0708課題解答例


7月8日課題
(1)知覚されたファッション・リスク (fashion02.sav)の項目の最適因子数を割り出し,因子を命名せよ。前回の課題に準ずること。
 なお,このデータの場合,項目数が2の因子でも許すことにする。
(2)セルフ・モニタリング尺度(kanyo2003.sav の中にある「パソコンへの関心とセルフモニタリング」)のクロンバックのα係数をもとめよ。
 最大のαにするために,項目を削除する。削除した項目とクロンバックのα係数を答える。
(3)性役割尺度の男性性,女性性の合計点を求め,平均点に男女差があるかt検定をして調べよ。
 t検定の記述の仕方はχ2検定に準じる。

(1)
知覚されたファッション・リスクの項目について、因子分析を行った。
スクリプトを実行した結果、お薦めの因子数は1〜5という値が得られた。
因子抽出法:重み付けのない最小二乗法
因子の決定:分析を実行する前に、あらかじめ因子数を強制的に決定した
回転法:直接オブリミン(δ=0)

因子数を1〜5までそれぞれ因子分析をし、出力された結果を比べた結果、5因子が
最適因子であると考える。

第1因子に関連のある項目
人から、変な目で見られるのではないか。
趣味やセンスが悪いと、思われるのではないか。
愚かに、思われるのではないか。
大胆すぎるのではないか。
自分の品位が、損なわれるのではないか。
第1因子は、「見た目」と命名できると考えられる。

第2因子に関連のある項目
着こなし(使いこなし)が、難しいのではないか。
手持ちのものと、組み合わせしにくいのではないか。
自分には似合わないのではないか。
第2因子は、「着こなし」と命名できると考えられる。

第3因子に関連のある項目
品質が、悪いのではないか。
肌ざわりが、悪いのではないか。
第3因子は「品質」と命名できると考えられる。

第4因子に関連のある項目
個性を発揮することが出来ないのではないか。
自分の品位が、損なわれるのではないか。
自分を引き立てることが、出来ないのではないか。
ただし、この項目の因子負荷はすべて、マイナスで関連が高い項目である。
第4因子は「能力発揮」と命名できると考えられる。

第5因子と関連のある項目
すぐ流行遅れになってしまうのではないか。
流行に鈍感だと、思われるのではないか。
第5因子は「流行」と命名できると考えられる。

(2)
セルフ・モニタリング尺度の、クロンバックのα係数を求めると、
項目(2),(5),(8),(9),(11),(21)がマイナスの値を示した。よって、この項目を逆転させた。
その結果、項目(8)と(21)が、まだマイナスであったのでこの2項目を削除した。
この2項目を削除して、再びα係数を求めると、α=0.795という値を示した。
さらに、この係数を最大にするために、項目間の相関が低い、項目(9)を削除すると、α係数はα=0.803となる。さらに、項目
(18)を削除すると、α係数はα=0.807となる。さらに、削除すれば係数は上がるが微々たるものなのでここで打ち切ることにする。
よって、削除した項目
(8) たぶん、いい役者になれるだろうと思う。
(9) 映画や本または音楽などを選ぶ時、友人友人に相談することはほとんどない。
(18) 私には、人を楽しませようとするところがあると思う。
(21) いろいろな人や場面に合わせて、自分の行動を変えていくのは苦手である。
の4項目である
クロンバックのα係数の最大は、α=0.807である。

(3)
性役割尺度の男性性、女性性の合計点の比較をするために、独立したサンプルのT検定を用いて比較した。
その結果、男性の平均値が37.7857、女性の平均値が37.9554。
有意確立(両側)の値(p値)も、0.843と0.842となる。
よって、t検定をした結果、男女間の性役割尺度について、有意な連関(有意差)はない。
岡部 隆昭(Takaaki Okabe)

→男性性および女性性の合計点を求めるので違う。

知覚されたファッション・リスク

(神山ら, 1993)
  1. 品質・性能懸念
    (3)*肌ざわりが、悪いのではないか。
    (6)手入れや、取り扱いが、難しいのではないか。
    (8)*品質が、悪いのではないか。

  2. 規範からの逸脱懸念
    (9)*愚かに、思われるのではないか。
    (12)大胆すぎるのではないか。
    (14)*人から、変な目で見られるのではないか。

  3. 着こなし・つかいこなし懸念
    (4)*着こなし(使いこなし)が、難しいのではないか。
    (7)自分には、似合わないのではないか。
    (10)*手持ちのものと、組み合わせしにくいのではないか。

  4. 流行性懸念
    (1)*すぐ流行遅れになってしまうのではないか。
    (5)*流行に鈍感だと、思われるのではないか。
    (13)趣味やセンスが悪いと、思われるのではないか。

  5. 自己顕示懸念
    (2)*自分を引き立てることが、出来ないのではないか。
    (11)*個性を発揮することが、出来ないのではないか。
    (15)自分の品位が、損(そこ)なわれるのではないか。

神山ら(1993)では*の付いている項目を足して,懸念度を求める。

あまりうまく再現できないことを確認せよ。
1尺度5項目(指標)という指針を確認せよ。
3指標だと探索的因子分析による追試にはむかない。
検証的因子分析だとどうであろうか?

