7±2」は日常の様々な分野で考慮されています。広告用のポスターや電車の中刷り広告、またホームページなどでも一枚に表示する要素を7±2の範囲内にしておけば、一目で見て瞬時に認識でき、かつ、記憶に残りやすいということになり、それだけユーザーへの刷り込み効果が高いと言えます。一枚の限られたスペースだからといって、情報を積み込みすぎると逆効果となるわけです。(AG)

  

「ミ」

見本偏り(representativeness bias>

 人間の危険の認識は正確ではありません。個人が、生活の中で直面する全ての危険の本質に気付き、反応し、そして完全に理解することは実際不可能です。

 ゆがめられた知覚の一般的な原因が6つあります。それは、偏り、自発的行為、コストと結果、人口、より新しいもの対より古いもの、そして不確実性です。

 個人は、危険の重大さと蓋然性について自己の判断をゆがめる偏りを作り出します。偏りには主に、見本偏り、有効性偏り、アンカー偏り、自信過剰偏り、そして種々雑多なものからなる偏りの5つがあります。

 ここでは、見本偏りについて解説していきます。

 すばやい判断は、過去の類似した出来事に基づいた、ある出来事についてなされます。危険の存在と量についての結論に対する流れにおいて、状況は一致しなくても互いに似ているだけでいいのです。過去の経験と現在の状況の重要な違いはしばしば無視され、考慮に入れられず、そして無視されていきます。これが見本偏りです。その原因となるものは、例えば時間の不足、不十分な集中、関心の欠如、そして不十分な知識などがあります。(NA)

  

「メ」

メタ記憶(metamemory>

メタ記憶のメタとは、「超越した」という意味があります。メタ記憶では、自分自身を上から見て意識している自分の存在が重要になってきます。例えば、英語の単語を覚えているときに、英単語を覚えていく一方で、その英単語を覚えたという記憶も残るはずです。ところが、いざ英単語テストになってみると、「この意味の単語は覚えたぞ。」という記憶は残っているのに、実際には単語が思い出せなかったりすることがあります。このように、「この意味の単語は覚えたぞ。」という、記憶したことの記憶がメタ記憶です。メタ記憶とは、「自分自身の記憶に関する評価や、自分が理解していることをどれだけ自分自身で正確に認知しているか」を指します。「このことは自分が知っている。」という記憶が残っているのに思い出せなかったり、逆に「このことは忘れた。」という記憶があるのに、実際には思い出せることがあります。これは、メタ記憶と実際の現実がうまくつながっていないということになります。こういうことが、しばしばおこります。学習では、メタ記憶と現実がうまくつながっているほど、勉強の効率がよくなりますね。(SM)

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 「メタ」という言葉には「超越した」という意味があります。少し複雑ですが、始めに「自分自身をもっと上から意識してみている自分」を想像してみてください。

 「メタ記憶」とは、自分自身の記憶に対する自分の評価の事をいいます。もっと分かりやすく言うと、「自分の農が理解していることを、どれだけ自分自身で正確に認知しているか」ということを意味します。このメタ記憶が、情報を学習する時には大変重要になります。

 例えば何かを覚えたときに、自分が「覚えた」と認識していても、実はまだ曖昧な記憶の段階にあって正確に思い出せないことはよくあると思います。この状態がメタ記憶を正確に把握していない状態ということです。記憶がちゃんと自分に定着しているか、またそのようにちゃんと認識できているか(この認識を「メタ認知」といいます)の二つが、記憶には重要になってくるのです。(OM)

  

メタ認知(metacognition>

メタ認知とは、自分で自分のことを知り、コントロールすることです。例えば、今日は疲れているから車の運転をするのは危険だろうとか、この問題は難しすぎてとても自分には解けそうにない、などと考えるのは、自分の頭の働きについて認知した結果、なされる判断です。私達は、こうしたメタ認知によって、危険を避けたり、効率のよい計画を立てたり、自分のするべきことの判断をつけたりすることができます。従って、メタ認知が必要な時にうまく機能しないと、間違いをしてしまったり、無駄なことを繰り返してしまうことになります。必要な場面で適切にメタ認知ができることは、私達にとってとても重要です。このメタ認知力は、心の成熟とともに自然に身についてくるものですが、私達はメタ認知力をせっかく持っていても、それを発揮しないままになっていることがよくあります。これではもったいないですから、日常生活の中のふとした瞬間に、ちょっと立ち止まって自分の心をのぞいてみる習慣をつけましょう。日記をつけるのもよい方法です。勉強する時も、自分がどこが苦手なのか、ということがしっかり分かっていれば、効率よく成績を上げることができますね。自分自身を知るということは、私達が生活していく上で最も基本的なことなのです。(NC)