セルフモニタリング尺度

この尺度は英語を翻訳したものである。英語版でも1因子性および尺度として適切か問題にされている。日本語に訳しただけで尺度になっているとするには問題がある。


T3_1 3( 1)* 他の人の行動をまねることは苦手だと思う。
T3_2 3( 2)* 自分の気持ちや考え方や信じていることをそのまま行動にしてしまうことが多い。
T3_3 3( 3)* 集まりや会合では、他の人の気に入るようなことをしたり言ったりしようとは思わない。
T3_4 3( 4) 確信をもっていることしか主張しない。
T3_5 3( 5) あまり詳しく知らない事でも、とりあえず話をすることができる。
T3_6 3( 6) 自分を印象づけたり他の人を楽しませようとして、演技しているところがあると思う。
T3_7 3( 7) ある場面でどうしていいのか自信がない時、手がかりとして他の人の行動に注目する。
T3_8 3( 8) たぶん、いい役者になれるだろうと思う。
T3_9 3( 9)* 映画や本または音楽などを選ぶ時、友人友人に相談することはほとんどない。
T3_10 3(10) 実際に感じているよりも、より大げさに表現してしまうことが時々ある。
T3_11 3(11) 喜劇などをみているとき、一人よりもみんなと一緒の方がよく笑う。
T3_12 3(12)* グループの中では、めったに注目の的にならない。
T3_13 3(13) 場面や相手が異なれば、全く別の人のようにふるまうことがよくある。
T3_14 3(14)* 他の人から好意をもたれるようにすることが、それほどうまいとは思わない。
T3_15 3(15) 本当は楽しくなくても、楽しそうにふるまうことがよくある。
T3_16 3(16) 私はいつも見かけのままの人間とは限らない。
T3_17 3(17)* 他の人を喜ばせたり気に入ってもらうために、自分の意見ややり方を変えたりしない。
T3_18 3(18) 私には、人を楽しませようとするところがあると思う。
T3_19 3(19) うまくやっていったり好かれるようにするために、他の人が自分に望んでいることをするところがある。
T3_20 3(20)* これまでに、ジェスチャーや即席の芝居のようなゲームで、うまくできたことがない。
T3_21 3(21)* いろいろな人や場面に合わせて、自分の行動を変えていくのは苦手である。
T3_22 3(22)* 集まりでは、冗談を言ったり話しを進めていくのを他の人に任せておく方だ。
T3_23 3(23)* 人前ではきまりが悪くて思うように自分を出すことができない。
T3_24 3(24) もし必要であると思えば、相手の目を見ながらまじめな顔をして、嘘をつくことができる。
T3_25 3(25) 本当は嫌いな相手でも、表面的にはうまく付き合っていけると思う。

もともとの逆転尺度
1, 2, 3, 9, 12, 14, 17, 20, 21, 22, 23
因子は演技性,他者志向性,自己主張性の3因子としている(岩淵千明,1996)。
2,5,11,21 を逆転。さらに9も逆転
recode t3_1 to t3_25 (1=1)(2=2)(3=3)(4=4)(5=5) into to3_1 to to3_25.
recode t3_2 t3_5 t3_11 t3_21 (1=5)(2=4)(3=3)(4=2)(5=1).
recode t3_9 (1=5)(2=4)(3=3)(4=2)(5=1).

25項目全部使うとクロンバックのα=0.650
21, 8, 9, 18, 12, 5, 11, 3 を削除→α=0.809

10, 15, 19, 7, 11, 2, 9 を削除するのが短縮版
9, 11が共通削除項目。

2〜3因子。
被験者数が少ないので,もっと大きなデータでの分析が必要。

マーク・スナイダー(齊藤勇監訳)カメレオン人間の性格−セルフ・モニタリングの心理学 川島書店 1998.2 \2,400
Snyer,M.(1987). Public appearances private realities: The psychology of self-monitoring. Freeman
パート1 セルフ・モニタリングとは
第1章 セルフ・モニタリングの構成概念
第2章 セルフ・モニタリングとは何か
パート2 セルフ・モニタリングと人間関係
第3章 2つの特徴的な対人関係
第4章 行動する自己
第5章 セルフ・モニタリングの世界
第6章 恋愛について
パート3 セルフ・モニタリングの応用
第7章 仕事,キャリア,専門職
第8章 広告,説得,消費者行動について
第9章 個人的な問題,カウンセリング,セラピーについて
パート4 セルフ・モニタリングの起源と発達
第10章 セルフ・モニタリングの起源
第11章 セルフ・モニタリングの発達
パート5 セルフ・モニタリングの本質
第12章 セルフ・モニタリングの基本的な構造
第13章 セルフ・モニタリング研究の進展
パート6 セルフ・モニタリングの理論的枠組み
第14章 自己の本質
第15章 パーソナリティと社会的行動
第16章 個人と社会を理解する