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 友達とどこかに遊びに行ったときに、遊ぶことがとても楽しいのに、頭のどこかで門限が気になってしまうことがありませんか?このとき、実際に行動している「遊んでいる自分」の他に、「門限を気にしている自分」がいることに気が付くはずです。本当なら、今行動していることに意識がすべて集中してしまう気がするのですが、実際はそうではありません。この、「門限を気にしている自分」がメタ認知です。メタ認知のメタとは、「高次の」といった意味を持っています。つまり、メタ認知とは、行動している自分をより高いところから眺めて、色々とアドバイスをしたり考えたりしてくれる、「もう一人の自分」のことです。このもう一人の自分がいることで、「そろそろ6時だから帰らないとな。」とか、「帰り道でバスが遅れたことにしてもう少し遊んでいようか。」といった理論や言い訳などが頭の片隅で進んでいくわけです。つまり、メタ認知があるおかげで、遊ぶことを中断せず、考えなければならないことも考えることができます。このように、メタ認知は日常のさまざまなところで働いています。(SM)

  

メタファー(metaphor>

隠喩

「モ」

目撃証言(eyewitness testimony>

「この人に違いありません」、「確かにこの人でした」、「この人だったと思います」・・・・・・。ある出来事や人物に遭遇した人が、後にその出来事や人物について、法廷で、あるいは法廷関係者に語る時、それを目撃証言、あるいは目撃供述といいます。

 顔や場面の記憶に関しては、時には目撃証言のように、重大な意義を持つ場合が出てきます。事件や犯罪は十分統制された観察条件で起こるとは限りません。現実社会の場面は、よく統制された実験室場面とは大きく異なっています。実験室実験では、被験者はスライドについて後ほどテストされることをわきまえて観察していますが、事件や犯罪の目撃者にとって、観察した現象が興味を引くものでなかったり、重要な意義を持っていなかったりすることがあります。あるいは、逆に身の安全や生命が脅かされる事態では、自分自身の安全に多くの注意を払うために、周りの出来事を冷静に観察できず、出来事の記憶が曖昧となる可能性が高いです。演出された「事件」の目撃証言は極めて不正確であることが立証されています。(SC)

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裁判で、事件を見た人、つまり目撃者の証言が大切な手がかりとなるのはよくあることですね。しかし、その証言が本当のことと違っていたらどうなるでしょう?間違った判決が下され、本当は無罪の人が有罪となってしまったり、その逆のことが起こったりすることになるでしょう。

しかし、実際、目撃者の証言というのはその人の記憶にだけ頼っているため、事件の内容を覚えていなかったり、間違って覚えていたり、聞いている人の聞き方によって変わってしまったりするのです。

たとえば、何人かの人に、二台の車が事故を起こした映像を見せます。その後、事故を起こしたとき、車がどのくらいの速さで走っていいたかを、『車が「接触」したとき、どのくらいの速さで走っていたか』や、『「ぶつかった」とき』、『「激突」したとき』など、事故の様子をさまざまな言葉を使ってきいてみました。その結果、聞かれた人は激しい言葉で聞かれれば聞かれるほど、車の速度を速く証言したのです。

また、証言が間違っていても、何回も聞き返されると目撃者が証言に対して自信を深くしたり、日常の中で起きたことを聞かれると、他の日のことと証言が混ざってしまうということも起きます。(TK)

  

問題解決(problem solving>

問題解決とは、問題が起こっている最初の状態(初期状態)、そのなかで何らかの方略を行っている状態(操作子)、問題が解決された状態(目標状態)という3つの状態を含んだ問題空間の中で、初期状態から目標状態へと移行させる方法を探索していく過程である。

 例をあげてみれば、解けない問題に出くわし、教科書を見る、先生に聞くなどの何らかの方略をとって問題が解けるようになるという一連の過程をいう。(KA)

  

「リ」

リハーサル(rehearsal>

 私たちは難しい言葉や英単語などを覚えるとき、その言葉を頭の中で繰り返したり、何度も何度も口に出したりして覚えます。このように情報を記憶する時に、頭の中や、時には声に出して何度も反復することをリハーサルと言います。これは短期記憶の中にある知識を長期記憶に保存するための方法です。リハーサルの回数が多ければ多いほど再生率が高くなるとされています。リハーサルには2つの型があり、それぞれ維持リハーサルと精緻化リハーサルと呼ばれています。維持リハーサルは短期記憶内に記憶を維持し、忘却を防ぐためのリハーサルです。精緻化リハーサルは統合的リハーサルとも呼ばれ、情報をある形式から別の形式に変換し、短期記憶から長期記憶に記憶を転送し、長期記憶の構造に統合するためのリハーサルです。

たとえば英単語を覚えるとき、単語一語をそのまま繰り返すようなやり方が維持リハーサル、すでに知っている単語との関連で覚えたり、語呂合わせなどを使って記憶するやり方が精緻化リハーサルです。単語を覚える例に限らず、歴史で鎌倉幕府ができた年号を「いいくにつくろう鎌倉幕府」などと覚えたり、ルート5を「富士山麓オーム鳴く」などと覚えるのは精緻化リハーサルの例です。(SH)

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 記憶には2つの種類があります。1つは長い間覚えていられる「長期記憶」と、もう1つは短い間しか覚えられず、すぐに忘れてしまう「短期記憶」があります。

 たとえば、漢字の読み方や英単語を覚えるようとするとき、何度も声に出して覚えようとした経験は誰にでもあると思います。このような行動を「リハーサル」といいます。リハーサルは短期記憶の中にある知識を長期記憶に移すための方法であると言えます。

ある単語をそのままくり返すようなやり方を「維持リハーサル」、すでに知っている単語との関連で覚えたり、語呂合わせなどを使ったりして記憶するやり方を「精緻化リハーサル」と言います。たとえば鎌倉幕府ができた年号を「いい国(1192)作ろう鎌倉幕府」などと覚えるのは精緻化リハーサルです。

このようにリハーサルは情報を長い間記憶する上でとても重要な行動であると考えられます。リハーサルはテストなどに役立つと思いますので、ぜひ使ってみてください。(KY)

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 ここで言うリハーサルというのは、皆さんが普段使うような意味でのリハーサルとは、ちょっと違います。皆さんは例えば、「本番の前にリハーサルをする」といったような使い方をすると思います。

 しかし、心理学ではこのリハーサルという言葉を、記憶するとき、つまり私たちが物事を覚えるときに使います。

 私たちは、一度物事を覚えたとしても、何もしなければその覚えた物事をすぐに忘れてしまいます。そうではなくて、長い間物事を覚えておくために、心の中でその物事を繰り返すことを、リハーサルと呼ぶのです。

 例えば、先生が授業中に英語の単語を言ったとします。このとき、私たちはその単語を忘れないために、頭の中で繰り返し発音したりします。これが、私たちが普段よく行うリハーサルの例です。

 このリハーサルには、文字やイメージなどの視覚的な情報や、発音などの聴覚的な情報が関わっていることが分かっていますが、特に聴覚的な情報、つまり音がリハーサルに大きな影響を与えていると言われています。(YO)

  

両耳分離聴(dichotic listening>

  聖徳太子は一度に10人の人の話を聞き分けられたといいますが、みなさんは2人の人から一度に別々のことを言われても、聞き取ることができますか? 両耳分離聴はわざとこのような状態を作り出す、つまり右耳と左耳に異なるメッセージを流し、後でそのメッセージを言ってもらうという実験です。 それでは両耳分離聴で右耳のメッセージに集中したとき、左耳のメッセージはちゃんと聞こえると思いますか?この場合、左耳のメッセージの声の変化(例えば女性の声から男性の声になった)などの物理的変化は認めることができますが、その意味までを理解することは出来ません。要するに物理的な処理は出来ても、意味的な処理は出来ないのです。

 しかし右耳に集中していても、左耳のメッセージが自分の名前になると、聞き分けることが出来ます。これは会話相手の声を聞くのがやっとのような騒がしい場所でも、自分に関連することは聞こえるという、カクテルパーティー現象と似ていますね。(HK)

  

「ワ」

ワーキングメモリ(working memory>

 「作動記憶」参照

  

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