この訳本は全訳ではなく抄訳です.パラグラフ全体をとばしているところもあるし,文をとばしているところもある.註もなくしているし,また文献への言及はすべて削除している.ただし,引用文献部分の文献リストは完全に残している.でも本文での言及を削除しているのでほとんど宝の持ち腐れ.
11章まででいい人は訳本で読む方が時間的な節約になるでしょう.

訳本では奇抜なタイトルになっていますが,原著は良心的で学術的価値も高いながら,一般に読めるようにしているしている心理学書です.

セルフ・モニタリングとは「人が自分の自己呈示や表出行動,また非言語的な感情表出をモニター(観察や統制)する程度,あるいはモニターしうる程度」(有斐閣『心理学辞典』堀毛一也,1999 自己モニタリング).(堀毛氏の解説ではこのテキストの表題「外見的装い」「内面的な現実」に言及している.)

性役割

信頼性分析から同一方向であることを確認する。
男性性
Item-total Statistics

       Scale     Scale   Corrected
       Mean     Variance    Item-      Alpha
       if Item    if Item    Total      if Item
       Deleted    Deleted  Correlation    Deleted

S01      17.7427    14.8502    .6472      .7701
S03      18.0498    15.2058    .5251      .7886
S04      17.7925    15.7568    .4951      .7926
S06      17.6639    15.9991    .4691      .7962
S08      17.6183    15.7037    .5362      .7869
S10      17.8465    15.8472    .5009      .7918
S12      17.9129    15.9882    .4886      .7935
S14      18.1909    15.1634    .5334      .7873


Reliability Coefficients

N of Cases =  241.0          N of Items = 8

Alpha =  .8099



女性性

Item-total Statistics

       Scale     Scale   Corrected
       Mean     Variance    Item-      Alpha
       if Item    if Item    Total      if Item
       Deleted    Deleted  Correlation    Deleted

S02      14.4149     8.1438    .5686      .7685
S05      14.7303     8.5311    .4360      .7989
S07      14.4813     8.0007    .5675      .7687
S09      14.6266     7.9350    .6232      .7560
S11      14.5934     7.9673    .6212      .7566
S13      14.6224     8.1610    .5376      .7756



Reliability Coefficients

N of Cases =  241.0          N of Items = 6

Alpha =  .8017


合計点を求める
compute male=s01+s03+s04+s06+s08+s10+s12+s14.
compute female=s02+s05+s07+s09+s11+s13.
exec.


T検定

グループ統計量
GENDERN平均値標準偏差平均値の標準誤差
MALE男子8420.5244.6790.510
女子15720.3384.3350.346
FEMALE男子8417.2623.0780.336
女子15717.6183.4960.279


独立サンプルの検定
等分散性のための Levene の検定2 つの母平均の差の検定
F 値有意確率t 値自由度有意確率
(両側)
平均値
の差
差の
標準誤差
差の 95%
信頼区間
下限上限
MALE等分散を仮定する。1.8490.1750.309239.0000.7580.1860.603-1.0011.373
等分散を仮定しない。0.302158.9050.7630.1860.617-1.0321.404
FEMALE等分散を仮定する。0.6230.431-0.784239.0000.434-0.3560.454-1.2500.538
等分散を仮定しない。-0.815189.1980.416-0.3560.437-1.2170.505

男性性の合計点(8〜40)の男子平均点は20.5(S.D.=4.7),女子平均点は20.3(S.D.=4.3)であった。t検定を行ったところt=0.3(df=239,p=0.758)となり男女に5%水準において有意差はなかった。女性性の合計点(6〜30)の男子平均点は17.3(S.D.=3.1),女子平均点はm17.6(S.D.=3.5)であった。t検定の結果,t=-0.784(df=239, p=0.434) となり5%水準において男女の有意差はなかった。

なお,男性性尺度と女性性尺度には正の相関r=0.299 がある。


職業志向尺度について (data2.sav)
5:非常にたくさんあってほしい、4:かなりたくさんあってほしい、3:普通以上にあってほしい、2:普通にあってほしい、1:普通以下でよい

(1)職業志向尺度の各項目において男女差はあるか? T検定と分散分析の両方を実行
(2)職業指向尺度の各項目と性役割自己概念と相関関係があるか?
(3)(1)(2)のどちらのほうが関連が大きいか?

分散分析のイータ(η)が相関係数と対応。2値の場合,そのまま相関係数を求めるとイータの値と同じになる。r=η
r2η2効果の大きさ(effect size)指標の一つである。